OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.236
OTOTOY編集者の週替わりプレイリスト&コラム(毎週金曜日更新)
祝サイボトロン復活──ホアン・アトキンスとデトロイト・エレクトロ
さきごろ発表されたまさかの28年ぶりのサイボトロンの新作リリース情報。サイボトロンは、デトロイト・テクノのゴッドファーザー、ホアン・アトキンスと、リチャード・デイヴィスによって1981年によって結成されたエレクトロ・ユニットでして、彼らの1983年のシングル「Clear」とアルバム『Enter』はその後のデトロイト・テクノの始祖であり、ひいてはその後のヨーロッパのテクノ・シーンや、そのサブ・ジャンルとして発達するエレクトロ・リバイバルの楽曲にも最も重要な参照先として繰り返しとりあげられています (もちろんいまだにDJにピックアップされフロアを揺らすことも)。エレクトロとここで言うサウンドは、もともとはクラフトワーク、特に “Numbers” のドラムパターンをひとつのルーツとして展開した、アフリカ・バンバータ&ザ・ソウル・ソニック・フォースの “Planet Rock” や前述の “The Clear” のような、ローランドのドラムマシンTR-808を基調にしたビートの、いわゆる初期ヒップホップにも存在するエレクトロ・ファンク・サウンドを指しています。ホアン・アトキンスは前述のアルバムをリリース後に、サイボトロンを脱退し、モデル500名義で活躍し、後輩のケヴィン・サンダーソンやデリック・メイらと1980年代後半にデトロイト・テクノを作り出します。どちらかと言えばデトロイト・テクノになりますと、同時期に勃興していたシカゴ・ハウスなどの影響を受け、いわゆるイーブン・キックのビート構成の楽曲が主流になっていきますが、それでもやはりこのホアン、そして彼を慕うアンダーグラウンド・レジスタンスのマッド・マイクなどを中心に、ある種のデトロイト・テクノの美学 (というか単純にこのビートが好きというのもあると思いますが) としてエレクトロ・ビートは継承されていきます。その中には死後20年近くたったいまでも、その作品が再発され、再評価され続け、いまでもヨーロッパなどに多くのフォロアーを生んでいる故ジェームズ・スティンソンのドレクシアなども含まれます。“The Clear” はミッシー・エリオットが2005年 “Lose Control” で引用したりなんてこともありましたね。話は戻ってサイボトロン、90年代にもうひとりのメンバーであるリチャードが活動を復活させているのですが、それを聴くかぎり、やはり “The Clear” などはホアンの関与が強かったのかなと。そして今回の復活作はホアンとともにモーリッツ・フォン・オズワルドの甥、ローレンス・フォン・オズワルドが参加しており、ホアン主導のサイボトロンとしてはある意味で40年ぶりの新作としてリリースされるということでしょう。シングルの先行曲 “Maintain” は超直球のデトロイト・エレクトロ・スタイルでして。ということで、今回はデトロイトのエレクトロで10枚。