経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

11/28の日経

2017年11月28日 | 今日の日経
 日経の新連載「生産性考」は、ないなか良いね。そこから読み取ってほしいのは、人手不足にならないと、生産性は上がらないということだ。安い労働力が豊富に手に入るなら、設備投資のリスクを犯す必要なんてない。革新を望まない経営がはびこってしまう。景気が回復したところで芽を摘む緊縮財政が生産性向上にもいかに害悪になるかを分かってほしいな。緊縮で人を余らせておいて、成長戦略で設備投資を促しても無理がある。そこがどうしても理解されないんだな。


(今日までの日経)
 週3日休む旅館。子育てしやすい街・豊島区が首位。需要超過3四半期連続。物価観に家計と日銀にズレ。人手不足 飛躍のバネに。歳出特別枠 廃止へ調整。
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経済指標の読み方で広がる視野

2017年11月26日 | 経済
 日本語で「エコノミスト」と言うと、経済ウォッチャーを指し、経済学者は含まれないのが普通だ。考えてみれば不思議で、データを読むには理論が必要で、理論にはデータの裏づけが欠かせないのだから、二つが分かれているのは、もったいない。そんな中、データを読む手練れである第一生命研の新家義貴さんが『経済指標の読み方』を出したわけだから、これは見逃せまい。その懇切丁寧な中身は実に有益なものだ。そして、そこからはノウハウ以上のものも見えてくる。

………
 新家さんが真っ先に指摘する「予測の秘訣は、現在を知ること」は逆説的であっても、的を射た見方だと思う。未来が分からないことは、わきまえていても、今、何が起こっているかは、分かっているつもりになりがちだ。さらに、過去を振り返る際も、初めから分かっていた気になるのが人の性。1997年の消費増税は、日本経済の転換点になったけれども、当時の筆者は、いずれ景気は回復するだろうくらいにしか感じなかった。歴史の曲がり角に遭遇していたのに、まったく鈍いものである。 

 その上、後で振り返れば、誰でも分かるというわけでもない。1997年の失速は、数年経って皮膚感覚が薄れると、アジア通貨危機や大型金融破綻が原因として語られるようになった。新家さんも言うようにリアルタイムでの記録は大事で、鈴木淑夫先生が書かれた「月例景気見通し」は、在庫増から生産調整へ進む様子が克明に描かれ、消費増税を原因から外す言説は記憶の改変でしかないことが分かる。「財政再建は日本経済に良いはず」という信条が都合の悪いデータを見えなくしてしまうのだろう。

 実を言うと、本コラムが2014年から月いちの「アベノミクス」シリーズを書き始めたのは、鈴木先生の「月例」を下敷きにしてのことだ。しかも、大方のエコノミストがアベノミクスの成功を信じて読み間違える中、屹立して逆の見通しを当てられる機会は滅多にないからね。これをすれば、需要管理が経済運営にどれほど重要か、証明できるとも考えた。まあ、狙いどおり当てることはできたが、世の中の信条は相変わらずで、現在に至っている。それもまた予想どおりではあったが。

………
 新家さんの『読み方』で、特に興味深いのは、輸出や公共投資の増加をきっかけに景気回復が始まるとしている点だ。これはエコノミストには常識的でも、経済学者にとっては、そうでもない。理論的には、金融緩和がきっかけでなければならないからだ。新家さんの描く、輸出→民需→設備投資→消費という、需要が経済を動かしていく姿は、現実に裏打ちされたものだが、教科書的な経済学における、金利が投資と貯蓄を調整するという理論とは、異質のものになってしまう。

 普通の科学なら、事実によって標準的な理論が修正されるが、経済学は、政治思想でもあるので、そう簡単ではない。需要が経済を動かすとなれば、発散が起こって合理的な形に収束しなくなる。実際の経済は、そうした手に負えないもののように思えるのだが、こうした理解に立つと、自由な経済活動には是正が欠かせなくなり、政治的にまずいことになる。むろん、まずいものは、認めないに限る。結局、現実を読むためには、理論と折り合いをつけて、本音と建前を使い分けねばならない。

