連載
憂楽帳
50年以上続く毎日新聞夕刊社会面掲載のコラム。編集局の副部長クラスが交代で執筆。記者個人の身近なテーマを取り上げます。
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子育て経験談
2024/12/28 13:03 459文字ある大手メーカーのトップを囲んだ雑談でのことだ。話題が育児に及ぶと「私も塾へ送迎したよ」と語った。70歳近くの男性だ。部長だった頃、夕方に仕事を「中抜け」していたという。育児と仕事の両立が難しい時代のはずだが、「やろうと思えばできた」と言ってのけた。 別のインフラ大手の男性取締役は子どもの弁当を作
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「親と同居」のイメージ
2024/12/27 13:25 470文字親と同居して優雅な生活を送る様子から1990年代に「パラサイトシングル」と呼ばれた未婚の若者が、中年世代になっても親への依存を続けている――。十数年前、そんな話を聞いて当事者らを訪ね歩いたことがある。 当時40代で無職だった男性は、95年に大学を卒業し正社員として就職したが5年で退職。それからはリ
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新天地
2024/12/26 13:13 453文字美容エステ業界で働く知り合いの女性(29)が、ゆかりのない東京で2年前から暮らしている。年の瀬に近況の連絡をメールでもらい「仕事にも慣れ、楽しく働かせていただいています」と書かれていた。 女性は「ロキタンスキー症候群」で生まれつき子宮と膣(ちつ)がなく、出産することができない。地元では、子育てする
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デロゲーション
2024/12/25 13:11 431文字月に1回、大阪市内で開かれる労働問題に関する勉強会に参加している。そこで、デロゲーション(derogation)という言葉を初めて知った。英語で「法律や規則からの逸脱、適用除外」などを意味する。経団連が今年1月に発表した提言の中で使われた言葉だと聞かされた。 経団連は提言で「労働時間規制のデロゲー
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戦後79年の証言
2024/12/24 13:12 435文字小中学校の同級生の母親、日吉寿美恵さん(86)が長崎市での被爆体験を話してくれた。何度か取材のお願いを重ね、今秋実現した。 7歳だった日吉さんはその日、爆心地から約2キロ離れた稲佐山近くの叔母の家に預けられていた。閃光(せんこう)を感じた後、倒壊した家屋の下敷きになった。奇跡的に助かったが、仕事に
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海外旅行離れ
2024/12/23 13:05 460文字2024年の訪日外国人客数(推計値)が1~11月累計で3337万人となり、新型コロナウイルス禍前の19年(年間3188万人)を上回って過去最高を更新した。一方、同じ期間に海外へ出国した日本人数は累計1182万人で、コロナ禍前の6割ほどにとどまっている。 訪日需要が旺盛である半面、日本からの海外旅行
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地下鉄での通話
2024/12/21 13:02 448文字ベルギーの首都ブリュッセルで地下鉄に乗っていると、車内で携帯電話で堂々と通話している光景を当たり前に見る。日本では、原則禁じられているので最初は驚いた。しかし、トラブルになっている様子はない。 考えてみると、日本でも電車内で人間同士の会話はもちろんできる。携帯電話によるペースメーカーなど医療機器へ
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サンタの正体
2024/12/20 13:15 450文字小学6年の息子がついにサンタクロースの正体を知った。同級生に教えられたらしい。うちは3歳下の娘がまだ信じているので、尋ねられても答えをはぐらかしていたのだ。 人は何歳ぐらいまでサンタを信じているものなのか。乳幼児心理学が専門の富田昌平・三重大教授が学生76人にアンケートしたところ、幼児期までが21
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物語の「その後」
2024/12/19 13:04 458文字今年も鶴岡八幡宮(神奈川県鎌倉市)のイチョウが鮮やかに黄色く染まった。鎌倉の名所だが、14年前の一大事を覚えているだろうか。 2010年3月、樹齢1000年とされる高さ約30メートルの大イチョウは強風で倒れた。鎌倉幕府の三代将軍・源実朝を暗殺した公暁が潜んでいた「隠れ銀杏(いちょう)」として伝えら
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酒のブランド価値
2024/12/18 13:10 459文字「伊丹空港の3分の2は、昔はうちの田畑だったんです」。江戸時代に生まれた日本酒「白雪」で知られる兵庫県伊丹市の「小西酒造」の小西新右衛門社長(72)はこう話す。歴代当主は新右衛門を名乗り、小西社長は15代目だ。 江戸時代、伊丹の酒は「下り酒」として船で江戸まで運ばれ、偽物も出るほどの人気を呼んだ。
