春季の経済学会のセッションで「エビデンスに基づく政策」が議論されたようだが、8%消費増税によって、消費が屈曲し、ゼロ成長状態に陥ったというエビデンスは、どう活かされるのだろうか。どれほど国民経済にとって重要であろうと、権威に都合が悪いことは、研究の課題には上がらないのかもしれない。学者の世界にしても、人事が最大の関心事なのだから、仕方のないことではある。
………
月曜公表の4-6月期GDPでは、民間消費は307.6兆円と、消費増税から2年経つのに、1.6兆円しか増えていない。リーマンショックや東日本大震災の際は、底から1年内に、従前の水準を回復できたのに、未だに駆け込み前の水準から7兆円ものギャップがある。二つの災厄とは異なり、V字回復を示さず、L字となったのたから、単発のショックでなく、永続的に影響を及ぼすような「何か」を原因とすべきだろう。
4-6月期GDPは、実質成長率が年率0.2%になり、辛うじてマイナス成長を免れた。大きな要因は、外需の寄与度が-0.3と、内需の0.3を相殺したことだ。その中で、民間消費は、前期比0.16%、寄与度0.1だった。うるう年要因で低めに出ていることを勘案すれば、まずまずの結果だろう。目安としては、長期トレンドの0.26%を確保したいからである。これを、住宅と公共事業が共に寄与度0.1で支えている。
1997年の消費増税の場合も、2年経って、ようやく消費が増加傾向になったが、その背景には、公共事業の復元、住宅の底入れ、輸出増への転換があった。増税後の重みの下、消費を浮揚させるには、そうした牽引役がないと、なかなか難しい。金曜に出た6月の全産業活動指数では、住宅と公共は増加傾向を保つことができた。また、木曜の7月の日銀・実質輸出は、前月比では大きく低下したものの、前々月よりは高く、弱いながらも増加傾向である。
ここで消費の源となる雇用者の懐具合を知るために、毎月勤労統計を見ると、実質賃金×常用雇用は、今年に入って、加速していることが分かる。このことは、内閣府の月次・総雇用者所得では、より鮮明である。大事なのは、この動きを、住宅、公共、輸出の3つの牽引役を使いつつ、加速していくことだ。今の経済構造は、賃金を増やしても、消費税や社会保険料で中抜きされるため、消費増に結び付きにくい。それだけに、適切な需要管理を心掛け、脱出速度を確保しなればならない。
(図)
………
今回の4-6月期GDPの一般的な評価は、「低迷続く」というものだろう。しかし、足元では成長を取り戻そうとする動きが見られる。これを徐々に育てていく態度が必要だ。今の日本では、「どうせ成長しないから、景気度外視で財政再建をするしかない」とか、「金融緩和や景気対策を吹かせば、一気に回復できる」とか、荒っぽい議論が多い。それによって、成長には最も重要で、大して政策コストのかからない「需要の安定」が害されてきている。
10%消費増税の二度にわたる先送りは、消費への悪影響の実績を踏まえれば、極めて現実的な判断だ。8%消費増税による消費の屈曲を認めないのでは、経済学者の現実感が疑われるだけだろう。国民が必要とする研究の課題は、どうやって成長を取り戻すかであり、いかに成長と財政再建を両立させるかである。現実を受け入れられず、処方箋も考えないのでは、日本の学者は居ないのと同じで、米国の学者が頼りにされてしまうのは、恥ずかしながら当然ではないか。
(今週の日経)
円高で内部留保最高。今年度成長率予測・実質0.6%。スーパー店頭物価下落。輸出7月14%減。経済学会、安倍政権との溝深く。「月末金曜」に消費喚起・政府と経済界。家計調査・スマホ入力。意図せぬ円高99円台。GDP・夏以降も低成長予想。GDP統計、透ける課題。
………
月曜公表の4-6月期GDPでは、民間消費は307.6兆円と、消費増税から2年経つのに、1.6兆円しか増えていない。リーマンショックや東日本大震災の際は、底から1年内に、従前の水準を回復できたのに、未だに駆け込み前の水準から7兆円ものギャップがある。二つの災厄とは異なり、V字回復を示さず、L字となったのたから、単発のショックでなく、永続的に影響を及ぼすような「何か」を原因とすべきだろう。
4-6月期GDPは、実質成長率が年率0.2%になり、辛うじてマイナス成長を免れた。大きな要因は、外需の寄与度が-0.3と、内需の0.3を相殺したことだ。その中で、民間消費は、前期比0.16%、寄与度0.1だった。うるう年要因で低めに出ていることを勘案すれば、まずまずの結果だろう。目安としては、長期トレンドの0.26%を確保したいからである。これを、住宅と公共事業が共に寄与度0.1で支えている。
1997年の消費増税の場合も、2年経って、ようやく消費が増加傾向になったが、その背景には、公共事業の復元、住宅の底入れ、輸出増への転換があった。増税後の重みの下、消費を浮揚させるには、そうした牽引役がないと、なかなか難しい。金曜に出た6月の全産業活動指数では、住宅と公共は増加傾向を保つことができた。また、木曜の7月の日銀・実質輸出は、前月比では大きく低下したものの、前々月よりは高く、弱いながらも増加傾向である。
ここで消費の源となる雇用者の懐具合を知るために、毎月勤労統計を見ると、実質賃金×常用雇用は、今年に入って、加速していることが分かる。このことは、内閣府の月次・総雇用者所得では、より鮮明である。大事なのは、この動きを、住宅、公共、輸出の3つの牽引役を使いつつ、加速していくことだ。今の経済構造は、賃金を増やしても、消費税や社会保険料で中抜きされるため、消費増に結び付きにくい。それだけに、適切な需要管理を心掛け、脱出速度を確保しなればならない。
(図)
………
今回の4-6月期GDPの一般的な評価は、「低迷続く」というものだろう。しかし、足元では成長を取り戻そうとする動きが見られる。これを徐々に育てていく態度が必要だ。今の日本では、「どうせ成長しないから、景気度外視で財政再建をするしかない」とか、「金融緩和や景気対策を吹かせば、一気に回復できる」とか、荒っぽい議論が多い。それによって、成長には最も重要で、大して政策コストのかからない「需要の安定」が害されてきている。
10%消費増税の二度にわたる先送りは、消費への悪影響の実績を踏まえれば、極めて現実的な判断だ。8%消費増税による消費の屈曲を認めないのでは、経済学者の現実感が疑われるだけだろう。国民が必要とする研究の課題は、どうやって成長を取り戻すかであり、いかに成長と財政再建を両立させるかである。現実を受け入れられず、処方箋も考えないのでは、日本の学者は居ないのと同じで、米国の学者が頼りにされてしまうのは、恥ずかしながら当然ではないか。
(今週の日経)
円高で内部留保最高。今年度成長率予測・実質0.6%。スーパー店頭物価下落。輸出7月14%減。経済学会、安倍政権との溝深く。「月末金曜」に消費喚起・政府と経済界。家計調査・スマホ入力。意図せぬ円高99円台。GDP・夏以降も低成長予想。GDP統計、透ける課題。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます