はてなキーワード: 除去食とは
娘の卵アレルギーが、わかったのは1歳の頃だった。母親なら1歳何ヶ月って覚えてるんだろうけど、それがあたりまえになって何年も経つと、細かいことになってしまった。
「これ食べていい?」娘は会話ができるようになって、食事の時に、何度も何度も聞くようになった。
そのたびに、「いいよ」か、「卵が入ってるからだめ」のどちらかで答えていた。
幸い、祖父母も理解があったので、「少しなら大丈夫」とか「慣れれば平気」といって、勝手に与えるとか、そういうトラブルはなかった。(慣れれば平気は大きな意味で間違っていないかも知れないが)
保育園も協力的で、除去食の対応だけでなく、マヨネーズは園全体で、マヨドレ(卵なしのマヨネーズ風調味料)にしてくれたり、なるべく同じ見た目のものをだしてくれたりと、給食室と協力して対応してくれた。
園での給食とおやつは、他の子どものものを食べないようにと、先生の横が、娘の指定席だった。
それでも、外食となると、店員さんと相談したり、アレルギー表とにらめっこ。意外なものにも卵は入っているので、気が抜けなかった。
お子様ランチはだいたいダメ。やっと入った休日のサービスエリアのレストランで、大人のランチメニューより高いビーフシチューを2歳の娘に「高級品だよ(笑)」と言いながら食べさせたこともあった。
家で体中に発疹が出て、妻がエピペンの皮下注射をしたこともあった。3歳の娘の太ももに針を刺すのは「怖かったけど必死だった」としばらくして話していた。
小学生になるまでにはよくなるかなといったお医者さんの診立てとは裏腹に、年に2回ほどの負荷試験でも、吐いたり、体中に発疹が出たり。でも、同じ病院には、小麦や大豆、娘より深刻な子どもも多くいた。「卵だけならマシ」と言っていた妻の言葉を覚えている。
それでも、5年生になってようやく改善してきた。検査結果も問題なくなり、生卵以外なら、食べられるようになった。
いままで食べたことのないものも食べることができるようになった。
プリンやショートケーキ、パンケーキ、ドーナツ、初めて食べるたびに、「なにこれ、おいしい」という。そして決まって「また今度買ってきてね」と笑いながら言う。
こんな様子をみると、長かったなと思う。
今まで面倒なことに協力してくれた、保育園や学校のみなさん、ありがとう。祖父母にも心配かけたね。レストランや宿泊施設の方には本当に仕事を増やして申し訳なかったと思う。「うちのコもアレルギーがあって」なんて言ってくれる店員さんもいて、気が楽になったことも何度もある。
そして、ワガママも言わずに毎回「これ食べていい?」と聞いてきた娘へ、本当によく頑張ったね。太らない程度にドーナツ食べよう。これからは「卵が入ってるからダメ」じゃなくて、「食べ過ぎはダメ」って言うけど。
最後に妻へ、楽しいはずの食事で命の危険があるという、心をすり減らす状況を毎日毎日繰り返して、大変だったね。一番苦労したのは間違いなく妻だ。心からありがとう。
今日はケーキを買って帰る。いろんな種類を。娘も妻も、娘の弟たちもみんな僕に聞くはずだ。「これ食べていい?」。僕の返事を待たずに食べる姿が今から想像できて、笑いそうになる。
https://globe.asahi.com/article/14475497
この人はガチやな
肉や卵のような「個体物」が少ないので煮込みや炒めがしやすいので
公立でよく導入できたなと思う
肉や魚、卵など動物性食品を一切とらない「ヴィーガン」が注目されるなか、東京都内のある小学校では「ヴィーガン給食」の提供が始まった。2カ月に1回の定期的なペースでの実施は公立校で初めてだ。みんなで同じものを食べられるよう工夫されたこの給食の時間は、他の人が食べるものを尊重し、食べるものを自ら選ぶ大切さを知る、豊かな学びの場になっている。(目黒隆行)
4時間目の終わりを告げるチャイムが鳴り、給食当番が準備を始めた。東京都八王子市立浅川小学校のこの日の献立は「ごはん、生揚げのみそ炒め、なめこのみそ汁、茎わかめのごま風味」。いつもの牛乳の代わりにはリンゴジュースで、約605キロカロリー。今年度から始まった2カ月に1回のペースである「エブリワン・ヴィーガン給食」は公立校で初の定期的な取り組みだ。
■朝イチで昆布だしをとる
