先週Taro先生にいただいた特派員便りです。 相変わらず濃い毎日ですね。
米国のFoodborneの話は対策・システムの規模がちがいます。
流通の発達した昨今はすぐに広域アウトブレイクになるリスクがあります。
一人のドクターが「同じような症状の人、他からも報告きていない?」と公衆衛生部門に電話してはじまる調査が多数あるそうです。
日本は報告された感染症の動向について、自治体ごとのシステムの壁があり、隣のところがどうなのかを知ることができません。大阪府や神奈川県の担当者は、「大阪市」「横浜市」の情報を見ることができない、千葉県の担当者は東京や茨城のデータをデジタルでは知ることができないシステムです。
広域アウトブレイク事例の場合に電話等で確認することになります。
(どうして隣の自治体のことを隠さないといけないのかは誰も語ってくれませんが)
米国CDCには菌の遺伝子情報のデータバンクがあり、皆がせっせと登録をして共有するので、「同じだ!」「似ている!」と同時多発アウトブレイクの探知や由来を知る手がかりになっています。
FoodNet http://www.cdc.gov/FoodNet/
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こんにちは。アトランタに帰り1週間、早くもひとつのクラスが終わりました。
授業は”Control of Foodborne and Waterborne Diseases”。5日間ですむ代わりに朝から夕方までブチ抜きの授業で2単位。エモリーに来て初めて医学的な内容に触れた授業でした。
受講生はMPHの学生が主でしたが、エモリーのドクター(生涯教育コースの一環で?)やCDCスタッフなども参加していました。
忙しかったですが、とても興味深く考えさせられることの多かった授業でした。5日間の授業はこんな感じです。
1日目 Foodborne disease surveillance, ID principle, Cholera, Listeriosis
2日目 Foodborne disease, toxin mediated diseases, Case study, Enteric viruses, Prion
3日目 Campylobacteriosis, Salmonellosis, O-157:H7, Shigellosis, Hand hygiene
4日目 Waterborne disease surveillance, Field trip-Water and Wastewater treatment
5日目 Public policy perspective, Environmental transmission, Microbiologic indicator
Global Burden of Food and Waterborne Diseases,
Final Examination
授業は全体的に駆け足でしたが、臨床でキャンピロバクターやリステリアなどと接していてもそれは”tip of iceberg”であり、腸管・水系感染症の場合は貧困や政治の問題と表裏一体で解決しなければならないissueが根深く存在する、ということを実感するのに十分な内容でした。
個人的に面白かったのは、上水道、下水道がどんなに感染症と密接に関連しているかということです。おそらく、感染症メインでMPHやMSのトレーニングを積まれている方はこの手の授業をしっかり履修されるのだと思いますが、先進国では水のラインが如何に精密に制御されて手を変え品を変えCryptosporidiumやLegionellaどもをかわしているかを学ぶことは、グローバルな臨床医としての視点に奥行きを与えるものとして大切だと思います。
臨床医として勉強になったこととしては、
・各消化管感染微生物の潜伏期間はアタックする臓器の口からの距離に比例すること
・細菌毎のfragilityを知っておくことは、臨床だけでなく感染防御や感染管理でも重要だということ などがPearlsでしょうか。
とはいえ、私が最も印象付けられたのは5日目のコース修了試験直前に流れたunicef作成のビデオでした。下痢、水不足、そして水系感染症で失われる幼い命がいかに多いか。これらについてはインフラの整備始め、貧困による問題への対処という大枠から考えることが必要です。今、自分ができることは何か。気になって先ほど調べたところ、UNDP(国連開発計画)によれば、世界で25億人もの民衆が一日2ドル未満で生活しているというのが現状のようです。このままいくとUNDPの掲げる、2015年までに貧困層の半減を目指す「ミレニアム開発目標」は現時点で難しいかもしれません。
貧困は感染症と同様、人類が果たすべき根源的な戦いの一つだと思います。そして、決して克服できない課題ではありません。貧困問題の解決にかかるコストは、世界の所得合計のわずか1%にすぎず(UNDP)、仮に各国で軍事費に費やされている資金の一部がそこに充当されるような国際的な枠組みが設置出来たとすれば、貧困に苦しむ多くの人々にとって飛躍的にアドバンストなる良い効果が生まれるはずです。
今のところ私は臨床以外の対外的活動としては、核防止の活動に参加し始めたのみです(IPPNW;核戦争防止国際医師会議)。それに加え人の命にかかわる臨床医の一代表として、貧困問題についても効果的に貢献できる何らかのアクションを模索しているところです。この有意義なブログを通して、私がEmoryで学んでいるこのような問題についても皆さんとshareできたらと思い、少し書いてみました。
(写真は本日の夕食。珍しくチキン→ビーフにしたのは、講義を聴いて成敗のターゲットを久々にサルモネラからE.coliにシフトしようと思ったため・・・、そしてこの食事を作っていて、私も異国で精一杯やることにやはり必死なのだとどういうわけかつくづく感じました。という何だか思い入れのある一枚です。)
米国のFoodborneの話は対策・システムの規模がちがいます。
流通の発達した昨今はすぐに広域アウトブレイクになるリスクがあります。
一人のドクターが「同じような症状の人、他からも報告きていない?」と公衆衛生部門に電話してはじまる調査が多数あるそうです。
日本は報告された感染症の動向について、自治体ごとのシステムの壁があり、隣のところがどうなのかを知ることができません。大阪府や神奈川県の担当者は、「大阪市」「横浜市」の情報を見ることができない、千葉県の担当者は東京や茨城のデータをデジタルでは知ることができないシステムです。
