連載
男の気持ち
読者の皆様からの投稿欄「男の気持ち」。「女の気持ち」「わたしの気持ち」とともに出来事や悩みなど「時代の心」を映しています。
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新たな生活 北九州市八幡西区・原田直人(パート・67歳)
2024/12/29 05:02 557文字大阪にいる妻の弟から、年明けから関東勤務になるという連絡があった。義弟はその1週間前、入院する母親の面会で帰省し、我が家に1泊していったばかりだった。そのとき義弟が転勤を知っていたのかどうかは分からないが、突然のことで妻も私も驚いた。年末の忙しい時期の転勤はさぞかし大変だろう。かつて私も何度か転勤
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ケーキ店で 北九州市小倉南区・山口敬司(72歳)
2024/12/24 05:14 553文字4人の孫へのクリスマスケーキ予約で先日、妻と近くの店に入った。きらびやかな飾り、いかにも小さな子どもが喜びそうな商品が並ぶ。私は入念にその一つ一つを見て回る。見ていたのは金額であった。あまりにも高い。孫の喜ぶ顔が浮かびながらも、財布の中身の予算と折り合わず結局この日は断念した。 それほどの物価高に
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ヨガと筋トレ 福岡県柳川市・森田修示(73歳)
2024/12/23 05:08 559文字体をほぐしながら始まりを待っていると時折「もう長いのでしょう?」「何年くらいされているんですか?」と女性の方から声をかけられる。 数年前から週1回、ヨガのレッスンを受けている。受講者の皆さんは私よりはるかに若い方々だ。当然体も柔らかく、私ができないポーズでも難なくこなしている。「そういえば昔、ビー
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心待ち 長崎県諫早市・江川謙吾(パート・71歳)
2024/12/22 02:01 571文字人は人生で何度、本気のうれし涙を流すだろう。7年前の夏、息子から電話と写真付きメールが届いた。わが家の初孫誕生だ。真っ赤なお猿さんそっくり。眉間(みけん)にしわを寄せ、世間がまぶしそうなつぶらな瞳の男の子。暑い夏、大きなおなかでの生活とお産は難行だったろう。息子、嫁さん、ベビーに「ありがとう」と感
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12月17日 浜松市浜名区・久野茂樹(無職・75歳)
2024/12/17 02:00 547文字街中にクリスマスソングが流れ、慌ただしさを感じるこの時期になると「ああ今年も12月17日がやって来た」と遠い昔を思い出す。私たち夫婦の一人娘が誕生した日だ。 妊娠中毒症になった妻はその日、出産したが「子どもは隣の市の未熟児センターに移送する」と言われ、私は必死で救急車の後を追った。長い間待たされた
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イエッサー 神戸市西区・難波幸夫(病院勤務・64歳)
2024/12/15 05:13 537文字日本年金機構から緑色の封筒が届いたので、妻と年金事務所に行ってきた。娘たちは巣立ち、夫婦二人暮らし。正月も盆も祝日もない透析機関で週5勤務。「老後の働き方」を考えねばと思った。 窓口で、係の人が「もらってはりますね。月額算定が高い。65歳以降も現状のまま続ければ、支給停止額は〇〇円です」。停止=捨
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向こう三軒両隣 福岡県直方市・宮木慎次郎(72歳)
2024/12/13 05:16 567文字退院して帰宅した夕方、案の定、ぬか漬けがだめになっていた。さすがに1カ月も放っておいたのでは復活もおぼつかない。毎年この時期になると、ブリのぬか漬けと有田焼のおちょこに注いだ50度の熱かんが楽しみだったので、すっかり気落ちした。 そこへ「ピンポン」と呼び鈴が。なんと救世主が現れた。お隣さんがお好み
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来た道 行く道 福岡県古賀市・宮家道弥(66歳)
2024/12/12 05:41 547文字仲人をしてくれた叔父への久しぶりのあいさつで母の実家を訪問した時の事。盆栽の手入れ中だった叔父は手を休めて笑顔で迎えてくれた。小春日和の縁側に並んで座り、お茶を飲みながら近況報告を交えての会話が弾んだ。 その際、叔父が「子供叱るな 来た道じゃ 年寄り笑うな 行く道じゃ」という言葉を知っているかと尋
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老後を生きる 福岡県行橋市・保田高志(派遣社員・72歳)
2024/12/3 05:10 556文字初めて行く所は、事前にルート検索やストリートビューを見て周辺を把握するなど、できるだけ調べて行動する方だ。何となく先が見えないと不安になる。心配性なのだ。 そんな私が来年2月で仕事を辞めることにした。3月以降は毎日の昼間のスケジュールが空白になる。やっと、老後を生きるとは昼間をどう過ごすかというこ
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写真の味わい 横浜市戸塚区・福島淳(アルバイト・68歳)
2024/12/2 02:01 547文字私の趣味の一つに写真がある。おもな被写体は、自宅で育てているバラの花と旅先での風景だ。特に気に入った写真は季節の移ろいに合わせA4サイズのパネルに入れ、リビングに飾っている。 今から3年近く前、長男のところに初孫が誕生し、折に触れスマホで写真を送ってくれるようになった。我が子が幼いころはフィルムを
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メダカ 兵庫県丹波市・矢持靖弘(無職・77歳)
