先日、ある国立大の若手の先生が「高齢者福祉は財政赤字で賄われ、その借金は若い世代が返さなければならない、こうした不公平を正すためにも消費税を」という旨のコメントしていた。まあ、そういう見方もできるとは思うが、経済学というのは総合性が大事でね、「それって、誰に返すの?」と聞きたくなってしまう。
日本の家計貯蓄の大半は、高齢者が持っている。したがって、政府にお金を貸しているのは、銀行などが仲介しているとは言っても、突き詰めれば、高齢者である。つまり、今の日本は、大雑把に言うと、お金持ちの高齢者からお金を借り、年金や医療・介護サービスという形で、お金のない高齢者に渡している構図だ。
もし、お金持ちの高齢者がお金を使うことなく亡くなって、政府に貸していた分の資産を相続税で回収できたとすると、財政赤字の問題は、それで終わりである。若い世代が返すという問題にはならない。これとは反対に、お金持ちの高齢者が、寿命の尽きるのを前にして、「合理的」に行動し、急にお金を使い出したとしたら、消費が増大して景気が良くなり、若い世代は仕事にありつけるようになるだろう。
もちろん、あまりに消費が増えてインフレになるようなら、消費を冷やすには絶大な効果を有する消費税を上げれば良い。結局、今の日本というのは、資産が偏在し、消費が不足しているのだから、相続税などの資産課税を強化しておき、消費税は将来の物価上昇に備えておくだけで良いということになる。
現実には、これと逆のことが行われている。贈与税を緩めてみたり、デフレ脱出も見通せない中で、一気に消費税を上げようしているわけだ。そういう価値観を否定するつもりはないが、少なくとも、今の経済状況には合っていないし、社会厚生も小さくしてしまうだろう。消費税を引き上げて景気を失速させれば、困るのは、就職に難渋する若い世代だろうと、筆者は思う。
当たり前の話だが、経済運営は、その時々の状況に合わせなければならないし、負担の問題は、構造を良く理解し、将来の動きも見通しつつ、制度を整えなければならない。財政赤字は是か非か、世代間は「公平」かといった価値論だけに訴えて、判断を済ませられる問題ではないのである。
(今日の日経)
金融ニッポン・市場に育つ成長の芽。電子部品の受注回復。環境税見直しを・経団連。韓国に漁獲抑制を要請、輸入未成魚97%。みずほ最終益7割増。米議会の細る中道派。セブンが弁当供給能力3割増。米IT国境越え節税。経済教室・技術変化は格差を縮める・小林慶一郎。
※復興のために緊縮ができなくなって経済は底を打った。そうなれば世界から金融屋が集まってくる。日本国債の相対的な安全度が上がったようだが、これも1-3月期の高成長のお陰。成長こそ財政破綻を遠ざける。あとは消費から生産と投資への波及を期待したい。
日本の家計貯蓄の大半は、高齢者が持っている。したがって、政府にお金を貸しているのは、銀行などが仲介しているとは言っても、突き詰めれば、高齢者である。つまり、今の日本は、大雑把に言うと、お金持ちの高齢者からお金を借り、年金や医療・介護サービスという形で、お金のない高齢者に渡している構図だ。
もし、お金持ちの高齢者がお金を使うことなく亡くなって、政府に貸していた分の資産を相続税で回収できたとすると、財政赤字の問題は、それで終わりである。若い世代が返すという問題にはならない。これとは反対に、お金持ちの高齢者が、寿命の尽きるのを前にして、「合理的」に行動し、急にお金を使い出したとしたら、消費が増大して景気が良くなり、若い世代は仕事にありつけるようになるだろう。
もちろん、あまりに消費が増えてインフレになるようなら、消費を冷やすには絶大な効果を有する消費税を上げれば良い。結局、今の日本というのは、資産が偏在し、消費が不足しているのだから、相続税などの資産課税を強化しておき、消費税は将来の物価上昇に備えておくだけで良いということになる。
現実には、これと逆のことが行われている。贈与税を緩めてみたり、デフレ脱出も見通せない中で、一気に消費税を上げようしているわけだ。そういう価値観を否定するつもりはないが、少なくとも、今の経済状況には合っていないし、社会厚生も小さくしてしまうだろう。消費税を引き上げて景気を失速させれば、困るのは、就職に難渋する若い世代だろうと、筆者は思う。
当たり前の話だが、経済運営は、その時々の状況に合わせなければならないし、負担の問題は、構造を良く理解し、将来の動きも見通しつつ、制度を整えなければならない。財政赤字は是か非か、世代間は「公平」かといった価値論だけに訴えて、判断を済ませられる問題ではないのである。
(今日の日経)
金融ニッポン・市場に育つ成長の芽。電子部品の受注回復。環境税見直しを・経団連。韓国に漁獲抑制を要請、輸入未成魚97%。みずほ最終益7割増。米議会の細る中道派。セブンが弁当供給能力3割増。米IT国境越え節税。経済教室・技術変化は格差を縮める・小林慶一郎。
※復興のために緊縮ができなくなって経済は底を打った。そうなれば世界から金融屋が集まってくる。日本国債の相対的な安全度が上がったようだが、これも1-3月期の高成長のお陰。成長こそ財政破綻を遠ざける。あとは消費から生産と投資への波及を期待したい。