年号と時の重み 「昭和33年、栄光の……」から始まる長嶋茂雄の引退スピーチ、まだ耳に焼きついている人は少なくないでしょう。もしこれが「西暦1958年、栄光の……」だったら、間延びして感動が相当そがれるような気がするのは、偏見でしょうか。西暦1958年も昭和33年も物理的時間量としては同一ですが、それぞれが与える印象には大きな隔たりがあります。 西暦には起点があって終点が想定されていないのに対して、年号には起点も終点もあります。平安時代以降、天皇の即位式には「万歳」の文字を記した「万歳旛(ばん)」が紫宸殿の前に立てられるのが習いでしたが、「万歳」が希望に過ぎないことは自明です。つまり、年号はいずれ改められることを前提として制定され、使われてきました。日本の年号の持続期間は平均すると5年程度であり、この限られた時間枠一つ一つが「時代」という認識を定められた年号を使う社会に暮らす人々にもたらし、