 先週の図で示したように、バラバラに動いている住宅、公共、輸出の3つは、足し合わせると消費や設備投資とパラレルに動くようになる。追加的3需要が所得を生んで消費を動かし、設備投資は需要を見ながらなされる。逆因果でないことは、増税で消費が折れたら、金融緩和と法人減税をしていたのに、設備投資も折れたことで明らかだろう。月次の下図でも、同様の傾向にあることがうかがえる。金利や収益でなく、需要が経済を動かしていると考えないことには、現状の把握も、先行きの予測もできない。データの観察は理論の見方も広げてくれる。

 歴史的にも、輸出を起点に景気回復が始まることは、戦後、一貫して観察されてきた。高度成長期には、金融緩和が直接に設備投資に効いたようにも見えるが、金融緩和には必ず輸出拡大が伴っており、これが遅れた昭和40年不況は回復も遅れている。また、財政出動だけで景気を回復させた例としては、福田赳夫政権が挙げられる。金利は住宅と輸出の実現を通じて効果を及ぼすにとどまり、経済は需要が動かす。1997年以降のデフレ期での変化は、起動後の好循環の芽を緊縮財政が摘むようになったためである。データの観察は歴史を深めるにも有用だ。

(図)



………
 「まえがき」によると、新家さんは、法学部出身なのに、入社直後、いきなり経済分析を行う部署に配属され、まったく分からず、途方に暮れたそうで、それが執筆した動機の一つらしい。人事の理由は、未だに謎のようだが、筆者には、何となく分かる気がする。なまじ理論のメガネをかけることなく、一からデータを組み立て、素直な目で経済を理解することを求めたのではないだろうか。そして、「自分は無知である」という意識が弛まぬ努力と現実を取り入れる柔軟性に結びつき、良い業績を収めることができたのだと思う。


(今日までの日経)
 設備投資16%増に上振れ。CS目立つ空き店舗。高所得者に負担増、可処分所得減。パート時給増、人手不足に拍車「年収の壁」で働けず、報酬積立の退職金制度も。

※高所得者の負担増は賛成だが、可処分所得を減らすほどの所得増税はやり過ぎ。本当に上げるべきは、分離課税の利子配当課税。
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11/23の日経

2017年11月23日 | 今日の日経
 少子化対策の焦点は、0-2歳の乳幼児にある。ところが、ここを外してくるんだね。民主党政権が2兆円超の子ども手当を創設したとき、実質的には「中学生手当」になっていて、がっかりしたが、今度の幼児教育無償化も、対象は3-5歳児だ。やるべきことより、やれることがなされてしまう。戦力の集中は、常識を超えるので、なかなかできないものだ。保育の供給が難しければ、預けない人に手当を給付をすれば、需要は冷める。これがカギだが、抵抗感を持つ人が多くて困るよ。育児の価値を安く見ていることに気づかないんだな。


(今日までの日経)
 日本経済になお97年の傷跡・藤井彰夫。賃上げ・投資で法人減税。待機児童解消こそ先決、ちぐはぐな政策。
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7-9月期GDP1次・消費の変動で分かること

2017年11月19日 | 経済
 イギリス史はひととおり知っていたつもりだったが、ブレイディみかこさんの『労働者階級の反乱』は、下から見た歴史が描かれていて新鮮だった。そして、いかに緊縮財政が政治の変動をもたらしたかが軸になっている。財政は、良かれ悪しかれ経済を動かしてしまい、政治や社会を変えていく。さらには意識までも。それは日本とて同じであり、7-9月期GDPにも影を落としている。

………
 実質1.4%成長となった7-9月期GDPへの一般的評価は、4-6月期の高成長の反動という見方だろう。確かに、4-6月期に高く伸びた消費がマイナスになり、マイナスだった外需が伸びて成長を埋め合わせた。しかし、そうした「波がある」というだけで、消費の変動はかたづけられない。以前も指摘したように、消費は追加的需要と関連性が強い。住宅投資、公共投資、輸出の3需要が増えると、所得が上がり、消費が伸びるというシンプルなメカニズムである。つまり、消費における4-6月期の伸長と7-9月期の縮小は、追加的需要の反映でもある。

