PROLOGUE映画作家の舩橋淳です。「ポルトの恋人たち 時の記憶」「フタバから遠く離れて」「ビッグ・リバー」など、劇映画からドキュメンタリーまで様々な形で監督作品を発表してきました。 今回Cinefilで連載を始めさせていただくことになりました。「いま書かねばならぬ」と強く問題意識を持つテーマを深掘りして考察するコラムにしたいと思います。 芸術のどんなジャンルもそうだと思いますが、映画においては、作り手が題材やテーマを「いかに我がものとして引き付けるか」が、制作過程の核心だと言っても過言ではありません。作品中の人物(キャラクター)が感じる実感が、何かしら現代を生きる自分たちが共感できる何かであるよう、作家は苦心してそれを探り当てていきます。そのため映画が喚起するエモーション(例えば、劇中の人物やキャラクターが感じる恋心やフラストレーション、怒りなどの感情)と、作家自身が社会で日々感じてい