お話は、昭和30年代後半の東京。(1962~63年ごろ) 主人公は、寺島町子(倍賞千恵子)、年のころは二十三、四歳、独身。 家は東京の下町、荒川の土手が近い。木造の家々が密集する街の、入り組んだ奥にある。一家は、トラック運送会社に勤める父親とその母(祖母)、そして町子の二人の弟たちの、五人家族。 町子は電車通勤して、工場街にある石けんの製造工場で女工さんをしている。父の月給は2万8千円で、町子のと合わせればどうにか4万円か。これで五人の世帯をまかなう。中流には届かないかもしれないが、倹約すればテレビは買える。上の弟は高3で大学受験を目指している。せっせと貯金もしているんだろう。家の中の様子や食事は質素だが、一家に生活の不満はない。もっとも・・・、上を見ればキリがない。 町子には彼氏がいる。同じ工場に勤める道男(早川保)だ。彼は、社内で実施される正社員登用試験を受けるため、猛勉強をしている。