『日経サイエンス』の記者兼編集者、古田彩さんによる「量子力学ってどうも騙されているようで納得できない」人のための、日経サイエンス7月号「特集:量子の地平線」の前説連ツイ。まだ続くようなので、暫定まとめです。
リスクと向きあう [著]中西準子 /リスク化される身体 [著]美馬達哉 原発事故以降「放射線のリスク」が注目される。当然、それを減らしたいと願う。しかし、気をつけなければならないことがある。この世には様々なリスクがあり、あるものを抑え込むと「頭押さえりゃ尻上がる」的に別のリスクが増える性質(リスク・トレードオフ)があって、一筋縄にはいかないことだ。 『リスクと向きあう』の著者は、公害問題、とりわけ水の問題を通じてこの悩ましい現実に相対してきた。有害な化学物質を無くそうとすると別のリスクが顔を出す。殺菌で生じる発がん物質を嫌い水道水の殺菌をやめ80万人がコレラになった国がある。発がんも感染症も好ましくないが、どこかで妥協点を見つけなければならない。著者は「トレードオフ」の概念を日本に紹介し、質的に違うリスクをいかに「比べる」か現場で考え行動し続けた。原発事故を経た我々の社会で、彼女の経験と、
美は眺める者の眼中にあり、情報は受け手の脳内にある。 一筋の煙や電気インパルスに込められた「情報」を「意味」に転じるには、人の介在を必要とする。古代、近代、現代の情報と通信の技術を経巡ることで、人が「意味」をどうやって進化させてきたかが分かる。伝えたい内容・残したい本質である、意味を見える化したものこそが、情報なのだ。 アフリカのトーキング・ドラムに始まり、文字の発明、辞書製作、蒸気計算機や通信技術の開発、遺伝子解読や量子力学と情報理論の結合まで、「情報」を操る数多くのエピソードを縦横無尽に紹介する。膨大な量と深さに溺れそうになるが、「新たな情報技術に接したとき、人はどう変化したか」という軸で読むと、人間の思考の変質の歴史になる。これは、おもしろい。 たとえば電信は、「天気の概念」「時間の概念」を一変させた。電信のおかげで遠隔地の状況が分かるようになったからだ。人々は天気のことを、土地ごと
最近、名前付けとか階層化された名前とかについてシリアスに考えざるを得ない状況になりました。そもそも、ソフトウェアではなんでこんなにも名前が登場するのでしょう? もちろん、人間はバイト列や整数値による識別には耐えられないので、自然言語に基づく意味的連想を必要とする事情があります。さらに、名前を階層化して小分けにしないと、人間は把握できません。 しかしそれにしても、数学的概念の名前とかだと、名前空間や階層構造で悩むことはそう無いですよね。機械可読な記述や証明だとそうもいかないのですが、人間どうしのコミュニケーションだと、いいかげんな名前の使い方をしてもなんとかなります。 おそらく人間は「用語法/記号法/図示法は、ほんっとうーに方言が多い」や「理解をさまたげるモノ/誤解をまねくモノ、それと対処」に書いた次のような言葉の使用法を受け入れるからでしょう。 バラバラ ズボラ その場限り コンピュータだ
2009年に書いたエントリー「理解をさまたげるモノ/誤解をまねくモノ、それと対処」で、次のように書きました。 心がけ 用語とか記号の使い方に関して、是非とも憶えておいて欲しいキーワードは次のようなものでしょう。 バラバラ -- 集団や個人によって、用法が違います。 ズボラ -- 律儀に曖昧性なく書くことは極めてまれで、省略や乱用をするのが普通です。 その場限り -- 同じ用語・記号が文脈によって違った意味で用いられます。その文脈の範囲や寿命(スコープ&エクステント)は非常に小さいことがあります。 学習の過程の最初に出会った用語法/記号法/図示法は刷り込みになるので、他の流儀に対して誤解や混乱をしたり、拒否反応を起こしたりしがちですが、分野によっては(あるいは、集団や個人によっては)驚くほど混沌としてるんで、固定的に考えているとワケワカになります。 また、特定分野の用語法/記号法/図示法を固
** やさしい発達障害論 高岡健 ** 著者は精神科医の高岡健氏。 発達障害とはそもそも何なのか、どういうものと理解するべきなのか。 それをこの言葉が使われ始めた社会や経済の状況との絡みで説明しています。 やさしい発達障害論 (サイコ・クリティーク) 作者: 高岡健出版社/メーカー: 批評社発売日: 2007/12/01メディア: 単行本購入: 3人 クリック: 44回この商品を含むブログ (11件) を見る 読む前にまず、20世紀がどういう時代だったのかおさらいしたいと思います。若い世代(?)としてははまずここが難しいと感じたので。 第二次世界大戦が終わったのが1945年。その後1990年ごろまでは冷戦が続き、資本主義か共産主義かというイデオロギーの対立がありました。