経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

民のカマドと再建のしがらみ

2012年02月29日 | 経済
 一面特集の「ニッポンの企業力」は第4部の最終回。なかなか良いまとめだった。企業の再建は「当たり前のことをするにあり」というのは至言だ。逆に言えば、破綻が目の前になってすら、しがらみを除くのは難しいということである。為すべき策は、現場が分かっているにもかからずにね。

 国家経営も同じこと。日本に必要なのは成長であり、それには安定的な財政運営がいる。財政破綻は不安かもしれないが、消費増税で一気に解決しようとせず、成長の範囲内で徐々に再建を進めていくしかない。所得が増さなければ、税は払えないというのは、現場では当たり前の真実だが、「消費税教徒」のしがらみは強固だ。

 昨日、第一生命研の熊野英生さんがおもしろいレポートを出していた。「貯蓄なし世帯3割の驚愕」というものだ。2011年の金融広報中央委員会の「家計の金融資産に関する世論調査」の結果によれば、貯蓄なし世帯が急増したという。こういう数字の大きな変化にビビットに反応するあたりが、熊野さんのセンスの良さである。

 ただし、その原因については、クロス集計の結果がまだなこともあって、いくつかの候補を挙げる形にして、確定的なことは言っていない。2011年は大震災があったから、まずは、これを疑うということになるが、どうも、これではないようなのだ。高齢化も要因として考えられるが、トレンドを超える急増の説明はつきにくい。

 筆者の解釈は、リーマン・ショックの影響が今になって表れたというものだ。この「調査」のさかのぼってみると、貯蓄なしの急増は、過去にも例がある。2001年から2003年かけてである。これは1997年のハシモトデフレの結果と思われる。経済ショックから景気低迷が続くと、数年後に「貯蓄なし」が急増するのだと考えられる。 

 つまり、ショックで雇用が悪化し、貯蓄を取り崩して生活せざるを得ない人が増え、その後に不況が長引くと、とうとう貯蓄が底をついて、「貯蓄なし」が急増するわけだ。当局に言わせれば、「財政は危機的状況」かもしれないが、民のカマドは、既に「破綻続出」なのである。成長の確保、すなわち、所得の向上が最優先なのは言うまでもない。

 こういう状況では、消費増税が急速に不人気になってくるのも当然だ。今週の日経ビジネスでは、「消費税が上がったらどうするか」という一般の人への聞き取りをしているが、答えは「一層の節約」だった。当たり前の結果だが、当局を始めとする日本のエリートは、消費税を上げると、「将来に安心して、貯蓄を減らし消費を増やす」と思っている。急増している「貯蓄ゼロ」の人は、どうやって消費を増やすのかね。

 日本が断ち切らなければならないのは、「消費税教徒」のしがらみである。かねがね本コラムが主張しているように、必要なのは「平凡」な財政運営である。現場や庶民の辛さが分からないエリートのしがらみを除くのは、企業の再建と同様、とても難しい。目の前に「破綻続出」の現実があってさえもね。

(今日の日経)
 イラン攻撃排除せず。日航再生・しがらみ断ち決断、解は最初から現場に、やったことは当たり前のことばかり、冷静に現状を分析し合理的に決断。配当3年ぶり高水準、減益でも増配、前期比3%増。経済教室・軽減策・森信茂樹。
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2/27の日経

2012年02月27日 | 経済
 滝さんも、沖縄科技大を見に行ったようだね。日本の大学は国際化で喧しいが、必要なことは、すべて、そこで実現しているから、一見の価値がある。むろん、秋入学で、英語での教育が行われている。秋入学と英語と言えば、中嶋嶺雄先生が学長を務める国際教養大も成功を収めている。欠点は、全国から優秀な学生が集まりすぎて、地元秋田の高校生の合格が難くなったことと言われるほどだ。南と北の挑戦は、もっと注目されるべきで、地方だからと軽く見てはいないか。これこそ日本に必要な多様性だよ。あとは、理系の完全英語の学部教育がほしいところだ。

