「今度の疫病禍は、寺院にも影響は大きいだろうな?」 「大きい。おそらく、どこの寺でも葬式は参列者が少なく、規模は縮小だろう。法事はキャンセルや延期が続いているはずだ」 「じゃ、経済的にも大打撃だな」 「その辺は、もう他の経済活動も同じだろ。ぼくはむしろ、この打撃の意味を考えている」 「というのは?」 「『新しい生活様式』という言葉が出てきたろう。あれさ」 「それがどうしたんだ?」 「たとえば東日本大震災は、確かに未曽有の大災害だったし、多くの被災者の人生を大きく変えてしまっただろう。その苦難はまだ続いている」 「そのとおりだな」 「だが、直接の被災者でない人々にとっては、必ずしもそうではない。しばらくの間不自由は続いたが、結局日常生活はおおむね元に戻り、変わらず続いたな。そうでなかったら、『復興五輪』なんて能天気なことを臆面もなく言いだせなかったろう」 「ところが、今度の疫病禍は違う。日本