解説・紹介 (兵藤裕巳 埼玉大学助教授) ■九州の座頭琵琶 シルクロードを経由して日本に渡来した琵琶には、大別してふたつの系統があったようだ。ひとつは、遣唐使などによって畿内中央に公式に伝えられた雅楽琵琶。もうひとつは、大陸から直接九州地方に渡来したとみられる琵琶法師の琵琶、座頭琵琶だ。 琵琶法師の琵琶は、携帯に便利なように、雅楽琵琶よりもひとまわりこぶりにできている。棹(さお)のにぎりが太く、柱(フレット)の数も多いという独特の作りだが、「平家物語」などの様々な物語を語り、祝言や竈(かまど)祓いなどの宗教儀礼にたずさわった中世の座頭=琵琶法師は、しかし十六世紀末頃から、しだいに新しい三味線音楽に転向していったようだ。東北地方の奥浄瑠璃、有名な津軽三味線、北陸の五色軍談などは、どれも座頭三味線の系統である。近世の語り物音楽を代表する浄瑠璃・文楽も、もとは座頭の三味線から出発した。 時代の流