この1年で彼女たちは何色に染まった? ──デビュー1周年目前のかみやどメンバー・インタヴュー
2019年6月29日にデビューを果たした、神宿の研修生ユニット、かみやど(ひらがなかみやど)が5月23日(土)の大阪 club vijonを皮切りに、1周年記念ツアー〈“はじまりの合図” supported by WEGO〉を開催する。OTOTOYでは昨年7月にデビュー・ライヴを行ったばかりの彼女たちにインタヴューを実施しましたが、この1年で彼女たちはどんな色に染まっていったのでしょうか。久しぶりのインタヴューをお届けします。
さらに! このタイミングで、かみやど結成のきっかけとなった神宿の新メンバー・オーディション課題曲であった“はじまりの合図”のかみやどバージョンがOTOTOY限定で配信開始です! 彼女たちのスタートを象徴するこの曲を聴きながら、インタヴューでこの1年を振り返っていきましょう。
かみやどの“はじまりの合図”が聴けるのはOTOTOYだけ!
INTERVIEW : かみやど
2019年1月から開催された神宿新メンバー・オーディションのファイナリスト6名で結成された「かみやど」。6月29日のデビュー・ライヴ以降、彼女たちは大型のアイドル・イベントに出演、リリース・イベントでは各地を回り、渋谷WWW Xで行ったセカンド・ワンマン、SHIBUYA CLUB QUATTROで開催したサード・ワンマンと、着実に経験とスキルを磨いてきた。いよいよ“はじまりの合図”のリリースをきっかけに、5月からは1周年記念東名阪ツアーも決まっている。これまでの活動を彼女たちはどう見てきたのか、そしていまはなにを思ってステージに立っているのか、彼女たちの現在地を探ろうと思った。
インタヴュー&文 : 真貝聡
写真 : 大橋祐希
“はじまりの合図”を歌っているときは「なんでここに立っているんだろう?」って悲しくなった
──今回はグループ結成からの1年間を振り返ろうと思います。これまでの活動をまとめた年表を用意したので、それを見ながら話しましょう。
高田もも(以下、高田) : すごーい! 覚えてないのがいっぱいあるよ!
──そんなに大きな声で言わなくていいんで(笑)。
桜木こと(以下、桜木) : こうやって資料を見て、1年経ったという実感がないんですよね。「5月に結成を発表したんだ」とか「この日にTSUTAYA O-WESTでデビュー・ライヴがあったんだ」とか、本当にやってきたんだっけ? という感じがします。
高田 : デビュー・ライヴはPerfumeさんの“スウィートドーナッツ”の振り入れをしたのが印象深いかなぁ。本当にまったく覚えられなくて、すっごい苦戦したし、すっごいつらかった。
石綿なこ(以下、石綿) : あの頃の方がいい意味でも悪い意味でも、みんな緊張感があったというか。いまの振り入れってみんなで助け合いながら、「ヤバイね」と気持ちを共有しながらやっているけど、当時は自分の中だけで焦っていた。
辻ゆか(以下、辻) : みんなに置いていかれる、みたいな。
石綿 : そう、そんな感じ。“スウィートドーナッツ”のことを思い出したら、焦っていたなって。
萩田ここ(以下、萩田) : みんなでステージに立つのがはじめてだったし「これから、かみやどとして6人でデビューするんだな」というドキドキと、「どんな人がライヴに来てくださっているんだろう」という不安があって。ステージに出るまで、緊張感がすごいありました。ライヴの時間は短くて30分だったんですよ。でもそのときは6曲をやるのに本当に精一杯で、30分でもすごい疲れた。
石綿 : いま考えると、6曲でデビュー・ライヴをやるってすごいね。
──夏は“冷凍みかん”のリリースがあったり、いろんなフェスにも出演してましたよね。
