Bloc Party4年振りのニュー・アルバムをリリース
まずはこうしてまた新しいアルバムが届いたことを喜びたい。前作『Intimacy』のツアーですっかり疲弊し、しばらくの休止期間を設けていたブロック・パーティ。その後はケリー・オケレケのソロ・デビューを始めとして、徐々にメンバー個々の動きが活発化し、このままバンドは解散に向かっていくのではという見方もあったが、4年ぶりの新作『Four』は、そうした一連の動きがバンドにしっかり結実したことを十分に感じさせる力作となった。
2本のギターを絡めるようにして性急に展開していく楽曲群と、ニルヴァーナの『In Utero』あたりを思わせるざらついたサウンド・プロダクションを耳にすると、バンドがまたデビュー時のフレッシュな状態に立ち戻ったようにも感じるが、そこはやはりポスト・パンクを現在に引き継ぐ彼らのことだ。単純な原点回帰作とはいかない。後半に登場するメロウなナンバーに顕著なように、『Four』はこれまでになく彼らのソング・オリエンテッドな一面が見えてくる作品だ。細やかなリズム・セクションや2本のギターによる単音リフの組み合わせも、よりメロディ・ラインに意識をおいたものになっていて、バンドがまた一丸となって制作に取り組んだ様子が伺える。ケリーのヴォーカルも、ロバート・スミスのように喉を痙攣させるお馴染みの歌唱から、より陶酔感をこめてじっくりと歌い上げるものまで、とても表情豊かだ。
先日行われた来日公演では早速『Four』からの新作を多数披露していた。まだ試運転段階といったところだったが、相変わらずフォトジェニックな4人の佇まいを目の当たりにすると、やはり興奮せずにはいられない。ライヴの翌日、ゴードン・モークス(B)とマット・トン(Dr)に話を訊いた。
インタビュー&文 : 渡辺裕也
遂に幕を開けたBloc Partyの新章スタート
Bloc Party / Four
【価格】
200円 / 1500円(MP3、WAV共に)
活動再開後初となる待望の4thアルバムをリリース。フロントマンのケリー曰く、「僕たち4人じゃなければ作れなかったサウンドだし、今まで作ったどのアルバムよりも誇りに思う」と断言する程の新たな傑作の誕生。
それぞれが深く考えた時期を経てつくったアルバム(ゴードン)
——昨日のライヴ(6月24日のホステス・クラブ・ウィークエンダー)は新作からの楽曲も多数披露する挑戦的な内容でしたね。みなさんの手ごたえはいかがだったんでしょうか。
ゴードン・モークス(ba)(以下、ゴードン) : 日本でのステージも4年ぶりになったからね。演奏前からすごくわくわくしていたんだよ。しかも、バンドを再始動してからここまでまだ4回しかギグをやってない状態だったからさ。新しい曲を披露するときはいつだって緊張するものだけど、いまはそれ以上にドキドキした気持ちでこのバンドに臨んでいるんだ。とりあえずいい感触を持ててよかったと思ってる。
——しばらく動きがなかったこともあって、もうバンドが危機的な状況なんじゃないかという見られ方もあったと思うんですが、実際にみなさんはこの4年間をどのように過ごされていたのでしょうか。
マット・トン(dr)(以下、マット) : 前作をリリースしてからのツアーが思っていた以上に長期のものになってしまって、メンバー全員がものすごく疲弊してしまったんだよね。それでしばらく休みを取りたくなった。それからは、ケリーがソロ作をリリースしていたし、ゴードンも新しいバンドを始めた。ラッセルは他のバンドのサポートなどを積極的にやっていたね。で、僕は比較的ゆっくりと過ごさせてもらっていたよ。
——メンバー間のコミュニケーションは休止期間中もとれていたんでしょうか。あるいは創作へのモチヴェーションをどのようにして取り戻していったのでしょう。
ゴードン : 今の僕らはそれぞれ離れた場所で生活しているんだ。だからまたこのバンドを動かしたいという気持ちが戻ってくるまでは、あまり細かい連絡は取り合っていなかったね。とにかく前作のツアー終了後は、それぞれに自分の時間を持つことが重要だったんだと思う。
——では、その期間中になにか音楽的に刺激を与えられるような体験があれば、教えていただきたいです。
ゴードン : 僕自身は他のバンドでブロック・パーティとはまったく違った音楽にトライしていたから、そこからの影響はやっぱり今の自分の演奏にも表れているんじゃないかと思うよ。ただ、意識的になにか新しいものを摂取しようとはしていなかったな。目の前に現れてくるものを自然に受け入れたかったというか。
