ちまたの健康神話のなかでいっこうに消えそうにないのが、「1日にコップ8杯の水を飲む」というもの。ただし、これは事実ではなく、科学的根拠はない。 毎年夏になると、脱水症がいかに危険で、いかに増えているかと警鐘を鳴らす報道があふれる。健康そうに見える大人も子供も、気がついていないだけで実は脱水状態に陥っているのではないか、脱水症が蔓延しているのではないかと不安になってくる。 だが、本当にそうなのだろうか。 私は2007年に英医学会会報で、健康神話に関する論文を共同執筆した。最初に取り上げたのが、「1日コップ(237ミリリットル)8杯の水を飲まなければならない」こと。この論文は、私の研究のなかでかつてないほど話題になった。 しかし、世の中の反応は変わらなかった。2年後には書籍(『からだと健康の“解”体新書:あなたの常識、科学的には非常識?』アーロン・キャロル、レイチェル・ブリーマン共著、邦訳・春