(今日の日経)
 AIJ契約、中小9割。IMF強化、4月具体策。和製ソフトに飛躍の鼓動。社説・金融緩和テコに国と企業は改革急げ。人に投資で産業転換・前スウェーデン財務相。米企業、ドル安修正に懸念。製造業が中国を離れる日。沖縄科技大の挑戦・滝順一。震災後1年の消費の実像・田中陽。経済教室・社会保障の改革が前提・長谷川閑史。

※今月、子ども手当をもらった人は、23%カットになっていることに気づいたと思う。日銀が金融緩和をしてくれるから、政府は安心してデフレ促進策ができる。今日の経済教室は「財務省見解」の丸写しだな。オリジナルは現実からかけ離れてしまった年金改革案くらい。6月には地方税の年少者控除も廃止されるが、これは社会保障の改革ではないのかね。
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日本の権力構造を考える

2012年02月26日 | 経済
 先日、読売新聞の消費税増税のキャンペーン記事で、世代間の格差論が大書きされていた。とうとう日経から読売にまで伝染したか。財政当局のプロパガンダには、本当に舌を巻く。世代間に格差があるように見えるのは、世代によって出生率に違いがあるためで、格差を縮めるには、少子化を緩和するしかないのだが、増税の根拠にされてしまっている。

 世代間格差論の誤謬については、11/28「世代間の不公平を煽るなかれ」とか、12/3「世代間負担論の到達点」とかを読んでいただきたいが、匿名の本コラムに不安ならば、慶大の権丈善一先生のHP(2/7)を見てもらえば良い。権丈先生の努力で、年金の「抜本改革」の幻想は、ようやく打ち払われようとしているが、今度は、世代間の格差論で日本は迷走するのかね。何ともやり切れない思いがする。

 今週の日経の経済教室では、「民主主義の課題」が特集されていたが、日本の権力構造については、意外と認識されていないのではないか。こういうものは、内にいると、かえって分からなかったりする。むしろ、米国の共和党がどういう勢力と結びつき、どんな政治経済の思想を持っているかを答える方が日本人には簡単かもしれない。

 日本の権力の中心には、財政当局が居る。むろん、財政当局の権力は万能ではないから、連合を形成する必要がある。その第一の対象は経済界であり、それゆえ、どんなに財政が苦しくても法人減税は例外だし、無益な為替介入だって、御要望とあらば、果敢に試みることになる。そして、情報のコントロールによって、新聞と一部の学者を操り、消費増税こそが日本を救うと、巧みに世論を形成していく。

 問題なのは、財政当局が進めようとする「財政再建路線」は急進的過ぎて、さまざまな摩擦を起こしていることである。例えば、復興増税騒ぎである。大規模増税の野心を抱かず、法人減税の見送りと、金利と定率償還分の3000億円程度の所得増税を最初から打ち出していれば、被災者を冬まで待たせたり、政治を混乱させることもなかったろう。

 現在の社会保障と税の一体改革も同じである。使途が極めて明確な年金の国庫負担1/2の財源確保に的を絞り、2014年から消費税を1%だけ上げるとするなら、国民的合意は容易なはずだ。それ以上は、成長率を見つつ、2016年以降に再度引き上げるとすれば良い。それを一気に3%も上げ、その1年半後には更に2%が必要で、その後も、どこまで上げるか分からないと言うのでは、不安が広がるのは当たり前である。

 消費税は、ある程度の成長率がなければ、引き上げても、経済を壊すだけに終わる。逆に、インフレ率が高まってくれば、機動的に引き上げなければならない。日本が欧米に比べて消費税率が低いのは、政治や国民がだらしないと言うより、長くデフレに沈んでいるからである。一番いけないのは、経済状況に合わせようとせず、計画経済的に決め打ちすることだ。

 今週の日経ビジネスは、「消費税30%の足音」として、増税時の企業の対応策を示す特集を組んだが、これを見て、前向きに対応しようと思う経営者がどれほど居ろうか。正直、「これは無理」という印象だろう。中小の小売業に至っては、絶望的な感じさえしたに違いない。経営者には、今のデフレ経済の感覚しかないのだから、想像を絶する痛みに思えるはずだ。

