高木俊朗著 『狂信』 「勝組」と聞いて何をイメージするだろうか。経済的勝者? 現在の日本ではそうかもしれないが、60年ほど前のブラジルでは違う意味を持っていた。 「あんた、気をつけないと、あぶないですよ」 昭和二七年、映画製作の依頼を受けてブラジルに渡った「私」はこう警告を受ける。第二次大戦での日本の勝利を未だに信じている「勝組」の存在は耳にしたことがあった。ブラジルに来て判明したのは、現在でも「勝組」の日本人移民社会に対する影響力は強く、彼らは暗殺団を結成し、さらにはそれを実行に移し、凄惨な事件の数々を引き起こしていたのである。私は調査を開始するが、そこで浮かび上がってきたのは悪夢的な迷宮世界だった…… なんて書くとハードボイルド調の歴史改変ミステリーかと思われるかもしれないが、これは著者が実際に、昭和二十七年に八ヶ月間ブラジルに滞在した体験を描いたノンフィクションなのである。 日本の勝