 具体的には、公共投資は、4-6月期に+5.8%で、7-9月期-2.5%と大きく変動した。輸出は、これとは逆に-0.2%と+1.5%と推移した。輸出が逆に動いても、消費が公共と同じ方向に動いていることは、公共の消費に対する影響力の強さを表している。ボリューム的には輸出が公共の3倍以上であるにもかかわらずだ。こうした「公共がこけると、消費もこける」パターンは、昨年10-12月期にも観測された。したがって、消費を増やし、物価を引っぱりたいのなら、公共をぞんざいに扱ってはいけない。当たり前と言えば、当たり前だが、当たり前のことが見えなくなっているのが現実である。

 公共投資は、ムダの象徴とされて久しい。1997年のハシモトデフレ前と比較すると、既に半減しているが、未だに「公共事業を減らせば、財政は再建できる」といった、数字を見ない言説がまかりとおる。昔の政治に対する反感が今も残っているのだ。そこは価値観だから、仕方のない面もあるが、消費に影響するメカニズムは、依然として存在する。本当は、公共をただ切るのではなく、代りの用意まで必要だった。今度の補正予算では、人的投資などへの切り替えができるのであろうか。

(図)



………
 アベノミクスの本質は、緊縮財政、金融緩和、規制改革の新自由主義で、選挙対策に、財政出動と再分配をまぶすものである。旧来の自民党政治は、この逆で、積極財政、金融引締め、競争制限をベースに、時として自由化へ応じるものだった。意外に思われるかもしれないが、アベノミクスは、国民政党らしくない、反自民党的なものである。こうした変化は、米英と同様、1980年代以降、一つひとつ逆転が進んだ結果である。

 問題は、新自由主義では、インフレは防げるものの、成長が弱く、格差が開いてしまうことである。需要がないと、設備投資はなされず、資産投資ばかりで、庶民の生活は、なかなか向上しない。こうした実態は、自由の結果というイデオロギーで「見えない化」される。そして、反駁の言葉を持ち得ない庶民が怒りに任せて「反乱」を起こすのである。

 7-9月期GDPでは、物価上昇による名実の乖離も目立った。民間消費は、名目-0.4に対して実質-0.5であり、設備投資が+0.6に対し+0.2、住宅投資が-0.2に対し-0.9と、それぞれ実質値は低くなってしまう。輸入だと-0.4が-1.6にもなる。GDPと国内需要のデフレーターは、前期は共に-0.0だったものが、7-9月期は+0.3と+0.2へ上昇した。それゆえ、名目だと2.5%成長と4-6月期に続く高成長ぶりなのに、実質では1.4%にとどまり、減速した形になる。むろん、この背景には、異次元の金融緩和が招き入れた円安と原油高がある。

 円安や金融緩和が善というのも、ある種のイデオロギーで、実際には、場合や程度による。海外が好景気で企業収益が高く、国内消費が弱いなら、極端な金融緩和はせず、円高方向へ導くという政策を取るべきだが、主義が邪魔して、そうもいかない。また、株高が進むようなら、日銀は、緩和路線を守ってETFの買い入れを続けるのではなく、売りに回るべきだろう。株でバブルを作らないことが、むしろ、金融緩和を長持ちさせる。むやみな株高は、法人増税をちらつかせてでも抑え込む必要がある。

………
 11/16の日経社説は「外部環境に揺さぶられない強い経済を」だった。外部に左右されぬよう、国内経済も再生する必要があるとするのは良いが、求めるものが規制改革では、とてもおぼつくまい。財政の需要管理が稚拙で、公共投資は行き当たりばったり、金融政策は内需を萎ませる円安一本槍では、再生できるものも、てきなくなってしまう。日本には、イギリスと違って輸出という決定的な武器がある。それがまだ生きているうちに、輸出から所得増・消費増へ、内需拡大に向けた好循環を回していかなければならない。

 ブレイディみかこさんによれば、イギリスではコービンの労働党が反緊縮を「未来への投資」として打ち出し、労働党内の路線対立に乗じて圧勝を試みたメイ首相の保守党を総選挙で過半数割れに追い込んだという。翻って、日本の野党は、アベノミクスの表面的な批判に終始し、本質を分からぬまま、穴だらけの需要管理や単調な金融緩和の代案を示せなかったことが結果を分けたように思う。7-9月期の雇用者報酬の前年同月比は、名目なら+2.1%を保っている。ここからの舵取りが重要となる。


