非業の生者たち 集団自決 サイパンから満洲へ [著]下嶋哲朗 「非業の」と言えば「死」と続くのがふつうだろう。しかし、この本の題は「非業の生者たち」。戦争中、「集団自決」で死の寸前まで追い込まれながら、かろうじて生き延びた人々に取材して書かれたノンフィクションだ。 著者は、黙して語ろうとしない「生者たち」のもとに通い、その現場で何が起きたかを聞き出し、記録してきた。その30年近くにわたる営為を本書に結実させた。 沖縄・読谷(よみたん)村のチビチリガマ、サイパン島のバンザイ岬、グアム、テニアン、フィリピン、中国東北部(旧満州)の葛根廟(かっこんびょう)。 それらの地で、多くの民間人が、それぞれの家族単位で自決した。敵兵は、女を大勢で陵辱し、男と子どもは股裂きにする。そう聞いていた人々は、「虜囚の辱め」をうけるよりは、と死を選んだ。人々が恐れた「敵の残虐行為」は、日本兵が現に中国などでしてきた