師走の金沢21世紀美術館(金沢市)。薄暗い部屋に置かれた培養器のなかで、ヒトのiPS細胞からつくられた心筋細胞がうごめいていた。細胞には、バーチャルアイドル初音ミクの特徴を織り込んだDNA情報が注入されている。 人間とは何なのか――。アーティスト集団BCLによる展示「ゴースト・イン・ザ・セル」は、そんな根源的な問い掛けを発していた。 ドクン、ドクン。心臓の鼓動のような人工音に合わせ、四方の壁に次々と絵が映し出される。グーグルの開発した人工知能(AI)が、金沢の街の写真をもとに描き出した風景画だ。 企画した学芸員の高橋洋介さんは「創造性さえも機械が代替する時代に、人間は一体どのようにしてオリジナリティーをつくっていくのか。論理的ではない飛躍を含んだ想像力、社会の常識から逸脱した思考がますます重要になってくる」と語る。 AIの可能性を探る試みは、「人間らしさ」を見つめ直し、再定義することにもつ