名前は大事だ。日本語では「名は体を表す」という諺(ことわざ)があるし、『論語』にも「名正しからざれば則(すなわ)ち言順(げんしたが)わず」という言葉がある。
作家にとって、ペンネームというのは表向きの顔だ。出生時に与えられた本名よりも、自分でつけたペンネームの方が、作家の作風や真価をよく表出できると思う。
群像新人文学賞に応募した時は、初めて日本語で書いた小説だからどうせ受賞できないだろうと思って、適当に日本人風のペンネームをつけた。それが奇跡的に優秀作に選ばれ、作家デビューとなった。そこで、担当編集者から「台湾の方だと分かるようなペンネームにしては」と相談された。そもそも日本人風のペンネームにしたのは、台湾人という身分を強調したくなかったからなのだが、しかし日台を横断し、往復するような作風を見る…
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