この本では、その冷戦期の中での、1980年ごろのアメリカやイギリスの社会政策の変化に目を向けています。 新自由主義(ネオ・
社会運動の戸惑い フェミニズムの「失われた時代」と草の根保守運動 著者:山口 智美 出版社:勁草書房 ジャンル:社会・時事・政治・行政 社会運動の戸惑い [著]山口智美・斉藤正美・荻上チキ 1990年代半ばに登場した「ジェンダーフリー」という言葉は、フェミニストによって政治化され、99年の男女共同参画社会基本法成立を牽引(けんいん)した。しかし、自治体による条例づくりの過程で、保守派の反対運動が顕在化する。彼らは「ジェンダーの解消」を極端な思想と認識し、批判を展開した。本書は、2000年代のフェミニストと草の根保守の対立過程を詳細に描く。 問題は、ジェンダーフリーという言葉の輸入プロセスに端を発する。日本のフェミニストは、米国の教育学者ヒューストンの提唱する概念として流用したが、彼女はジェンダーフリーを不適切なアプローチと主張していた。この誤読とミスリーディングが、保守派の反発を喚起する。
1. Nunokawa (2010) Nunokawa, K. (2010). Multiplication: introduction, 日本数学教育学会誌, No.92, Vol.11, pp.122-123. http://ci.nii.ac.jp/naid/110007994852 Students are required to clearly distinguish between multiplicands and multipliers at this stage because this distinction helps them understand the meaning of multiplication. Teachers pay attention to whether their students understand that multiplicands
2012/2/2912:35 生き延びるための「障害」――「できないこと」を許さない社会 荒井裕樹 ■障害者運動の「新規参入組」? 先日、1970〜80年代の障害者運動を担った古老と、何気ない会話をしていたときのこと。障害者運動の「生き字引き」ともいわれる当の古老が、「精神」や「脳機能」の領域に障害を持つ人々を指して――話の流れでは、とくに「発達障害」(「自閉症」や「アスペルガー症候群」といった障害群)の人々のことが中心であった――「新規参入組」と称したことがあった。 たしかに「発達障害」という言葉が、一部の医療・福祉関係者だけでなく、市井の人々にも知られるようになったのは比較的最近のことである。わたしのそれほど広くはないアンテナにも、「発達障害」を持つ当事者や家族たちの活動が盛んな様子が仄聞される。今なお誤解と偏見の多いこの「障害」に関する啓発や、医療・福祉制度の整備を求める運動(この「
読書・文献案内 イギリスとフランスの「階級」について考えるとき、人々に階級意識のようなものがどのように共有されているかという問題と学術的な階級分析の問題とを分けて考えないといけません。イギリス社会に関して「労働(者)階級」という言葉がよく用いられますが、近年のフランスでは同様の概念は日常的にも学術的にもあまり用いられません。イギリスでは今でもよく様々な場面で用いられるこの概念は、フランスに関しては特定の時代の特定の階級を指しています。今はこの「労働(者)階級」という概念が気になっているのですが、英仏の「階級」概念の差異についてはちゃんと調べてみると興味深い論点がたくさん出てきそうです。以下は自分のための備忘録です。 【フランス】 Le destin de la classe ouvrière / Halbwachs Maurice Ouvriers dans la société fran
【スクールカースト・語源・造語・研究・調査】【日曜民俗学】 上の「『当て勘』という言葉はよく出てくるが、よく考えると正体不明だなあ」という話に関連して。 スクールカーストという言葉が、どうも最近はすっかり市民権を得た・・・は言い過ぎでも、市民権を得つつあるなあ、というのが、自分の感覚的な実感。 とくにお堅い「WEBRONZA」では論考の見出しにまで取られていたっけ。 著者は松谷創一郎氏で、新著では章の見出しにも「スクールカースト」という言葉を使っているそうな。 http://d.hatena.ne.jp/TRiCKFiSH/20120827/p1 2012/08/27/Mon ■[another view]1991年のスクールカースト:映画『桐島、部活やめるってよ』公開&拙著『ギャルと不思議ちゃん論』出版記念 今月11日に吉田大八監督の映画『桐島、部活やめるってよ』が公開され、25日に拙著
