空き缶の持ち去り禁止条例に論争 野宿者「生きる糧だ」(朝日新聞)
資源ごみをめぐり、京都市が指定業者以外の回収を禁じる廃棄物処理条例の改正案が28日、市議会で可決された。回収前の空き缶を持ち去って転売する業者が相次いだためだが、缶集めで暮らすホームレスの支援団体が「生きる糧を奪うな」と反発。市はホームレスに仕事を紹介する支援策も決めた。同様の条例は各地で施行、検討されており、行政の対応が注目されている。
回収が禁じられるのは、街角の集積所に出される空き缶、びん、ペットボトルなどの資源ごみ。条例改正のきっかけは、金属価格の高騰を背景に、空き缶を無断で集め、転売しているとみられる業者が目立ったためだ。市民からは「業者らしき車が大量に缶を持ち去った」「市指定の有料ごみ袋で出す意味がない」といった苦情が寄せられていた。
市が指定業者に空き缶を売却する収益は年間1億円前後で、財政難の市にとっても貴重な財源。来年4月に施行される改正条例では、指定業者以外の資源ごみ回収や持ち去りが禁じられる。ただ、違反者に対する罰金や過料などの罰則規定はない。
(中略)
京都市内では、資源ごみ回収日の朝になると、空き缶を徒歩や自転車で集めて回るホームレスが少なくない。鴨川の河川敷で暮らす男性(66)は週3日、空き缶を集めて暮らす。転売すると1キロ70~100円になる。「禁止されたら収入がなくなる。不況が続き、高齢では仕事も見つからない」とこぼす。
今なお「民間でできることは民間に」とか「民業圧迫だ!」とか喧しく、その辺は事業仕分けでもこれ見よがしに叫ばれているわけですが、資源ゴミの回収はどうなんでしょうね。民間人並びに民間の業者が資源ゴミを収集する一方で自治体もまた回収に当たる、そして一つの収益源にもなっているとのこと、官民で利益を争うような場面であればそれこそ財界並びに業界団体側から民営化を推し進めるよう圧力がかけられてもおかしくないところです。そうならないのは資源ゴミを回収している業者側やホームレスが政治的に弱いからでしょうか。
転売目的の回収ともなりますと、高値で売却できるものだけを持ち去って金にならないゴミを散らかしていったりもするのではないかとかも懸念されるのですが、幸いにしてそういった苦情は寄せられていないようです。代表的な苦情として紹介されたのは「業者らしき車が大量に缶を持ち去った」「市指定の有料ごみ袋で出す意味がない」辺りで、まぁ実害はないですよね? 捨てたゴミを業者が持ち去ることで何か不利益を被るのか、苦情を寄せてきた市民には逆に聞いてみたいぐらいです。
まぁ資源ゴミ収集がホームレスの収入減になっているとはいえ、それを容認し続けるよりももうちょっとマシな仕事を世話した方がお互いのためになるところもあるのかも知れません。ただ、市が決めたという「ホームレスに仕事を紹介する支援策」は果たしてアテにできるものなのでしょうか。昨今は若年者はおろか新卒者の就労すらままならないだけに、高齢のホームレスでも採用される仕事がどれだけあるのか懐疑的にならざるを得ないわけです。要支援者にしたところで「ホームレスを続けて空き缶を拾っていた方がマシ」なレベルの仕事を押しつけられるのは御免でしょうし。
責任を持って安定就業させることができるのならいざ知らず、そうでないのに資源ゴミ回収を厳格化してホームレスを締め出してしまうようなら、ちょっと順序が違う気がします。まず先にホームレスの生活再建があって、それが上手く行けば空き缶拾いで日銭を稼ぐ必要がなくなる、そうなってからゴミ回収のルールを厳格化するのが筋というものでしょう。しかるに今時の就労環境で確実に空き缶拾いよりもマシな仕事を自治体が世話できるとも思えないだけに、生活保護などの社会保障手当がどうしても必要になります。しかし、その辺も自治体は渋ることが予測されますから円満な解決は著しく遠そうです。
大阪府内では6市が資源ごみの持ち去りを条例で禁止し、河内長野市と茨木市では違反者に罰金を科している。河内長野市では08年に20万円以下の罰金を科す条例を施行したところ、紙類や缶、びんの回収量が増えたという。同府箕面市も、空き缶などの資源ごみの持ち去りを禁じる条例改正案を12月議会に提出し、来年度中の施行をめざす。
厚生労働省がまとめたホームレスの自立支援に関する基本方針では、自治体に対し「アルミ缶回収など職種の開拓や情報提供を行う」と支援策を示している。
ちなみに先行して資源ゴミの持ち去りを禁止、独自に罰則を設けている自治体もあるそうです。一方で厚労省の見解としては「アルミ缶回収など職種の開拓や情報提供を行う」とのこと。ここで挙がった自治体とは正反対ですね。どういう意図があってのことでしょうか。察するに厚労省サイドは十分な公的支援をしない/できない代わりに既存の小銭稼ぎを黙認する方針なのでしょうか。初めに禁止ありき、罰則ありきの自治体に比べればマシな方かも知れませんが、これはこれで無責任な気もします。
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