本は棚であり、棚が書店である。 書物は集まって文脈になる。 文脈は書棚となり、書棚が書店になっていく。 書棚を軽視する書店は「本屋さん」ではない。 書棚はおもちゃではありません。 病院のベッドでもありません。 書棚は記憶であり、認知なのである。 だから書棚はたんなる形と色ではつくれない。 棚は本。本の気配が棚。 佐野さんの話を聞いてみてください。 このタイトルは気にいった。まさに本にとって「書店の棚」と「本の気配」はすべての生きざまであるからだ。本にとっての生きざまであるということは、書店員にとっての生きざまでもあるということになる。 佐野さんは神田の東京堂書店に37年間勤めていた。1973年からの37年間の本屋人生は長いだけではなく、本や版元や書店がそうとうに激動してきた時間をたっぷり食んでいる。さぞかしだったろうと思う。日本の出版業界の「再販制」という奇妙な体制と、「活字離れ」が囁かれ