 マスコミでは「決められない政治」などと揶揄されるが、政治に軋轢が生じるのは、財政当局の路線が急進的すぎるからである。その急進さを「待ったなし」などのフレーズで覆い隠し、過剰に政治に責任を押し付けているように見える。しかし、その無理は、国民の生活感覚まではごまかせないから、大衆的な政治家ほど、訳も分からないまま反抗するし、ポピュリズムが国民に蔓延することにもなる。

 戦前の政党政治の崩壊は、大蔵官僚出身の浜口雄幸が金解禁という無意味な経済政策のためにデフレを敷き、国民に塗炭の苦しみを与えて、政党への信用を失墜させたところから始まっている。金解禁は、プロパガンダよって国民に歓迎されたが、不況の現実は、瞬く間に失望へと変わり、政党政治に代わるものが待望されるようになった。世代間の不公平を唱え、一気の増税しかないと叫び、政治や国民がだらしないから実現しないと批判するのでは、政治を壊すだけではないか。

 本当に世代間格差を縮めたければ、カネを使って少子化対策を強化すれば良い。それも、基本内容の「雪白の翼」で示したように、年金数理を応用すれば、ほとんど負担増なしに実現できる。何も、消費増税で高齢世代を痛めつけることもないし、それができないと政治が責められるいわれもない。しかし、日本には、それでは困る権力構造がある。まあ、そういうことなのだ。筆者だって、周囲に迷惑が及ぶかもしれないと思うと権力は怖い。もし、本コラムが読まれて、世代間の不公平論を跳ね返すことができれば、それこそ、日本でも、「ネットで革命」ということかな。なんてね。

(今日の日経)
 AIJ問題・信託・企業年金も調査。ハイブリッドに死角、車もガラパゴス。年金交付国債が焦点に。社説・役立つ番号制度。ドラギ総裁、火消しに手腕。米大統領選・無党派層に選択肢がない。中外・40年後のあさま山荘考。読書・若年層活かし活力・福田慎一。
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協調主義の具体的な理解

2012年02月24日 | 経済
 今日の経済教室のS・ヴォーゲル先生の論考は、示唆に富む内容だったね。しかし、どれほどの人が、その示唆するものを読み込めたのかと思う。ヴォーゲルさんは、ポイントとして、「官僚の権威回復」ということを挙げている。この一事を取っても、「とんでもない」と拒否反応を示して耳を貸さない人が多いのではないか。 

 日本では「大改革」が必要と言われがちだが、本当に直さなければならないのは、あまりに稚拙で極端な財政運営だけである。実態を明るみに晒さなければならないのも、財政運営だけだ。しかも、必要な改革は、痛みが伴うようなものではなく、ごく平凡な路線を取れば良いだけである。その具体的な内容は、12/11の「平凡に我慢できぬが人の常」などを読んでいただきたい。

 もし、ヴォーゲル先生のいうような「協調主義」が成立するなら、経済成長と財政再建をどうバランスさせるかの真剣な議論がなされるはずだ。おそらく、その結論は、現状の低成長なら、基礎年金の国庫負担1/2を実現する分の消費税1%だけの引き上げをしようといったものだろう。少なくとも、一昨日、財務相が答弁していたような、デフレの状況でも、3%の引き上げは敢行するといったような度外れた方針にはならないはずである。

 また、日本においては、協調主義とは対極的な「財政当局と経済界の歪んだ結託」が財政再建どころか、財政破綻を招きかねない状況になっていることは、12/17の「財政運営の死に至る病と希望」に書いたとおりである。今日も日経は、「米国も法人減税だから、日本も」と、はしゃいでいるが、それが何をもたらすかを玩味していただきたい。

 ヴォーゲル先生の論考は抽象的だから、さらりと読み終えてしまうだろうが、本コラムの日本の実例に引き付けて読むとき、意味するものの深さが良く分かるはずである。日本風に翻案すれば、コーポラティズムとは、官僚が現実的な選択肢を作り、政労使で選んでいくという形だろうか。およそ、人気が出そうにないが、「小さい政府」以外の思想と政治連合だってあるわけで、そうのように相対化して国の在り方を見つめることも必要と考える。

