現在神岡地下実験室において、液体キセノンシンチレーターを用いた暗黒物質探 索実験「XMASS」が遂行されている。本研究の目的は、このXMASS検出器に電荷増 幅機能を付加することにより、液体キセノン中の飛跡粒子の位置検出および粒子 識別を可能にし、暗黒物質の探索感度の飛躍的な向上を図ることである。液相で も高電場で電子増幅に伴うシンチレーション光が発生することに着目し、XMASS でこれを実現させる。本研究により、外部からの放射性バックグラウンドを自己 遮蔽するというXMASSの強みを生かし、スピンに依存しない相互作用の核子との 断面積10-46cm2へ迫る感度での暗黒物質探索を目指す。 暗黒物質の実験室での直接的な検出は21世紀科学の大きな課題である。超対称性理論等の素粒子の「理解」や我々宇宙がなぜ現在の姿であるのかを理解するために不可欠だからである。LHCで超対称性粒子が依然見つかっていないことを考えると、このような感度での暗黒物質直接探索実験は素粒子および宇宙物理学研究の中で今後ますます重要となる。