辻 : 夏といえば、やっぱり〈TOKYO IDOL FESTIVAL〉が思い出深いです。かみやどになる前、私は別でアイドル活動をしていたんですけど〈TIF〉には出たことがなかったんですよ。それまでは出演者としてではなくて、イチ観客として観に行って「…… ここに立ちたいな」と憧れていたんです。だから、まだデビューしたばかりの自分たちが〈TIF〉に出れたのはすごい感動でもあるし、レベルアップしたなと思って。
藤田みゆ(以下、藤田) : 私も夏でいちばん印象に残っているのは〈TIF〉ですね。ただ私、ゆっち(辻)のようにアイドル活動をやっていたわけでもないし、アイドルにすごい詳しいわけでもないので、最初は〈TIF〉がどういうものなのかもわからなくて。そしたら、ゆっちから「〈TIF〉に出られるのはすごいことなんだよ!」と言われて。当日楽屋に入ってみたら、有名なアイドルさんがいっぱいいるんですよ! 楽屋の中にもいるし、廊下にも「うわぁ、あの人も! あの人もいる!」みたいな。デビューをしてほんの数カ月でこんなところに出させていただいて、本当に恵まれているなって。
──フェスに呼ばれるかどうかっていうのは「アイドル業界に存在を認知されているか」みたいなところもありますよね。
石綿 : そうですね。呼ばれることはありがたいんです。ただ…… 8月31日に〈MX IDOL FESTIVAL〉で豊洲PITに立ったときに“はじまりの合図”を歌ったんですけど…… 私は泣きそうになりました。
──泣きそうになった?
石綿 : ほかのみんなはどう思っているかわからないけど、私はとにかく悲しくて。
桜木 : そっちか。
石綿 : 私は悲しかったの。あそこは神宿さんのオーディションで1度立ったのに、対バンの枠で豊洲PITに出て…… なんか出戻り感がすごかった。めちゃくちゃショックだったんですよ。“はじまりの合図”を歌っているときは「なんでここに立っているんだろう?」って悲しくなったことが忘れられない。
桜木 : なこちゃんは悲しいと言ってますけど、私は「そういえばこんな感じだった、豊洲PIT」と思った。もし自分が神宿のメンバーになっていたら、そこが自分にとって誕生の場所だったわけじゃないですか。でもあのときは対バンだったけど、かみやどとして出たステージだったから、私は「ここから頑張ってやるぞ」という気持ちになりましたね。
──はじめてのリリース・イベントはどうでした?
萩田 : ライヴハウスじゃなくていつもより狭い場所だったので、最初は手がぶつかったり、ステージから落ちそうになったり、事故が多かったイメージです(笑)。最近は慣れてきたんですけど、ステージの感覚にすごい戸惑っていたのが印象的ですね。
石綿 : こんなこと言うとあれなんですけど、私はTSUTAYA O-WESTとかTSUTAYA O-EASTとか、大きい会場でたまにライヴができればいいと思っていて、地方とかいろんなステージに立つ必要性がわからなかったんです。むしろ大きな会場でやるだけでいいじゃんって。だから「めっちゃリリイベをやるんだな」という感じでした。
──ファンが集まるワンマンと違って、リリイベは自分たちを知らない人に見てもらうプロモーションの場ですからね。
石綿 : 考えは違ったんですよね。そういう1つひとつのライヴの大事さや意味を知りました。
「研修生」という肩書きを取っていいんじゃないか
──11月に開催した『BUBKA』のトークショーはどうでしたか?
石綿 : お客さん的には「ライヴじゃないんだね」とテンションは下がっている感じだったんですよね。だけど来てくれた方はみんな「めっちゃおもしろかった!」と言ってくれたのがすごいよかった。
辻 : 楽屋にいたときは「やばくない!? 30分もたせられるかな」って話をしていたんですよ。
──トークだけですからね。
萩田 : 心配してたけど、いざはじまったら自己紹介だけで25分も使っちゃったんです(笑)。
石綿 : スタッフさんがうしろでずっと「あと5分だよ」って合図を送ってきてびびったよね。しかも時間が足りなくて、みゆちゃんは自己紹介やってないからね(笑)。
藤田 : そうだよ、やってないんだよ!