(今日までの日経)
 日銀総裁、副作用言及。デフレ脱却へ4指標プラス。復職者を即戦力に。米低学歴層に広がる絶望死。
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11/16の日経

2017年11月16日 | 今日の日経
 7-9月期GDPの結果は、ほぼ予想通り。あえて言えば、消費が低め、外需が高めの結果だった。反省点は、輸入減を踏まえて消費の予想を低めにしておくべきだったかなというくらい。消費は、昨年10-12月期から年率1.0%程度の伸びに復帰しているが、消費増税前のトレンドは年率1.6%位だから、まだ鈍い状況を脱していない。年率1.0%程度というのは、小泉政権期の強力な緊縮財政をやっていた頃と同じで、同じことをしているから、同じ結果というところだろう。

 消費が消費増税前の水準を回復するには、今後、年率1.6%に加速したとしても、あと1年かかる。これで、「より多く働けるようにしたのだから、景気回復を実感しろ」と言われても無理がある。消費増税をやり、緊縮もして、加えて、異次元緩和第2弾で余計な円安にして物価を上げたんだから、こうなるのは当然だ。日本経済は本当に素直で、やったとおりの結果を出してくれる。そして、同じことをして、首を傾げる。「もっと増税しないと、安心して消費をしてくれないのか」なんてね。

(図)



(今日までの日経)
 紹介状ない患者は負担増。1.6%成長に上向く・今年度予測。政府格付トリプルA減少。
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11/15の日経

2017年11月15日 | 今日の日経
 企業がカネを溜め込む現象は、日米欧共通なんだね。摘芽型の緊縮財政を早くから始めた日本が先行しているに過ぎない。企業にカネを使わせる方法のヒントはヤマトにある。需要圧力の下、労働力確保で四苦八苦だ。値上げをしているのに、利益計上もままならない。狭い範囲だが、物価も賃金も上がり、カネは社会に還元されている。値上げの過程で、巨大ネット企業からカネを取ることにも成功した。

 すべてではないにしろ、企業行動は、マクロの需要環境次第ということさ。もちろん、需要管理は簡単ではなくて、財政を使うなら、金利上昇に備えた利子・配当課税の強化とか、株価高騰時の法人増税とか、いろいろ工夫もいる。遠い話だが、物価上昇が行き過ぎたら、消費増税するというコンセンサスも必要だ。これからは、ゴールドの縛りから解き放った管理通貨制度ならぬ、管理財政債務制度が必要になるだろう。


(今日までの日経)
 上場企業3年ぶり増収、純利益17%増最高。カネ余り、米企業も貯蓄超過。年末配送、時給高騰。株式純発行ゼロ・梶原誠。マネー膨張、躍らぬ経済。
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底辺への競争をもたらしたもの

2017年11月12日 | 社会保障
 山田昌弘先生の本は、いつも興味深くて、『パラサイト・シングルの時代』以来、長く読み続けているのだけれど、団塊ジュニア、俗にロスジェネ世代の悲惨な運命を見るようで、だんだんに辛くなってきたよ。新著の『底辺への競争』は、名目ゼロ成長の20年間に、満足に就職も結婚もできなかった世代が寄る辺なき老後を迎えるという物語だ。山田先生は社会学者で、エコノミストではないので、今回は、なぜこうなったかと、どうすべきかを補ってみたい。

………
 端的に言えば、日本は、1997年から摘芽型の緊縮財政を始めたからである。これは、成長より財政再建を優先し、景気が上向いたところで緊縮を始め、本格的な成長に至らせない政策である。そのため、雇用が引き締まらず、賃金上昇は鈍く、消費も停滞して、デフレが続くことになる。残念ながら、それでは設備投資も出ず、成長もしないから、財政再建もできずに、緊縮は半永久的に続く。裏返せば、雇用と十分な賃金を行き渡らせるには、物価が上がるだけの需要の圧力が必要で、そこまで緊縮は待たなければならない。