(今日の日経)
 年金2000億円の大半消失。製造業を世界が争奪、米法人税下げ案。日本企業も円売り。ドバイ原油120ドル突破。ユーロ再生・底なしの懸念。リカード(終)・若田部昌澄。経済教室・真の協調主義の実現を、経済政策での官僚活用が鍵に・S・ヴォーゲル。
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2/23の日経

2012年02月23日 | 経済
 今日は、高坂さんの記事が良かったな。こういう軍事の最新の動きをつかんでおかないと、日米関係は読めないからね。日本では安全保障と経済は離れた存在だが、そうでもないんだな。米国では軍事と経済のエリートのつながりは濃いしね。先日、中嶋嶺雄先生が「日本の大学は人口論や安全保障が弱い」としていたが、同感だ。本コラムで割りと人口論や安全保障を書いているのは、知らずしらずに日本に足りぬ部分を補っている気がするよ。

(今日の日経)
 超円高の修正進む。大学開国・同一モデル転換。米法人税28%に下げ。東北に太陽光パネル、中国よりコスト1~2割高でも。円安で企業収益の懸念和らぐ。男女の賃金格差最小。LNG・割高調達、日本は5割高。日銀、外需で独自指標。北東アジア舞台に・米が演習・高坂哲郎。中国、内陸も労働者不足。電子部品の在庫悪化。10年債0.975に上昇。和牛子牛価格が高騰。経済教室・社会の一体性・宇野重規。

※次は米国の雇用統計と日本の消費統計を待ちたい。※オバマがするとは。※法人税棒引きでもセル組み立てライン程度か。※株価上昇の含み益もある。※内陸への波及も早かったね。
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2/22の日経

2012年02月22日 | 経済
 今日の経済教室の加藤先生が言う「合理的無知」も分かるのだが、日本の有権者は、なかなか健全でね、消費増税を受け入れても、政府案に反対なのは、増税ができる経済状況にないという単純な理由。景気に悪影響を与えない範囲の緊縮や増税の数量を、まじめに考えない財政当局と有識者の方に欠陥がある。日本には、P・クルーグマンを載せるNYタイムズもなければ、M・ウルフが健筆を振るうFTもない。当局の「御説明」に塗りつぶされて、言論に多様性がないのが、日本の民主主義の課題だと思うね。
 
(今日の日経)
 ギリシャ財政をEUが監視。春入学で一橋大が独自案。郵政見直しに公明独自案。イラン原油削減幅を拡大。円が13日連続下落。LNGの死角・更新すれば3割抑制。イエメン・副大統領を選出へ。NY株一時1.3万ドル。マツダ・現在の円相場でも輸出で利益。ライフ出店2倍。造船・ニッチ特化か。デンソー・東北に新工場。市場が物価上昇織り込む。経済教室・民主主義の機能不全・加藤創太。

※一橋大がするくらいの工夫は当たり前。※LNGにも効率化の余地があるんだね。※景気先取りもこのあたりかな。※内需が減らないというだけで、この変化。※今日はgooのメンテナンスで、朝に更新ができなかったよ。
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東大が「日比谷」化する日

2012年02月21日 | 経済
 今日は近未来フィクションである。2017年、東京大学は、ついに秋入学制に踏み切った。意外だったのは、一部の主要大学がこれに追随しなかったことだ。これは、後の悲惨な結末を暗示するものだった。

 旧帝大のうち、北海道、東北、九州の各大学が追随しなかったのは、地元高校と県当局からの強い反対が背景だった。豊かでない地方の高校生にとって、秋入学までの無駄なギャップイヤーの期間は経済的に負担が重く、進学のチャンスを摘んでしまうと訴えたのである。海外の留学生の便宜より、地元の高校生を大切にして欲しいというのは、もっともな話だった。大学側は東大に遅れることに不安もあったが、数年は様子を見ることで妥協した。

 早稲田大と慶応大が追随しなかったのも、東大にとって予想外であった。もともと、私学は、ギャップイヤーによって、半年間も入学金などの収入が先延ばしになるのは痛かった。春秋入学制という半身の構えで対応し、果たして秋入学制が成功するかどうか、結果を見てからでも遅くないというのが最終方針になったのである。 

