前述の実験では,英語とロシア語の語彙の違いを使って,言語が知覚に与える影響を調べた。これはこれで面白い結果が得られているのだけれど,できれば語彙の違いには頼らないかたちで,この関係性を確かめたい。実験に影響を与えうる要素は,できるだけ少なく絞られていた方がいいからね。 そこで研究者が利用したのは,左視野と右視野を使い分けるという方法だった。 人の目から入力された情報は,左の視野は脳の右半球へ,右の視野は脳の左半球へと伝達される。これを optic chiasm (視神経交叉)と呼ぶ。「右目・左目」ではなくて「右視野・左視野」であることに注意しよう。 一般に右利きの人の脳は,左側が優位半球となる。人の言語機能は優位半球に集中していると考えられているから,もし言語と知覚の関係性が存在するならば,その影響は左半球への入力――つまり右視野からの入力を行った場合に,現れやすくなるに違いない。 研究者
言語が人の考え方や知覚を形作っている――そんなことを考えたことはないかな? 例えば,「日本語で思考できること」と「英語で思考できること」の間には,根本的な違いがあるんじゃないか……とかね。 言語と思考の関係性については,「サピア=ウォーフの仮説」なんていう名前で研究されていたりする。ただ,これについてはひとまず置いておこう……なんだかむつかしい話だからね。 言語と知覚の関係性については,分かりやすくて面白い研究がある。 英語で青色は "blue" だよね。明るい青も,暗い青も,基本的に "blue" と呼ぶ。これがロシア語では,明るい青を "Голубой", 暗い青を "синий" と呼び分ける。 ここで研究者たちは,ひとつの仮説を立てる。もし言語と知覚が関係性を持つなら,青色の知覚能力を測定したときに,青に対してひとつの呼び名しか持たない英語と,青に対してふたつの呼び名を持つロシア語
「有限性、適応性、自律性を持った構造化インターフェース」としての、身体の面白さについて。 身体が生む小さく浅い世界 人工知能は計算的に「深い」アルゴリズムを使うから、外乱に対して弱い。 入力のわずかな変動が、出力においては大きな、予測不可能な変動を生んでしまう。 計算的に深いプログラムは、ノイズの少ない、シミュレーション世界では上手に 機能するけれど、実世界では役に立たない。 大きすぎる問題は、解くことができない。実世界という、あいまいで変動幅の大きな問題は、 AI にとっては要求される計算量が莫大になりすぎてしまう。 対象とする問題を強引に「小さく」できるなら、計算量をそれだけ減らすことができる。 「脳単体」としては存在し得ない人間の脳は、「身体」というインターフェースを介して世界と接する。 身体は、知性と世界との界面に介在して、脳からみた見かけ上の世界を、 小さくすることに成功している
「脳の回路図」を作る:全シナプスの「地図」を作成 2008年1月28日 サイエンス・テクノロジー コメント: トラックバック (0) Alexis Madrigal 数百万のニューロンがつながり合う脳の回路図を作成する『ATLUM』装置。ネズミの脳を、りんごの皮むき器のように剥いてごく薄い切片にしていく。 ハーバード大学の研究者らが、脳の組織を高解像度の神経地図に自動変換する新しい装置を利用して、脳の回路図を作るという壮大な計画に着手している。 研究者らは、脳の中にあるすべてのシナプスの地図を作成することによって、「コネクトーム」(connectome)を作り出したいと考えている。コネクトームは、『fMRI』のような現在の最先端を行く脳内測定装置をはるかにしのぐほど、詳細なレベルで脳の活動を明らかにする回路図となるだろう。 「思ってもみなかったものを見ることになるだろう。これまでほとんど手
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