神名龍子 『不美人論』(藤野美奈子・西研、径書房)という本がある。直接的にはタイトルの通り「ブス」が抱える問題を中心に据えたものであり、具体的にどのような問題があるのか、それについてどのように考えればよいのかということが、対談形式でわかりやすく、しかし深く掘り下げて語られている。そしてなお興味深いことは、これが「不美人」に限った問題ではなく、かなり深いところで「女性一般」についての論とつながっているということなのだ。今回は本書を中心に、他の本や論文なども参照しつつ、そういう問題を取り上げて考えてみたい。 『不美人論』の初めの方で強く印象に残るのは、かつて藤野さんが「きれいになりたい」と「人として立派に」を相反するものと考え、両者の間で葛藤に引き裂かれる思いをしたということである。地方の高校、それも進学校に通っていた時代には、他者からの評価の基準は「成績」だった。言いかえれば、女の子の評価