法律というものは、条文だけで判断できるものではない。条文がまったく変わらなくとも、その解釈や運用は、世相や社会状況によって激しく変化する。たとえば、代金の支払いができなかったり、借金が返せなくなったりした際には、いわゆる「差し押さえ」になることがある。しかし、「民事執行法」第131条には、「生活に欠くことができない」ものは差し押さえてはならないと定めている。この解釈は時代とともに変化し、以前なら「生きるのには特に必要が無い」と言われたものでも、現在ではエアコンやテレビ、電話なども該当する。 同様に、「わいせつ」についての解釈も、ここ40年ほどで大きく変わった。「刑法」の第174条以降には、わいせつに関するさまざまな罪状や罰則が並んでいる。しかし、実際にどのようなものが「わいせつ」に該当するのかは、何も決められていない。単に「わいせつは罰する」という趣旨とその罪と罰が並んでいるだけである。