 団塊世代が過ごした高度成長期における政策は、時流に乗っただけのものというのが通説的理解だが、財政を黒字基調にし、インフレを抑制する選択肢も在り得た。そうしていれば、一億総中流の平等社会には至らなかったろう。高度成長だからと言って、必ずしも平等社会にならないのは、物価高による民衆の反発を恐れた中国の例が示すとおりである。「インフレは人間の価値の向上」と言い切り、高圧経済を推し進めた日本は、実は非凡な政策をしていたわけだ。

 こうして形成された豊かな団塊世代が親であったことで、そのジュニア世代は、1997年までは、パラサイトを楽しめたし、就職氷河期になっても、引きこもることが可能だった。しかし、失われた20年が経って、老いた親には頼れなくなり、多くが非正規や未婚のまま、独りで生きていかなければならない。また、経済力に乏しい団塊世代が親の年齢になった今、子供の貧困が蔓延するようになったのも当然の流れだ。そして、これからは下流老人の大量発生へ連なっていく。デフレが人間の価値を毀損したのである。

………
 もう、どうすべきかは、明らかだろう。足下で景気は上り坂にあるのだから、ここで敢えて緊縮財政なんてしなければ良い。ところが、今度の補正予算で5.4兆円も打たないと、財政中立にならない。この驚くような事実は、日本の財政は何もしないと緊縮になるよう設計されているからである。これが知られないのは、説明がないためで、その理由は「聞かれないから」である。無知で苦しむ責任は本人にあるという論理なのだ。

 山田先生は、団塊ジュニアを救うために、「新しい連帯」を訴えるが、これをエコノミスト的に制度を考えると、非正規から正社員へと円滑に労働時間を増やせるよう、社会保険料を軽減して「壁」を無くすのが一番有効だろう。少しでも長く厚生年金に加入できるようにして、下流老人の発生を減らさねばならない。突破口がどこにあるかは、「非正規の解放、経済の覚醒」を参照いただきたい。東京都あたりで実験してはどうか。

 アベノミクスに対しては、批判を急ぐ余り、全否定する向きも多いが、否定だけでは、自ら進むべき道を失うことになる。アベノミクスは、景気回復のトレンドを維持しただけと揶揄されつつも、消費増税の延期という決断がなければ、それすらなかった。この重要性は、政権自身も、あまり分かっておらず、純増税へ路線を切り替えたりしている。モリカケも大事だが、財政の需要管理の監視は、国民生活に直結する課題である。

 また、アベノミクスの本質は、緊縮財政、金融緩和、規制改革の新自由主義的なものと思われるが、分配政策にも手をつけている。ライバルのアピールポイントを消そうとするのは、政治的定石であり、脅威感の反映でもある。とは言え、輝く女性とか、待機児童には熱心でも、パート、母子家庭、子供の貧困のような低所得層へは手が薄い。おそらく、そこに注力しないのは、自助を誇りとする保守的な中流下位層の目を気にするからだろう。

………
 団塊ジュニアやその子らを救うには、単純に分配する以上の工夫がいる。カギになるのは、「がんばっている者を助ける形」を作ることであり、それが社会全体にとっても「得」であると示すことだ。先の社会保険料の軽減は分配でありつつ、労働力促進でもあり、企業負担軽減でもある。出世払い型の奨学金でも、年金の受給権で相殺する代わり、受給権を増やせるよう、学生パートも厚生年金に軽減された保険料で加入できるようにするといった方法を採れば良い。「新しい連帯」は戦略的に味方を拡げて築くものなのだ。


(今日までの日経)
 老いる企業設備、90年度比2倍。崩れる株高=円安の構図。 
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11/11の日経

2017年11月11日 | 今日の日経
 河野勝先生の論考は面白いね。筆者は古いものだから、日本の有権者は、派閥による権力の抑制や均衡があった、かつての自民党政治のようなものを求めているのかなと考えてしまう。また、一般には、小選挙区制は二大政党制を生むものとされるが、日本の併用制の場合は、野党間の結束や野党第一党の党内統制を難しくしているのかもしれない。いずれにせよ、単一のモデルだけが正しいとは思わないことだ。

