非国民通信

ノーモア・コイズミ

被災地を追い出し部屋の代わりにする市長

2013-12-24 22:55:08 | 雇用・経済

東北派遣拒み、5部長「辞めます」 茨城・かすみがうら(朝日新聞)

 【長田寿夫】茨城県かすみがうら市で部長11人のうち6人が辞職の意向を示す異例の事態となっている。うち5人は、東日本大震災の復興支援で東北3県への2年間の派遣を指示された。家庭の事情などをあげて拒んだが、市長は「言うことを聞けないなら辞めてもらう」と強硬姿勢を示している。

 宮嶋光昭市長(69)によると、被災した東北3県から職員の派遣要請を受けた市長は、11月に全職員を対象に希望者を募った。しかし、1人しか応募がなく、12月13日に総務、市民、土木、教育、会計の部長5人に派遣に応じるよう求めた。

 これに対し、全員が「受けられません」と拒み、数人はその場で「辞めます」と伝えた。残りも17日に来年3月の退職を申し出た。部長側は「親の介護がある」「自分の健康問題がある」などと事情を訴えたという。

 派遣を打診されたのは全員58歳。2010年に初当選した宮嶋市長は人件費の削減を掲げ、昨年から「58歳以上は管理職から外す」と公言している。ある部長は「お前は必要ないと言われたのと同じ。働き続ける意欲を失った」と話す。

 宮嶋市長は「家庭の事情を考慮していたら、きりがない」と述べた。市としては別の職員4、5人を派遣する意向という。

 

 何かに連れ活躍ぶりが喧伝され、賞賛や感謝の対象になるのは自衛隊ばかりですけれど、武器を持たない普通の公務員もまた、被災地に派遣されては色々と活動しているわけです。同じ公務員でも武装していれば賛美され、非武装なら罵倒されるというのも随分な話ではないでしょうかね。ここで退職を余儀なくされた5人の公務員達も、迷彩服を着込んで猟銃でも斧でも何でも良いですから武器の一つも携えて市長に謁見すれば、もう少し敬意を以て扱われたのではないかという気がします。

 それはさておき、事態を伝える報道にも悪意が感じられると言いますか、これだと部長側に問題があるように見えてしまうところです。普通の組織で部長という幹部クラスが5人も揃って辞意を表明するなんてのはまさに異常事態で、まず組織運営に致命的な欠陥がある、トップの責任問題として扱われるのが道理でしょう。「58歳以上は管理職から外す」などと市長は公言しているとのこと。それよりも先に69歳で既に判断能力を喪失している疑いの濃厚な市長から実権を取り上げる方が先決では?

 解雇規制の緩い日本では特定の年齢層を狙い撃ちにした退職強要が一般的ですが、アメリカでは差別的な理由による解雇は厳しく制限されていると聞きます。年齢を理由とした職責の剥奪や、年齢を理由とした左遷人事などをアメリカで連発すれば、それはもう訴訟合戦に発展して、当然ながら市側に賠償金の支払いが命じられるところでしょうか。アメリカと違って雇用関係の規制が皆無に等しい日本だからこそ、今回のような事例が見られると言えますね。

 しかしまぁ、58歳以上の管理職ばかりをまとめて派遣するというのは、派遣先の要望に添ったものなのでしょうか。一般に人材派遣の世界では、事前面接によって派遣先が人員を選定する過程が入るわけです。では役所間の「応援」としての派遣はどうなのか、少なくとも派遣先の東北3県側にもニーズはあるはずですし、それがブラックボックスということもないでしょう。東北で不足しているのは部長級の管理職なのか、それとも管理職1:部下4ぐらいの比率なのか、それとも純粋に下っ端を欲しがっているのか、その辺の事情は報道されていませんけれど、とりあえず管理職5人という人選が派遣先の需要に応じたものとは、なかなか考えにくいです。

 公務員叩きと並んで中高年叩きもまた世間の共感を得やすいところで、とりわけ選挙の時期にもなると若年層の被害者意識(被害妄想)を焚きつけては中高年層を敵視させようとする連中が次々と沸いてくるわけです。その辺は在日外国人を標的にしているレイシストの手法と変わるところがないように私には思われるのですが、ともあれ公務員であり、なおかつ58歳という年齢は世間の敵意をぶつけるのには最適の相手と言えます。中高年公務員に厳しく当たれば有権者のウケは悪くない、ポピュリスト首長の考えそうなことです。

 その先のキャリアが長いならいざ知らず、58歳にして「2年間の派遣」というのは旨みの無い話です。そもそも正規雇用であってさえ労働者の権利が守られない日本では、退職金の減額という労働条件の一方的な不利益変更によって、長く勤めれば勤めるほど労働者側の取り分が減ってしまうことだってあり得るわけです。退職金を減らされるより先に止めてしまった方が良いと、そう判断して退職時期を早めた公務員も、とりわけ警察関係には多かったりします。今回の部長職5名も、市長という権力者から嫌がらせを受けてまで仕事を続けるより、今のうちに辞めた方が賢明だと判断したのでしょう。

 能力を評価されての抜擢ならいざ知らず、単に「高齢だから」という理由で選ばれたのなら、真っ当な人間はやる気を失うものです。もしやる気を失わない人間がいるとしたら、それは病気です。結局のところ「58歳以上は管理職から外す」と公言する市長が選んだのは全員が58歳、彼らの能力の程はともかくとして、市長が「追い出したがっている」人選であることに疑いの余地はありません。そして自分の役所では「いらない」と思っている人員を、応援を求める東北の自治体に送りつけようとしているわけです。何とも無礼な話ではないでしょうか? 被災地復興の助けになるように選りすぐった人員ではなく、自分のところからは「捨てたい」人員を押しつけているのです。東北の役所は追い出し部屋ですか? 派遣先の自治体は、この市長に公式に抗議して良いと思います。

 

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