ホーム > 歴史 > ヨーロッパ > 葛藤する聖職者、笑うラブレー、反逆するガリレオ 『知のミクロコスモス 中世・ルネサンスのインテレクチュアル・ヒストリー』を読む 編集部注:本記事は坂本邦暢氏による寄稿。今回坂本氏が寄せてくれたのは、ヒロ・ヒライ、小澤実編『知のミクロコスモス 中世・ルネサンスのインテレクチュアル・ヒストリー』(中央公論新社、2014年3月)の紹介記事である。坂本氏本人も寄稿している同書への案内として書かれたものだ。 1517年の書簡のなかで、エラスムスはある司祭をめぐる逸話を披露している。当時エラスムスが対峙していたのは、自身の聖書校訂プロジェクトにたいする批判者たちであった。文献学を駆使して聖書本文を修正する彼の試みが、聖なる書物への冒瀆だと非難されたのである。だが、とエラスムスは反論する。伝承されてきた本文にあきらかに間違いがあるにもかかわらず、その修正をいっさい許