感染症診療の原則

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耐性菌報道から考える その3

2010-09-05 | 毎日いんふぇくしょん(編集部)
院内感染対策にかかわる人たちはどこに、どれくらいいるのか?

感染症のアウトブレイクがおきそうなとき、おきたときに、積極的な疫学調査が行われ、問題の全体像(規模、原因)を調べつつ、同時にこれ以上拡大しないような介入が行われます。

院内にそのスペシャリストがいれば院内で。 規模が大きくて人手不足の場合は外部専門家に支援を求めたりします。
しかし、実際そのような訓練を受けた人材は日本の医療機関にはほとんどいません(訓練機関もない)。

1000名をこえた認定の感染管理看護師は6カ月以上集中的に訓練され、試験に通ったひとたちですが、数として不足していますし、専従で働いている人ばかりではありません。
今後は看護師をそのようなコースに派遣し、認定をとったあとは専従で院長直下の安全管理部門におく施設も増えるのではないかと思います。
(他の職種でも今後、疫学やアウトブレイク対応についてまとまった時間体系的に学び、OJTで訓練を受けることのできるプログラムができることを期待しています)

国立感染症研究所FETPが育成した実地疫学専門家は現在11期・12期生が訓練中ですが、毎年5名前後しかいません。無給であること、2年間在籍することのハードルは高く、量として不足があります。

自治体はどうでしょうか。
保健所や自治体の感染症対策部門に公衆衛生医を確保するのも厳しい状況だそうです。問題を把握するEpidemiologistが行政にもおかれていません。

国はどうでしょうか。国立感染症研究所内には研究者はいても、国内の実態を日々モニタリングし対策を講じたり、教育広報活動をする独立した部署はないですね。(韓国CDCには院内感染対策だけで40名の専従スタッフがいるそうですが)

米国CDCは安全なヘルスケア部門のスタッフが順番にブログで記事を書いています。名前と写真入りです。
http://blogs.cdc.gov/safehealthcare/
国が何をしているのか。納税者に伝わるというのはよいシステムですね。



研修医の皆さんも、キャリアのどこかの時点で感染対策にかかわる時期があるかもしれませんね。院内の講習会に参加した時に、その準備をしている面々についてもぜひ関心をもってください。

Hospital Epidemiology関連の訓練については、The Society for Healthcare Epidemiology of America The European Society of Clinical Microbiology and Infectious Diseases 等が研修プログラムを定期的に開催しています。
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2 コメント

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研修医も早期からの参加を (千葉県 N)
2010-09-05 22:24:51
当院では患者と一番近い立場の者が最も敏感でなければならないと考え研修医にも感染対策委員会や耐性菌ラウンドに参加してもらっています。抗菌薬の使い方にしてもHIV診療にしても「鉄は熱いうちに打つ」必要があると痛感しています。
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患者さんのすぐそばにいる人 (編集部)
2010-09-07 22:00:10
ナースの次に患者さんのそばにいるのは研修医の皆さんですね。たしかに、その人を熱いうちにもっとアツアツにするネタとして感染管理の素養をみにつけていただくことは重要です。

個人的にはこれって食事のマナーと一緒で、くせになったらなかなかなおせないとおもっています。

将来、経営者の立場になる医師には「コストを含めて勉強して行くと役に立つよ!」と伝えています。診療報酬改定などの新ネタも会話のなかにあがるようになっています。
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