マット : 僕は自分のルーツを見つめ直していたところだったな。これまでのキャリアを踏まえて、演奏に関する技術的な部分を改めて振り返ってみたいところだったし、それこそ60年代のサイケデリック・ロックとかを思い返すようにしてよく聴いていたよ。
——新作はニューヨークでレコーディングを行ったり、アレックス・ニューポートをプロデューサーに立てたりと、バンドを取り巻く制作環境を意識的に変えようとしているようにも感じたのですが、どうでしょうか。
ゴードン : ニューヨークでレコーディングをすることにしたのは、それぞれの生活状況を見た上での決断だったんだ。その当時はケリーとマットがニューヨークで生活していたからね。だから特別にそこで何か新しい刺激を得ようとか、そういう気持ちで場所を選んだわけではないよ。で、アレックスをプロデューサーとしてチョイスしたことに関しては、今回は自分たちのプロダクションに深い理解をもって取り組んでいる人と制作に入りたかったというのが、理由として大きかったかもしれない。なるべく自分たちのやり方に正直な作品にしたかったんだよね。つまり、いわゆるビッグ・ネームのプロデューサーに手を借りて、外的なところから新しい要素を手に入れたいとか、そういう気持ちではなかったんだ。
——バンドが進もうとしている指針にしっかりと合わせてくれる人を求めていたということですね。
ゴードン : 確かにその通りだね。このバンドは一人一人が自分の演奏面に関してはものすごく神経を使う人たちばかりなんだよ。それって逆に言えば他のパートに関しては各々が任せっきりになりがちってことで。極端に言ってしまえば、ケリーの歌うメロディや内容について、僕らが深く介入していくことって、そうはないんだ。そうやってそれぞれの異なる方向性が混ざり合うことで楽曲を形にしていくのが、これまでのブロック・パーティのやり方だった。ただ、今回はアレックスが僕らに対して、ケリーの作ってくる楽曲にもっと忠実な姿勢で演奏したらどうだと提案してきたんだよね。だから今回はこれまで以上にケリーの意図を汲み取ろうと強く意識して制作に臨んだんだ。それは作品の内容にもよく表れているんじゃないかなと思うよ。
——新作には『Four』というこれまで以上に簡潔な名前が与えられていますが、ここにはどんな含みがあるのでしょう。
ゴードン : これはケリーの案で、確かに色んな含みはあるみたいなんだけど、僕にとってはなによりもこの4人でこのバンドをやるということを改めて強く意識したということが大きな意味を持っているタイトルなんだ。ブロック・パーティというバンドで僕らが一緒に演奏することについてそれぞれが深く考えた時期を経てつくったアルバムだし、それがこういう内容になってよかったと感じているよ。
——『Four』を完成させたことで、またこのバンドの未来が開けたような手応えはありますか。
ゴードン : まだこれから先のことは何もわからないというのが今の正直な答えだな。ただ、今はこのアルバムを形に出来たことにものすごく安堵を感じているし、なによりも嬉しく思っている。これから返ってくるリアクションにもすごく期待しているんだ。
マット : そうだね。こうやってまた新しいサウンドに挑めたのがとにかく有意義だったし、その実感がこれからまた活動を重ねていく中でまた強まっていくんじゃないかと思ってる。そうすれば自ずと次の展開が見えてくるんじゃないかな。
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PROFILE
Bloc Party
ケリー・オケレケ(vo&g)、ラッセル・リサック(g)、ゴードン・モークス(ba)、マット・トン(dr)の4人組からなる。1998年から1999年にかけて結成され、ロンドンを拠点に活動を開始。レーベル契約前から注目され、個性的な新人アーティストを送り出すことで知られるレーベル「Wichita」と契約。2004年にシングル「ブロック・パーティーEP」でデビュー、同年『SUMMERSONIC 04』に出演した。日本では05年にデビュー・アルバム『サイレント・アラーム』をリリース、スマッシュ・ヒットを記録している。1970年代から1990年代にかけてのロック・ムーブメントに精通し、サイケ、ニュー・ウエーブ、ガレージ、パンクやオルタナなどありとあらゆる音楽をつめこんでファンキーなビートで味付けしたサウンドはなんとも刺激的。