一面特集の「ニッポンの企業力」は第4部の最終回。なかなか良いまとめだった。企業の再建は「当たり前のことをするにあり」というのは至言だ。逆に言えば、破綻が目の前になってすら、しがらみを除くのは難しいということである。為すべき策は、現場が分かっているにもかからずにね。
国家経営も同じこと。日本に必要なのは成長であり、それには安定的な財政運営がいる。財政破綻は不安かもしれないが、消費増税で一気に解決しようとせず、成長の範囲内で徐々に再建を進めていくしかない。所得が増さなければ、税は払えないというのは、現場では当たり前の真実だが、「消費税教徒」のしがらみは強固だ。
昨日、第一生命研の熊野英生さんがおもしろいレポートを出していた。「貯蓄なし世帯3割の驚愕」というものだ。2011年の金融広報中央委員会の「家計の金融資産に関する世論調査」の結果によれば、貯蓄なし世帯が急増したという。こういう数字の大きな変化にビビットに反応するあたりが、熊野さんのセンスの良さである。
ただし、その原因については、クロス集計の結果がまだなこともあって、いくつかの候補を挙げる形にして、確定的なことは言っていない。2011年は大震災があったから、まずは、これを疑うということになるが、どうも、これではないようなのだ。高齢化も要因として考えられるが、トレンドを超える急増の説明はつきにくい。
筆者の解釈は、リーマン・ショックの影響が今になって表れたというものだ。この「調査」のさかのぼってみると、貯蓄なしの急増は、過去にも例がある。2001年から2003年かけてである。これは1997年のハシモトデフレの結果と思われる。経済ショックから景気低迷が続くと、数年後に「貯蓄なし」が急増するのだと考えられる。
つまり、ショックで雇用が悪化し、貯蓄を取り崩して生活せざるを得ない人が増え、その後に不況が長引くと、とうとう貯蓄が底をついて、「貯蓄なし」が急増するわけだ。当局に言わせれば、「財政は危機的状況」かもしれないが、民のカマドは、既に「破綻続出」なのである。成長の確保、すなわち、所得の向上が最優先なのは言うまでもない。
こういう状況では、消費増税が急速に不人気になってくるのも当然だ。今週の日経ビジネスでは、「消費税が上がったらどうするか」という一般の人への聞き取りをしているが、答えは「一層の節約」だった。当たり前の結果だが、当局を始めとする日本のエリートは、消費税を上げると、「将来に安心して、貯蓄を減らし消費を増やす」と思っている。急増している「貯蓄ゼロ」の人は、どうやって消費を増やすのかね。
日本が断ち切らなければならないのは、「消費税教徒」のしがらみである。かねがね本コラムが主張しているように、必要なのは「平凡」な財政運営である。現場や庶民の辛さが分からないエリートのしがらみを除くのは、企業の再建と同様、とても難しい。目の前に「破綻続出」の現実があってさえもね。
(今日の日経)
イラン攻撃排除せず。日航再生・しがらみ断ち決断、解は最初から現場に、やったことは当たり前のことばかり、冷静に現状を分析し合理的に決断。配当3年ぶり高水準、減益でも増配、前期比3%増。経済教室・軽減策・森信茂樹。
国家経営も同じこと。日本に必要なのは成長であり、それには安定的な財政運営がいる。財政破綻は不安かもしれないが、消費増税で一気に解決しようとせず、成長の範囲内で徐々に再建を進めていくしかない。所得が増さなければ、税は払えないというのは、現場では当たり前の真実だが、「消費税教徒」のしがらみは強固だ。
昨日、第一生命研の熊野英生さんがおもしろいレポートを出していた。「貯蓄なし世帯3割の驚愕」というものだ。2011年の金融広報中央委員会の「家計の金融資産に関する世論調査」の結果によれば、貯蓄なし世帯が急増したという。こういう数字の大きな変化にビビットに反応するあたりが、熊野さんのセンスの良さである。
ただし、その原因については、クロス集計の結果がまだなこともあって、いくつかの候補を挙げる形にして、確定的なことは言っていない。2011年は大震災があったから、まずは、これを疑うということになるが、どうも、これではないようなのだ。高齢化も要因として考えられるが、トレンドを超える急増の説明はつきにくい。
筆者の解釈は、リーマン・ショックの影響が今になって表れたというものだ。この「調査」のさかのぼってみると、貯蓄なしの急増は、過去にも例がある。2001年から2003年かけてである。これは1997年のハシモトデフレの結果と思われる。経済ショックから景気低迷が続くと、数年後に「貯蓄なし」が急増するのだと考えられる。
つまり、ショックで雇用が悪化し、貯蓄を取り崩して生活せざるを得ない人が増え、その後に不況が長引くと、とうとう貯蓄が底をついて、「貯蓄なし」が急増するわけだ。当局に言わせれば、「財政は危機的状況」かもしれないが、民のカマドは、既に「破綻続出」なのである。成長の確保、すなわち、所得の向上が最優先なのは言うまでもない。
こういう状況では、消費増税が急速に不人気になってくるのも当然だ。今週の日経ビジネスでは、「消費税が上がったらどうするか」という一般の人への聞き取りをしているが、答えは「一層の節約」だった。当たり前の結果だが、当局を始めとする日本のエリートは、消費税を上げると、「将来に安心して、貯蓄を減らし消費を増やす」と思っている。急増している「貯蓄ゼロ」の人は、どうやって消費を増やすのかね。
日本が断ち切らなければならないのは、「消費税教徒」のしがらみである。かねがね本コラムが主張しているように、必要なのは「平凡」な財政運営である。現場や庶民の辛さが分からないエリートのしがらみを除くのは、企業の再建と同様、とても難しい。目の前に「破綻続出」の現実があってさえもね。
(今日の日経)
イラン攻撃排除せず。日航再生・しがらみ断ち決断、解は最初から現場に、やったことは当たり前のことばかり、冷静に現状を分析し合理的に決断。配当3年ぶり高水準、減益でも増配、前期比3%増。経済教室・軽減策・森信茂樹。