タイ、バンコク。中華街の果てに、アキバの柔らかい部分だけ抽出した「サパーンレック」という場所があるが、そのサパーンレックからわずか二百メートルほど歩いたところに、まるで昭和のアキバを煮詰めたような、コチコチに硬派な一帯が広がっていることはあまり知られていない。人はこの界隈を「バンモー」と呼ぶ……。 畳二枚ほどの小さな半導体ショップがぎっしり詰まった電子の殿堂「バンモープラザ」を中心に広がる、半径百メートルほどのトワイライト・ゾーンは、アキバのパーツ街に匹敵する規模を誇り、周辺国からも多くのバイヤーが訪れる。 スピーカー店、数百種類のリモコンをストックするリモコン店、工具店など、至る所、底なしに地味な専門店ばかりで、女・子供をはじめ、チャラチャラした若者を見ることはあまりない。 なかでも多いのが「修理店」である。弱小メーカーの製品も多いタイの電機業界。日本と比較にならない頻度で電気製品が故障