地震、津波、降る放射能、風評と被害の四苦に街と耐え住む 歯を抜かれるように人が今日も去るこの地を出ぬと老人は残る (澤正宏「終わりなきオブセッション―原発事故後七年を詠む」) 2011年の東日本大震災と東京電力福島第1原発事故以降、多くの被災者が体験を俳句や短歌などの文学作品として残した。これらの作品から、この13年間で何が失われたのかを考えてほしいと「終わっていない、逃れられない―<当事者たち>の震災俳句と短歌を読む」を9月に出版した。 震災発生当時は大学1年。広島市の実家に帰省中で、テレビに映る映像をただ見守るしかなかった。自身は両祖父とも被爆者という被爆3世だ。しかし、2人はほとんど体験を語らず、両親を原爆で失った母方の祖父は2年前に他界した。震災から5年後、大学院生の時に震災についての文学を研究しようと思ったのは、悲惨な体験を後世に伝えることの重要性を実感していたからかもしれない。