学校では児童のアレルギーの状況を把握し、食品アレルギーのある子どもたちにはアレルゲンを取り除いた「除去食」の給食を日々出している。これまで、月に1回の「エブリワン給食」の日は、幅広いアレルゲンに対応した食事を出し、なるべくみんなが同じものを食べられるように取り組んできた。さらに食の多様性と環境について考えるきっかけにしたいと、以前からあった取り組みを「エブリワン・ヴィーガン給食」に発展させ、この日は動物性の食材も使わないことにした。
「アレルギーのある人は先に取りに来てください」。この学校では配膳の時に給食当番がこう注意を呼びかけている。だが、この日の献立は同校の児童全員が同じものを食べられるよう工夫してある。「あっ、今日は必要なかったね」と給食当番の児童はあとで気がついていた。
栄養教諭は工夫をこらした。市の標準メニューから、みそ炒めに使われている豚肉を大豆ミートに、みそ汁のかつおだしを昆布に変更。ジュースだと牛乳より約50キロカロリー少ないので、大豆ミートを油で軽く揚げたり、みそ汁にじゃがいもを加えたりして、育ち盛りの子どもたちに必要なカロリー量を満たした。大豆ミートにしたことでむしろコストは安く済んだという。今は小麦や大豆、ごまなどにアレルギーがある児童は同校にいないが、状況によって食材などの対応は変えていくという。
八王子市立浅川小学校の「エブリワン・ヴィーガン給食」。豚肉の代わりに大豆ミートを使い、みそ汁のだしは昆布でとっている
記者も給食をいただいた。驚いたのはみそ汁。昆布はなかなかだしが出ず、どうしても薄味になりがちだ。栄養教諭は何度も自宅で試行錯誤し、「朝イチから70度ほどの湯に浸すのが最適」と発見したという。大豆ミートも味が良くしみており、豚肉ではないと言われなければ分からないような食感だ。「いままでなかったジャンルの給食だと思うが、こういう形の食事が世の中にあるということを知ってもらえれば十分。大人になったときに将来の食の選択肢が広がる」
6年生の松田大輝さんは「エブリワン・ヴィーガン給食は動物や魚の命を使っていない給食。環境にもいいし、体にもいいと思いました」。小宮航太さんは「宗教上の理由で肉を食べない人も食べられる。環境にも良いと聞いて驚きました」と話す。
エブリワン・ヴィーガン給食を食べる児童たち。新型コロナウイルス感染防止のため、みんな前を向き黙食している
「エブリワン・ヴィーガン給食」には、アレルギーや宗教の違いがあっても、みんなが食べられるものを用意し、「おいしいね」と言い合えるように、との願いが込められている。発案したのは校長の清水弘美さん(60)。ある児童のことが念頭にあった。
その児童には卵アレルギーがあり、卵を使った料理がある日は、用意されたアレルギー対応食しか食べることができず、たとえ卵が使われていない料理でもおかわりはできないことになっている。大好物の揚げパンが出ても、他の子たちがじゃんけんでおかわりする人を決めるのを見ているしかなかった。
エブリワン給食の日に揚げパンが出た時、クラスの友達は「普段おかわりできないから、今日はあげるよ」と言った。児童は「おかわりよりも、みんなと揚げパンじゃんけんがしたいんだ」。結局児童はじゃんけんに負けておかわりはできなかったが、保護者から学校の食に対する配慮を喜ばれたという。
「エブリワン・ヴィーガン給食」を始めた八王子市立浅川小学校校長の清水弘美さん
「いま学校現場はアレルギーにすごく気を遣っている。命にも関わる問題。だから、エブリワン・ヴィーガン給食の日はかえって安心できる」と清水さん。
環境保護や動物愛護の観点については、あえて子どもたちに積極的に教える機会は作っていない。「必要なカロリーやたんぱく質が動物性のものでなくても十分取れることをまず知ってもらうことが大事。自分だけでなく、周りの人、健康、地球環境などいろいろな条件を考えながら、その日食べるものを自分で選ぶ。主体的に生きられる大人になるための食育だと思う」と話す。
■本記事について、ヴィーガン食がアレルギー対応食だと誤解されかねないとの指摘を読者からいただきました。
ヴィーガン食はすべてのアレルギーに対応した食事のことではありません。この学校では従来から、在校児童のアレルギーを把握した上で給食を実施しており、「エブリワン・ヴィーガン給食」はその発展形で、献立も児童のアレルギーに配慮して決めています。現在の在校生のアレルゲンとなる食材は使っていませんが、学校側は今後、ごまや大豆などの食品にアレルギーを持つ児童が入った場合は、対応を変える必要があると認識しています。学校の取り組みやアレルギーに対する考え方について説明が不十分だった点を本文に加筆しました。今後、細心の注意を払って記事を書いてまいります。(11月11日追記)