死者と対話する日本人 ──供養という信仰が育む死生観 [15]死者の安らぎを祈り、死者が私たちの安らぎを祈ってくれる 薄井秀夫 (株)寺院デザイン代表取締役 日本の仏教徒は何を信じているのか? 日本には約8400万人の仏教徒がいる(『宗教年鑑』令和3年版/文化庁編)。しかしこの仏教徒のほとんどは、仏教の教えについて何も知らない。 仏教徒とはいえ、普段行うのは、葬儀や法事、お墓参りや仏壇へのお参りくらいである。その上、教えを学ぼうと考える人もほとんどいない。 こうした現実を見て、日本の仏教徒はいい加減だ、あるいは、こうした人たちは仏教徒ですらないと断ずる識者は多い。 もちろん信仰に優劣は無いはずである。教えを知らずとも、神仏や死者に手を合わせることは尊いはずである。 しかしこれまで語られてきた仏教論においては、仏教は教えが基本とされ、死者供養や祈祷などは仏教として扱われることすら稀であった。