2024/11/26 05:13 558文字今から16年前、退職後の私はある所へ再就職し、彼と出会った。年齢差をいとわず彼は嘱託職員の私に親切で、なぜか馬が合った。ある時、メダカの話をすると、彼は居場所をそっと教えてくれ、専用の網までくれた。2年間、楽しく仕事をした後、彼は栄転していった。だが、程なくして急な病による彼の訃報が届いた。早すぎ
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妻の転倒 大分県中津市・田口政博(83歳)
2024/11/23 05:12 569文字我が家は79歳の妻と83歳の私の2人暮らしである。日ごろから転ばないようお互いに心がけていたのに、妻が先日転んで動けなくなった。早速救急車で市内の病院に搬送された。診断の結果、大腿(だいたい)骨一部骨折で入院加療の身となった。面会はコロナ禍の時より幾分緩和されて、予約制で1回に2人まで10分間だけ
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路地裏の風景 長崎県長与町・相川光正(パート・71歳)
2024/11/20 05:12 573文字長崎県南島原市の故郷を離れて半世紀を超える長い年月が流れた。久しぶりに帰ると思いのほか町の姿は大きく様変わりし、懐かしい情景が少なくなってしまった。せめてもの救いは、路地裏の風景が往時の面影を色濃く残していることだ。この波止場近くの密集した漁業集落の路地裏こそが、我々の友情を育み、絆を深めた遊び場
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清水の舞台 名古屋市名東区・森上健一郎(小学生・11歳)
2024/11/17 02:00 542文字修学旅行で僕は京都の清水寺に行った。すごく高いところにあって、下をのぞくとふらっとしてしまいそうになるほどの高さだ。 昔、ここから飛び降りた人がたくさんいたらしい。1694(元禄7)年から1864(元治元)年までのおよそ170年に、なんと234人もの人が飛び降りたというから驚きだ。計算すると、1年
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30年後の弔辞 福岡市早良区・藤江駿一(農業・77歳)
2024/11/12 05:03 556文字中学時代の親友のお母さんが去年11月に亡くなられ、今年が初盆だったことを、妻の実家の納骨堂初盆会で偶然知った。幸いにも、ご遺族と一緒に焼香をすることができ、聞けば何と103歳の大往生だった。その晩、私は早速弔辞を作成し、後日改めて弔問した。弔辞の内容は、哀悼の意と家族葬だったために葬儀に参列できな
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妻失いさまよう 兵庫県豊岡市・神尾与志広(無職・76歳)
2024/11/9 05:23 550文字妻を失って4カ月。喪失感とむなしさを抱えて漂流する日々だ。6年前に大病を患った妻は闘病に耐え、一緒に通院生活を送っていたが、完治は難しく、不意を突くように常世へと旅立った。 自然大好きの妻と50年連れ添った。カズラを使ったリースや古布の小物作りにいそしむ姿を一日でも長くと祈り、軽トラックに妻を乗せ
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偶然の再会 茨城県茨城町・浦本保幸(無職・83歳)
2024/11/9 02:02 514文字妻と町内の農産物直売所へ買い物に行ったときのこと。女性から「こんにちは。お久しぶりです」と声をかけられた。 マスクを着用していて誰かは分からなかったが、先方から名乗ってくれてすぐに分かった。3年ほど前まで、近くのスーパーに勤務していた方である。 レジでの精算時に「暑いですね」「寒いですね」などと季
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人との関わり 福岡県水巻町・松尾高林(91歳)
2024/11/7 05:21 575文字◇松尾高林(たかもり) 今夏、卒寿を超えた私は、想像外の幸運に恵まれて健康寿命を延ばしている。30代後半の頃、新聞のコラムに「昭和1桁生まれの少年少女は成長期に食糧難がため栄養不良で、血管が弱く長生きしない」とあった。実際、中学校の同級生の大半は80歳前に亡くなっている。 そうした中で自分がここま
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お元気ですか 横浜市金沢区・大窪正宏(無職・79歳)
2024/11/4 02:01 548文字「お母さん 元気にしていますか」。妻のあなたが旅立って、もうすぐ18年になります。今もあなたの笑顔に支えられ、元気に1人暮らしを続けております。 定年退職1年前に家を建て替えたとき、私が家にいる時間が多くなるのを見越して、あなたは「お父さんの部屋が必要ね」と、日当たりがよく道路を隔てて公園が見渡せ
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空を見上げて 鹿児島県志布志市・若宮庸成(85歳)
2024/10/31 05:11 570文字午前3時半に起きる生活の始まりは、空模様の確認である。空を見上げると、星が動いたように見えた。僕にはそう見えた。先日死んだ遼太郎と重なる。思い出が消えない今、星に話しかけてしまう。 遼太郎はたくさんの思い出を残してくれた犬の名前だ。志布志湾の堤防下にかつて捨てられていた雑種の黒っぽい子犬で、散歩す
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思い出ノートの作り方
昔を思い出してノートに書きとめることは脳の活性化にもつながります。公益財団法人「認知症予防財団」の監修の連載です。
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今週の気持ち
投稿コラム「女の気持ち」「男の気持ち」から1本を選び、担当記者が紹介します。