戦後復興期、「日本の辺境」に向かった研究者たちはそこに何を見出(みいだ)そうとしたのか。 敗戦の後、人類学・社会学・地理学・宗教学など幅広いジャンルに跨(またが)る九つの学会によって結成された「九学会連合」は、1950年から90年まで日本列島各地で計11回にわたる調査を行った。本書は、対馬(50~51)、能登(52~53)、奄美(55~57)の初期3調査の実態を最新の研究も踏まえながら振り返る。 まず研究者たちが調査地に見出そうとしたのはそこに残る「日本人」「日本文化」だった。当時の日本は生々しい戦争の傷跡を各地に抱えていた。当然、その「傷の痛み」は「植民地の喪失」にもあった。失われた「領土」との境界である「島」や「半島」を調べ、そこが確かに日本であることを自己証明する。それを調査する側=研究者も、調査される側=地元住民も意識せざるをえなかった。宮本常一が調査開始と同じ50年に開戦した朝鮮