バイデン政権誕生で取り残される日本 「死刑賛成8割」を憲法から考える
米国で死刑廃止を公約に掲げたバイデン政権が発足した。死刑の廃止・停止は国際的な潮流で、米国が死刑廃止国になれば、先進国で死刑制度が残るのは日本だけとなる。しかし、国内ではなかなか議論が広がらない。そもそも死刑制度とは何なのか。人権の尊重をうたい、残虐な刑罰を禁止する憲法の観点から問題はないのか。憲法学者の木村草太・東京都立大教授と考えた。【上東麻子/統合デジタル取材センター】
死刑廃止の潮流と日本の落差
米トランプ政権は1月、1人の女性に死刑を執行した。この死刑囚は幼少期に激しい虐待を受けていたこともあり、日本でも話題を集めた。連邦政府による女性の死刑執行は67年ぶりで、政権交代目前だったことから「駆け込み」と国際的な批判を浴びた。
米国には連邦と半数以上の州に死刑制度がある。連邦レベルでは2003年以降執行されていなかったが、トランプ政権は昨年7月以降、13人に死刑を執行した。
国際人権団体アムネスティ・インターナショナルによると、19年時点で死刑を廃止、または制度はあっても過去10年間に執行がない事実上の廃止国は142カ国。死刑制度があるのは日本を含む56カ国。19年に死刑を執行したのは20カ国だ。
日本は11年と20年を除き、20年までの15年間毎年死刑を執行しており、18年はオウム真理教事件の死刑囚を含む計15人に執行された。19年までの内閣府世論調査では「死刑もやむを得ない」という回答が4回連続で8割を超え、廃止すべきだとの回答は9%にとどまる。ただし、「死刑もやむを得ない」と回答した人のうち「将来も死刑を廃止しない」は54・4%、「状況が変われば、将来的には廃止してもよい」は39・9%だった。法務省は「現行の死刑制度は肯定的に受け止められている」と説明している。
…
この記事は有料記事です。
残り2228文字(全文2977文字)