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忍者の教え
2024/12/17 13:12 461文字黒装束で手裏剣を投げるイメージが強い忍者。「真の姿を知ってほしい」と11月に研究者らが青森市に集い、「忍者サミット」が開かれた。伊賀(三重県)や甲賀(滋賀県)の忍者は有名だが、青森でも江戸時代の弘前藩(津軽藩)に忍者集団「早道之者(はやみちのもの)」がいたとされる。 忍術の多くは日本古来の修験道に
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妄想のタネ
2024/12/16 13:02 458文字東京・広尾の住宅街に、ちょっと不思議な看板が立っている。「妄想図書室」。築100年近い民家の急な階段を上ると、三方の壁が本棚に覆われた隠れ家のような空間が広がる。 四軒長屋の一室を改修し、8月にオープンした私設図書館。年齢も職業も違う発起人7人が出会い、100日かけて手作業で作り上げた。「一箱本棚
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釣り文化
2024/12/14 13:13 459文字時間ができると、近くの海に釣りに行く。10年前に取材先の公務員と行ったのが、始めたきっかけだった。仕事のことは口が堅かったが、初心者の私に面倒見よく手ほどきしてくれ、庁舎で会う時とは別の一面を垣間見た気がした。 だが、最近は漁港などで「釣り禁止」の掲示を目にする機会が増えた。公益財団法人・日本釣振
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楽しみながら備える
2024/12/13 13:12 458文字先日、大容量の「ポータブル電源」を約5万円で買った。満充電にしておけば照明器具や扇風機、電気毛布などが長時間使えるほか、スマートフォンは50回以上充電できる。アウトドアで活躍してくれそうで、今後、旅行やちょっとしたお出かけに持参するのが楽しみだ。 思い切って購入したのは、今夏のゲリラ豪雨がきっかけ
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家庭のぬくもり
2024/12/12 13:05 467文字今年の春、関西に暮らす友人夫婦が元気な4カ月の男の子を家族に迎えた。30代半ばに受けた検査で、夫婦間には子どもができないことが判明していた。それから約5年を経て、特別養子縁組を前提とした里親制度で縁を得た。 妻は「赤ちゃんと暮らすのは慣れるまで戸惑った」と振り返るが、近く1歳を迎える息子の成長に一
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過労死ライン
2024/12/11 13:06 444文字過労死ラインは労災認定する際の重要な要素で、時間外労働を月平均80時間などとするものだ。労災認定の基準は、この過労死ラインを超えていなくても、身体的な負荷も加味して総合的に評価するよう改定された。ただ専門家は、改定後も時間外労働の数字を優先して判断されるケースは少なくないと訴える。 6年前、兵庫県
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献血を楽しむ
2024/12/10 13:12 468文字自分の血液はまだ役に立つのか。還暦を迎えて気になるようになり、定期的に献血に通っている。職場がある静岡市葵区のビルに、たまたま「献血ルーム・あおば」が入居し利用した。 血液型を告げると指先から採血され、ヘモグロビン濃度を測る。400ミリリットルの献血で、男性は1デシリットル当たり13グラム以上、女
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マイナ保険証
2024/12/9 13:10 461文字「マイナ保険証」を使って医療機関にかかる際、過去の医療情報の提供に同意するかどうかの確認を求められる。この同意確認を巡り、窓口でマイナ保険証を読み込む端末(カードリーダー)の画面表示が10月7日から変更された。 細かなデザインやメッセージは各施設や端末メーカーによって異なるが、基本的には、手術、薬
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「大戦」の伝え方
2024/12/7 13:13 462文字第一次世界大戦で、中立国だったはずのベルギーもドイツから侵攻を受け、戦禍に巻き込まれた。西部イーペルは英仏軍などと独軍などがぶつかる最前線となり、初めて毒ガスも使われた。戦禍を記録する「イン・フランダース・フィールズミュージアム」を11月に訪れた。 個人の写真や品物を展示し、一人一人が戦争とどう関
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痛みへの理解
2024/12/6 13:10 452文字「あ、痛い、イタタタ……」。会議室で男性が次々と顔をゆがめた。男性幹部が女性の月経について学ぶ大手製薬会社の研修での一幕だ。男性たちは、下腹部に電極をつけて月経痛を疑似体験できる装置を用いた。ベンチャー企業「大阪ヒートクール」が開発したもので、企業の研修での需要が増えている。私も試すと内臓がグググ
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