 秋入学制は、新聞や経済界といった、「グローバル人材」などという抽象的な言葉で喜ぶ人たちには評判が良かったが、やってみると、専門家が危惧していたことが、次々と現実になっていった。第一は、秋入学制にしても、優秀な外国人の留学生が大して増えなかったことである。優秀な留学生が日本に集まりにくいのは、入学時期よりも、教育内容の問題だったからである。

 その反面、弊害は大きかった。海外の有名大学が、「どうせギャップイヤーを空費するなら我が大学へ」と、営業攻勢をかけてきたのである。これまで東大が抑えてきた、東京の高所得層に属する最優秀の高校生をゴッソリと持っていかれてしまった。また、伸びしろが大きく素質のある高校生は、東大より、東北大や九州大を選ぶようになった。両大は、国際化は、学部でなく、大学院でするというアピールにも努めた。

 他方、私学の雄は、「ギャップイヤーのムダを考えれば、私学の学費も高くない」と強調し、首都圏の中所得層のできる高校生を奪いにかかった。東大合格レベルの生徒には、奨学金を充実することも忘れなかった。結局、東大は、わずかな留学生と引き換えに、日本人の最高の学生の多数を失ってしまった。まさに、抽象的な理念に溺れて学区制度を敷き、優秀な生徒を失って没落した、かつての日比谷高校の二の舞になったのである。

 東大の失敗の理由は何だったのだろう。答えは簡単だった。日本人の高校生という、自分たちにとっての最大の顧客のことを、ちっとも考えなかったからである。そもそも、自分たちの方針に皆が付いて来るという驕りがあり、顧客はもとより、競争者も戦略を変えてくるとは思ってもいなかったのだ。こうして、社会に多大な迷惑をかけ、日本の教育を衰退させて、壮大な実験は終わったのである。

※冒頭を書き損じておったので、謹んで訂正します。

(今日の日経)
 先端医療の実用化早く。マンションにスマートメーター。大学開国・内向き変える好機に。アジア輸出が黒字を左右。円売り権利が示す変調。コンビニ売上高1.7%増。百貨店は減。陶酔の賞味期限・梶原誠。経済教室・回復軌道へ・センター予測・愛宕伸康。
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政党に求めるべき年金改革の答

2012年02月20日 | 社会保障
 現行の年金制度の大きな課題は二つある。一つは、昨日、書いた、基礎年金の国庫負担分3.3万円を下回るような低年金の受給者の底上げ。もう一つは、今日の日経にもある、パートの主婦や非正規労働者への社会保険の適用拡大である。国民には、抜本改革の絵空事ではなく、この二つに対して、きちんとした答を持っている政党を選んでほしいものだ。

 この二つの問題に対する基本的な答は、国庫負担分3.3万円は、ほぼ無条件に受給権を認めたうえで、これに払った保険料に応じた給付を上乗せしてやるというものである。具体的には、パートの場合、ほぼ全員を厚生年金に加入させるものの、低い保険料率を設定してやり、その代わりに、得られる年金も少ないものにすることになろう。

 例えば、夫のいない女性の場合、現行の厚生年金の保険料率の1/4の約4%とすると、年収120万円なら負担は、月に4千円となる。これを労使で折半する。この程度なら、企業も受け入れの余地はあるのではないか。受け取る年金額は、国庫負担分3.3万円+保険料分9千円ということになろう。これは、国民年金に加入し、保険料の3/4減免を受けた場合と、負担も給付もほぼ同じである。ここから始めて、経済状況に合わせて、徐々に保険料を上げていけば良い。

 他方、夫のいる女性の場合、夫が妻の基礎年金の相当部分6.6万円までの保険料を負担していると「見なし」、妻がパートで払った保険料分は、それに上乗せする形で報いる。つまり、プラス9千円で7.5万円の給付になる。「見なし」は、いわば、夫が妻の国民年金の保険料を肩代わりし、自分の年金の取り分を減らすようなものだ。これで、専業主婦が特権を持っているとは思われなくなるだろう。

