思い出話だが、評者は小学生のとき、空想の街を考えるのが好きだった。自由帳にRPGの地図ような架空世界を描いたり、家にあるレゴブロックやオモチャを並べて街に見立てたり。シムシティやシティーズスカイラインといった街づくりゲームにハマり、寝食も忘れてプレイした記憶もある。 そうした、実在しない街や地域を大人になっても地図に描き、追究し続ける人々がいる。それも、描き方だけでなく、地理、地形の形成、歴史、都市計画といった広範な専門知識をインプットしてフル活用し、ぎょっとするほど緻密でリアルな世界を創造している。本書はその驚異の空想世界の数々と製作方法をレクチャーする贅沢な地図帳である。いやこれ、本当にわくわくするので、書店に行ってめくってみるなり購入するなりして早急に現物を見てほしい。 さて、どれほど緻密なのか。本書ではまず16人の空想地図作者による作品が紹介される。いくつかピックアップしてみよう。