ハイデガー拾い読み (新潮文庫) 作者: 木田元出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2012/08/27メディア: 文庫 クリック: 25回この商品を含むブログ (8件) を見る 以下、鮮烈な印象を受けた Realität 誤訳問題と、 その周辺をめぐる木田元氏の説明(に対する私の理解)を、要約してみます。 マルクス「フォイエルバッハ・テーゼ」にある、 《唯物論(Materialismus)》 と 《観念論(Idealismus)》 の対比 は、哲学科の教員たちからは逸脱とされるらしい。 しかし木田氏は、そういう教科書的な理解そのものを問題視している(p.203)。 つまり哲学科の教師たちは、 《唯物論(Materialismus) ⇔ 唯心論(Spiritualismus)》 が 【存在論】 《実在論(Realismus) ⇔ 観念論(Idealismus)》 が 【認識論】 ――という
Software Design 12月号の特集が「なぜエンジニアは文章が下手なのか?」というタイトルだったので、読んでみたら、ちょっと残念な内容だった。 「それは文章で書くべき情報なのか」という章があって、直列化した論理構造であれば文章には書きやすいけど、分岐やループがあるような構造だと書きにくいということが書いてあった。そこで文章化しにくい構造の例として地図があげてあって、暗にそういう構造は文章化をやめて図であらわせと言っているように読める。 けれども、図に書いたところで、書く側は文章化から逃げれて満足かもしれないけど、それを読み取る側は結局どこかから順番に解釈していく必要がある。図に逃げるのは、読み手に責任を押し付けているだけだと思う。 で、「ですから文章を書く前にまず論理構造を考える必要があります」と続いていて、では考えた論理構造が「文章に向かない論理構造」だったらどうするの?逃げる
ネットで東浩紀氏の文庫本に中森明夫氏が書いたあとがきが面白いという書き込みがあったので読んでみた。そこでは東氏の先輩として柄谷行人さんが紹介されていて、要するに東浩紀は柄谷行人の歩んだ道をなぞっているという指摘がされていて確かに面白かったのだが、じゃあ、柄谷行人とはどういうひとなのかと興味を持ち、わりあいに氏の最近の本である世界史の構造という本を序文だけ読んでみた。 その本で柄谷氏が試みているのはどうやらこういうことらしい。マルクスは資本主義下での商品交換を元にした経済的下部構造の上に国家や民族のような上部構造が成立すると主張したが、商品交換以外にも贈与や略取のような交換様式も考慮にいれて経済的下部構造を考えることによって、上部構造である国家のみかけの自立性を仮定しなくても、世界が説明できるはずだという主張だ。 氏の主張が正しいかどうかを判断するのは、ぼくなんかの素人の手に余るのだが、この
私たちは勉強がキライです - Togetter 「勉強」という語をどういう意味で取るか、という話もありますが、この文脈だと、学校で学ぶような内容で、その中でも自然科学分野を習得しようとする事を指している、と考えて良いと思いますので、ここでは基本的にその意味で用います。 まず、本質的に、勉強するってキツイ事だと思う訳です。様々な用語や規則を憶えて、それぞれの関係や全体的な構造を把握するのですから、一筋縄ではいかない。WEBの発展等で、一昔前よりも効率的に出来るようになったとはいえ、時間も金も要ります。報酬が貰えでもしない限り、積極的に勉強するのを志向する事は、なかなか無いでしょう。 で、私自身は、勉強が好きです。どうしてかと言うと、キツさを補ってあまりある面白さに気付いたから。 科学というのは、世界を知るための方法の群と、それによって知る事が出来た知識の集まり、というようなものですから、それ
アマゾン密林地域のヤノマミ民族の女性=1998年3月、ベネズエラに近いブラジル北部ロライマ州(ロイター) 先住民保護活動を続けている英国の非政府組織(NGO)サバイバル・インターナショナルは29日、南米ベネズエラのブラジル国境に近いアマゾン密林地域で、金採掘業者らが先住民のヤノマミ民族を多数殺害していたことが明らかになったと発表した。 同NGOが同民族関係者から得た情報によると、ベネズエラ南部の集落で7月、業者らに80人近くが殺害され、生き延びたのは3人だけだった。ただ、同民族には明確な数の概念がなく、正確な人数などは不明。現場では遺体や人骨、集落の巨大家屋が燃やされていたという。 同NGOは地元政府に実態解明調査を求めている。原始的な狩猟民族の同民族はブラジル、ベネズエラ国境地帯のアマゾン密林奥地に約2万8千人が暮らしている。(共同)
リリース、障害情報などのサービスのお知らせ
最新の人気エントリーの配信
処理を実行中です
j次のブックマーク
k前のブックマーク
lあとで読む
eコメント一覧を開く
oページを開く