 こうした「芸当」ができるのは、基礎年金の1/2国庫負担の実現と保険料の引上げによって、国民年金の負担と給付の対応関係が保険数理に近づいたことがある。かつてとは異なり、必ずしも国民年金が割りの良いものではなくなり、払った分が還ってくるだけのものへと変化してきている。その意味で、所得把握の必要性の問題も変化してきている。

 他方で、国民年金の保険料を引き上げたことは、非正規などの低所得層には重くなり過ぎて、減免制度を充実させざるを得なくなった。厚生年金も適用を拡大するなら、同様の問題を抱えることになるわけで、軽減保険料率を考えざるを得ないのである。国民年金と厚生年金を統合することは簡単ではないが、保険数理を基準として、制度を近づけることは可能だし、必要なことであると考える。

(今日の日経)
 秋入学、変革のうねり。消費増税への反対49%。NTT東が光回線値下げ。パートの主婦170万人保険料。核心・民自で新結合・芹沢洋一。株価、世界で同時高、緩和マネー流入。秋入学インビュー・中嶋嶺雄。オフィスビルのエネ消費0へ。経済教室・経済発展の仕組み・岩本康志。勉強しない学力中位層。

※中嶋先生が言うように、日本の大学の欠点は多様性がないこと。均一性は、政策がはまれば、効果は大きいが、失敗も高くつく。在学が長引く学生の負担の大きさも考えてやるべき。中嶋先生の言うような先にしなければならないことも多いし、滋賀大の佐和先生の提案する3月入学や、大学院の秋入学、学部の繰上げ秋卒業、高校3年秋での飛び入学など、多様な実験もすべきだろう。そんなチャレンジを許さないのが日本的ではあるが。

※身を切れという人は、いくら切っても納得しない。反対が増えたのは、デフレが悪化したせいではないのかね。増税を目指し、もっと切って、デフレを進めるがいいさ。※競争は値下げを呼ぶ。東電と電電は違うな。※意外にも大連立の支持が今でも高い。
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年金加算について考える

2012年02月19日 | 社会保障
 維新の会の年金改革構想を見ていると、掛け捨て年金だの、積立方式だのと、日本の年金論議は、またフリダシに戻ってしまうのかと暗澹たる思いがする。一般の人には、何が問題なのかも分からないだろうが。

 社会保険制度の原則は、払った保険料が老後に還ってくることである。これを忘れないでほしい。掛け捨てとは、払った保険料が還ってこないことを意味するから、もう社会保険とは言いがたい。「それは高所得者の話だから関係ない」と甘く見ていると、財政が苦しくなるにつれ、還ってこない範囲は無原則に広がるだろう。原則を失うとは、こういうことなのだ。

 また、公的年金制度は、子が親を支える制度なので、子供がいる人にとっては、積立方式に変更して余計に保険料を払う必然性は何もない。積立方式を唱える人は、とにかく負担を増やしたかったりするから、要注意である。現行の年金制度は、既に保険料率の上限が決まっていて、予定以上に負担が増すことはないことを思い起こしてほしい。

 現行の年金制度は、ずるずると給付水準が低下するおそれはあるが、破綻はない。むしろ、ずるずると低下する調整がなされるから、突然、制度が立ち行かなくなるということはないのである。この給付水準の低下を防ぐには、少子化を緩和するか、経済成長を高めるしかない。年金をいじるのではなく、そちらに注力すべきなのだ。年金を改革すれば、解決できると言う人の主張は、まず疑ってかかるが良かろう。

 むろん、現行の年金制度にも「改善」を要すべきところはある。2/14の社会保障審議会・年金部会で議論された低所得者への加算もその一つである。その議論は、煎じ詰めれば、消費税増税の増収を使って、どういう人に、どのくらい加算をするかというものである。その考え方は、どうも二段構えになっているようだ。

 一つは、免除加算というものである。現在は、基礎年金の国庫負担は1/2になっているから、仮に保険料の全額免除を受けても、半分の3.3万円は受給できるが、既に受給している人は、国庫負担が1/3当時の2.2万円しかもらえないでいる。これを今後の受給者と同様の3.3万円程度に引き上げようとするものだ。これは十分に納得できる。