 蛇足だが、河野先生は、安倍政権の信認度と経済指標は関連が薄いという見方なのだが、関連を見るなら、景気ウォッチャーなどの意識指標との比較検討が適切ではないか。それらは、比較的、信頼度に似た動きを見せる。消費増税後に停滞し、輸出の衰えを受けて2015年春頃から下り坂となり、輸出回復により2016年夏頃から上り坂となる。むろん、先生が指摘する論争性の高いイシューとは別のもので、背景となる動きである。

 おっと、専門外の政治談議は置いて、10月景気ウォッチャーの分析をしておくと、とても良好だったよ。台風の天候要因で家計関連は不調だったが、季節調整値で見て、雇用関連、企業関連は、消費増税後の最高を記録するに至った。ようやく、ここまで来た。人手不足と言われても、主観的な景気の実感は伴っていなかった。もはや増税後ではない、今後は生産性の向上を通じて成長すると言うところか。

(図)



(今日までの日経)
 上場4社に1社最高益、電機機械鮮明、商社資源高。
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11/10の日経

2017年11月10日 | 今日の日経
 緑のジャンヌダルクがタヌキ汁にされるまで、マスコミは御相伴にあずかったようだが、筆者は恐怖を覚えたよ。こんなことで、デモクラシーは動かされてしまうのだってね。ジャーナリストは、日々の出来事をそのまま伝えただけという意識でいても、知的枠組みに大きく左右される。「政治は二大勢力が争い、国民に選択肢を与えるべき」というイデオロギーに支配されているのではないか。だから、それに外れる動きを反射的に批判してしまう。

 あえて言えば、二大政党制は、米英型の特殊形態だ。多党制で、連立によって政治が変わる西欧型も民主主義の一つの正統である。そして、早大の河野勝先生の優れた論考である『なぜ安倍内閣の支持率は復活するのか』(中央公論11月号)からは、民意が求めていたのは、自民党の「補完」ないし「修正」の勢力だったと読める。こうした民意に沿うのが民主主義と言ったら、猛烈な反感を買いそうだが、それこそ思考に自由がない証拠である。

 希望の党の新しい共同代表は現実路線と聞く。まず何をなすべきか。筆者は、国会議員全員で、現実主義の多党制で知られるオランダに行ってはどうかと思う。平成の「岩倉使節団」だよ。近代化が何か、想像もつかなかった先人は、政府を留守にして学びに向った。国作りのビジョンの共有には、ここまでやらなくてはならない。もちろん、筆者が知ってほしいのは、非正規を一掃した税・社会保障の改革なんだけどね。


(今日までの日経)
 TPP11大筋合意。街角景気10月も改善。未完の金融改革・拓銀は偶然。オランダの税・社会保障に学ぼう・立岡健二郎。幼児教育無償化200万人増。本質置き去りの無償化・木原雄士。いざなぎ超え 不安交じり。

※日本が大きな国際的枠組みを作るなんて、偶然の産物とは言え、凄いことだよ。ASEAN諸国の加盟までは予想されるところであり、米国が入らなくても、いや、入らないことで、歴史的な意味を持つような気がするな。
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11/8の日経

2017年11月08日 | 今日の日経
 9月の毎月勤労統計は堅調だった。常用雇用は前月比+0.4、実質賃金は+0.1となり、二つを掛け合わせたものは、7-9月期の前期比が+1.1となった。1-3月期+1.0、4-6月期+0.9に続くもので、7-9月期の消費がマイナスになるとしても、ベースの所得の伸びは高く、今後の潜在力をうかがわせるものになっている。

 その反面、9月の実質賃金を前年同月比で見ると-0.1である。名目の現金給与が+0.9だから、物価上昇で相殺されている。円安と原油高の影響だ。金融緩和による円安は、企業と税収にはプラスでも、家計や消費にはマイナスだ。このあたりのバランスが大事だが、金融緩和への批判は、原理主義ばかりが多い気がするね。

(図)




(今日までの日経)
 日経平均・バブル崩壊後最高。対日赤字削減へ協議・日米首脳会談。
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