広域アウトブレイク事例の場合に電話等で確認することになります。
(どうして隣の自治体のことを隠さないといけないのかは誰も語ってくれませんが)
米国CDCには菌の遺伝子情報のデータバンクがあり、皆がせっせと登録をして共有するので、「同じだ!」「似ている!」と同時多発アウトブレイクの探知や由来を知る手がかりになっています。
FoodNet http://www.cdc.gov/FoodNet/
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こんにちは。アトランタに帰り1週間、早くもひとつのクラスが終わりました。
授業は”Control of Foodborne and Waterborne Diseases”。5日間ですむ代わりに朝から夕方までブチ抜きの授業で2単位。エモリーに来て初めて医学的な内容に触れた授業でした。
受講生はMPHの学生が主でしたが、エモリーのドクター(生涯教育コースの一環で?)やCDCスタッフなども参加していました。
忙しかったですが、とても興味深く考えさせられることの多かった授業でした。5日間の授業はこんな感じです。
1日目 Foodborne disease surveillance, ID principle, Cholera, Listeriosis
2日目 Foodborne disease, toxin mediated diseases, Case study, Enteric viruses, Prion
3日目 Campylobacteriosis, Salmonellosis, O-157:H7, Shigellosis, Hand hygiene
4日目 Waterborne disease surveillance, Field trip-Water and Wastewater treatment
5日目 Public policy perspective, Environmental transmission, Microbiologic indicator
Global Burden of Food and Waterborne Diseases,
Final Examination
授業は全体的に駆け足でしたが、臨床でキャンピロバクターやリステリアなどと接していてもそれは”tip of iceberg”であり、腸管・水系感染症の場合は貧困や政治の問題と表裏一体で解決しなければならないissueが根深く存在する、ということを実感するのに十分な内容でした。
個人的に面白かったのは、上水道、下水道がどんなに感染症と密接に関連しているかということです。おそらく、感染症メインでMPHやMSのトレーニングを積まれている方はこの手の授業をしっかり履修されるのだと思いますが、先進国では水のラインが如何に精密に制御されて手を変え品を変えCryptosporidiumやLegionellaどもをかわしているかを学ぶことは、グローバルな臨床医としての視点に奥行きを与えるものとして大切だと思います。
臨床医として勉強になったこととしては、
・各消化管感染微生物の潜伏期間はアタックする臓器の口からの距離に比例すること
・細菌毎のfragilityを知っておくことは、臨床だけでなく感染防御や感染管理でも重要だということ などがPearlsでしょうか。
とはいえ、私が最も印象付けられたのは5日目のコース修了試験直前に流れたunicef作成のビデオでした。下痢、水不足、そして水系感染症で失われる幼い命がいかに多いか。これらについてはインフラの整備始め、貧困による問題への対処という大枠から考えることが必要です。今、自分ができることは何か。気になって先ほど調べたところ、UNDP(国連開発計画)によれば、世界で25億人もの民衆が一日2ドル未満で生活しているというのが現状のようです。このままいくとUNDPの掲げる、2015年までに貧困層の半減を目指す「ミレニアム開発目標」は現時点で難しいかもしれません。
貧困は感染症と同様、人類が果たすべき根源的な戦いの一つだと思います。そして、決して克服できない課題ではありません。貧困問題の解決にかかるコストは、世界の所得合計のわずか1%にすぎず(UNDP)、仮に各国で軍事費に費やされている資金の一部がそこに充当されるような国際的な枠組みが設置出来たとすれば、貧困に苦しむ多くの人々にとって飛躍的にアドバンストなる良い効果が生まれるはずです。
今のところ私は臨床以外の対外的活動としては、核防止の活動に参加し始めたのみです(IPPNW;核戦争防止国際医師会議)。それに加え人の命にかかわる臨床医の一代表として、貧困問題についても効果的に貢献できる何らかのアクションを模索しているところです。この有意義なブログを通して、私がEmoryで学んでいるこのような問題についても皆さんとshareできたらと思い、少し書いてみました。
(写真は本日の夕食。珍しくチキン→ビーフにしたのは、講義を聴いて成敗のターゲットを久々にサルモネラからE.coliにシフトしようと思ったため・・・、そしてこの食事を作っていて、私も異国で精一杯やることにやはり必死なのだとどういうわけかつくづく感じました。という何だか思い入れのある一枚です。)
連邦法と州法の観点から言うと、米国はFederal(中央)とState(末梢)がそれぞれ独立して動くようなところがあり、中央集権的に全てお上が一括統治ではない、というところが他国との大きな違いです。それだけ各州の自治権が大きいということも示唆されます。
このようなシステムは移民時代に遡るアメリカの歴史的な背景があり、このシステムが良い悪い、ということとは議論を異にします(実際、中央集権でないので複雑怪奇なシステムの齟齬の部分もあります)。
感染症アウトブレイクについてはUS public health lawに則れば、まずアウトブレイクを州の健康局長が察知、独自に活動するようです。ただしFederalであるCDCとも連携するため、CDCの持つデータバンクとの照会ももちろん可能です。
州のレベルで中枢までいちいち報告せずに対応できることは、末梢神経が脊髄弓レベルでの反射を行うようで迅速ですね。その上、上位ニューロンからのフィードバックもあるとなっては鬼に金棒、実に効率的な対応が可能と思います。