第2次世界大戦が終結した時、ソ連の捕虜となったドイツ軍兵士は2万人を数えた。コルネリウス・ロストは1944年に捕らえられ、1年後に重労働25年の刑を言い渡された。送られた先は遠く離れたシベリアの果ての、凍てつく鉛鉱山だった。 地の果ての収容所 囚人たちは鉛鉱山の穴の中で暮らした。警備兵たちは、彼らを情け容赦なくこき使い、毎日12時間働かせた。運がよければ週に1回、1時間だけ太陽を拝めた。囚人は疲労で死ななかったとしても、鉛中毒で確実に死んだ。 ロストの刑期は25年だったが、実際はその前に人生の方が終わってしまうだろう。ロストには自分がすぐに衰弱し、力尽きることがわかっていた。周囲に果てしなく広がるのは、凍りついた無の世界。それでもロストは、とにかく脱走を試みるべきだと考えた。 ロストはすぐに逃げ出したが、そのせいで仲間の囚人の食糧はほぼゼロにまで減らされた。11日後に捕まったロストは餓死寸