 もう一つは、民主党の7万円の最低保障を実現すべく、6000円を上乗せするものである。これは、保険料を上げるわけでもないし、国庫負担を1/2から引き上げるわけでもないので、なかなか正当化が難しい。しかも、未納期間も加算の対象になる。最低限の生活水準に必要という説明のようだが、そもそも、ベースの6.4万円は、マクロ経済スライドで下がることになっている。こうしてみると、実現は、前者のみにとどまるように思えてくる。

 ちょっと、難しかっただろうか。年金制度を抜本的に「改革」するとなると、ワンフレーズで済むが、「改善」するとなると、とたんに専門的な話になる。これを万人が理解して、年金制度で政権を選ぶというのは、なかなか難しいように思う。それゆえ、あえて見栄えの良い公約を掲げて引きつけようとするのかもしれない。

(今日の日経)
 中国が金融緩和、準備率下げ、インフレより優先。温暖化対策を取引1万社と・パナソニック。企業収益・どう生かす眠れる資源。円売り続く展開か、一時79.62円。時間軸政策は回復期に効果発揮・清水功哉。電力改革・価格活用、一時国有化、エネ課税・八田達夫。中外・仕切りなおしの北方領土。フィリバスター宣言・大石格。読書・さよなら僕らのソニー、経済大国インドネシア、地球と共存する経営。

※さすが八田先生だ。傾聴すべき点が多い。※プーチンに期待せず、次の「プチャーチン」との交渉も展望すべし。民主化なしに法と正義による解決はない。
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大改革と憲法の関係

2012年02月17日 | 経済
 会社でも、業績が悪化してくると、一発逆転を狙って賭けのような投資をし、それが致命傷になってしまうことが多い。国も同じことであり、今の日本で「維新」を掲げる勢力が人気を得るのも分かる気がする。

 筆者は古いので、ハシモト改革というと、1997年当時の橋本龍太郎政権の6大改革を思い出してしまう。消費税増税を始めとする大規模な緊縮財政が、バブルの後始末で体力を落としていた金融機関を直撃し、日本経済を奈落に放り込んでしまった。奈落の悪しき均衡から、いまだ抜けられずにいる。

 外交・安全保障で今も日本を揺さぶり続ける沖縄の普天間基地問題も橋本政権が蒔いた種である。橋本改革の目玉の中央省庁再編で、原子力に責任を持つ科学技術庁は解体されてしまったが、今回の原発事故では、責任体制の弱まりを痛感させられることになる。地道な改善に飽き足らず、飛躍を狙うことには危険もあるのである。

 大阪維新の会が掲げる船中八策の「掛捨て化による年金改革」は、保険制度を否定する大改革だ。保険料を取りながら、給付をしないというのは、「税金」としか言いようがないからだ。高所得者は少数派だから、何をしても構わないと思っていると、保険制度そのものへの否定につながり、年金財政が苦しくなれば、どんな給付削減も辞せずといったことになりかねない。

 めんどくさいことを言うと、年金の削減というのは、財産権の侵害という「憲法違反」も意識しなければならない。仮に、維新の会が権力を握ったとしても、参議院廃止など他の公約と同様に、憲法改正が必要だから実現できないと言い出す可能性がある。むしろ、そうなっても、「だから、より多数をくれ」と運動を続けることが真の狙いなのかもしれない。

 本コラムは、年金改革については、保険原理に基づいたものを提案しているし、衆参のネジレ解消のための方策も、憲法改正なしに実現する方法を、7/28「参院選改革は移し替えで解決」などで具体的に示している。まあ、こういう地道な改善策は、分かりにくくて、人気が出ないことは百も承知だがね。

(今日の日経)
 低燃費車三つどもえ。大型出店、20年ぶり低水準。デジタル革命が家電崩す。原油高が景気に足かせ。アルバックが損益分岐点引き下げ。大機・不良債権40兆円が4分の1に・横風。経済教室・国際標準・野間口有。

※KitaAlpsさん、良いコメントをありがとう。筆者が楽をしているのを、数字を挙げて補ってもらえたね。
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