安倍晋三・菅義偉政権下の社会においては、文化芸術の表現活動もさまざまな形で抑圧を受けた。「表現の自由」はどのようなメカニズムによってゆがめられたのか――。京都芸術大大学院教授の小崎哲哉さんが寄稿でその深層に迫った。
萎縮生んだ「表現の不自由展」の補助金不交付
2019年8月に始まったあいちトリエンナーレで、芸術祭内の企画展「表現の不自由展・その後」(以下「不自由展」)が開幕直後に中止に追い込まれた。従軍慰安婦をモチーフとした「平和の少女像」や昭和天皇の写真を燃やす場面を含む映像作品などが問題視され、SNSが炎上し、「電凸」による抗議や脅迫ファクスが殺到したのである。
抗議のほとんどは、作品に込められた多義的なメッセージを読むことなくなされた。実際に展示を観(み)ずに過剰な反応を示した人も多かったと思われる。そして問題は、これにとどまらなかった。
同年9月末に「不自由展」の再開が決定されたが、その直前に文化庁が、採…
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