高田 : とにかく楽しかった! いまだったらもうちょっとみんな話せるから、もっとおもしろいものを提供できるはず(笑)。
──12月2日には、渋谷WWW Xでセカンド・ワンマン・ライヴを開催しました。
石綿 : 神宿さんのおかげでデビュー・ライヴは人が集まったとしても、2回目のワンマンはいよいよ自分たちの力が試されるからすごい大変でした。
──たしかに、ワンマンで集客できなかったら、夏フェスや対バン・イベントに出て顔を売った意味がないですからね。
辻 : 当日ライヴがはじまる直前くらいに「完売しました!」と聞いて、いい気持ちでステージに立てたので良かったです。それまではみんな「人が入っているのかな!?」「大丈夫かな」と心配なままリハをしていて。
石綿 : 必死だったよね。
──で、セカンド・ワンマンをやり遂げて。
桜木 : やり遂げた! って感じはなかったですね。そのときは必死で、あとの体力のことを考えずに1曲1曲を全力でやっていたから力尽きちゃって。しかもサード・ワンマンの開催を発表したライヴでもあったから、次のことに頭がいって「終わった」という安心感よりも「次のワンマンのことを考えないと! どうしよう!」って焦りで終わりました。
萩田 : デビュー・ライヴからセカンド・ワンマンって半年の期間があったけど、セカンド・ワンマンからサード・ワンマンって3ヶ月くらいしかなかったから「やばい! すぐだよ」という話をしてました。
──そのサード・ワンマンを今年3月15日に、SHIBUYA CLUB QUATTROで開催しました。
桜木 : やっとここでみんながペース配分を考えられるようになったんです。ひとつのグループとして安心してできたライヴなんじゃないかって思います。だからこそすごい悔しかったんですよね。
──なんの悔しさなんですか?
桜木 : コロナの影響で来られなかった人がいて、「せっかくいいライヴができたのに観てもらえなかったんだ」っていう悲しみと悔しさがありました。
石綿 : うんうん。サード・ワンマンで「研修生」という肩書きを取っていいんじゃないか、と自分たちでも思えたくらいの内容だったというか。「研修生を卒業してもいいのかな」と思えるくらいよかったよね。
辻 : デビューしてからやってきたことをすべて出し切れたような、すごくいいライヴだったからこそ、「もう1回QUATTROでやりたいな」という気持ちになりました。
──最近で言えば3月31日に無観客ライヴを行いましたが、やっているときの気持ちはどうでしたか?
辻 : やっぱりお客さんがいてくれることで安心するし、頑張れる。「みんなで一緒になって作るライヴを早くしたいな」って思いが強くなった気がします。
石綿 : 「画面越しに観てくださっている方に元気を与える」というアイドルに憧れていたので、私はいまのほうが理想のアイドル生活ができているかもしれないです。ライヴ配信をしたり、サイン会を配信したり、私にとってはこういう形もいいんじゃないかなって。もちろん会いたいんですけど、新しい経験ができているなと思います。
桜木 : 会えないからこそ特別感が湧くよね。次にいつ会えるかわからないですけど、会えるときはいままで以上に頑張ろうって気持ちになれる。
──…… というわけで年表を振り返るのは以上になりますけど、どうでしたか?
萩田 : それこそ、去年のいまごろはオーディション中なんですよ。
高田 : まさかこんなことになっているとは思わなかったです。
石綿 : オーディションから考えると10年分くらいの濃さがあるよね。書類を送って、最終まで何度も審査を重ねて、ファイナリストになって、豊洲PITに立って、結局ダメで……。実は、豊洲PITで開催した最終オーディション2日前のゲネで「もう無理だろうな」と、その時点で落ちることを確信していたんです。「これが終わって、またイチからオーディションをしていかないといけないんだ」って悲しみを感じていたんです。しかも7人の内、誰かひとりは消える(合格する)わけじゃん。だから悲しかったよ…… 悲しかった!
辻 : あのときファイナリストのメンバーで、こうして一緒に活動しているのが想像もできていなかった。運命なんだろうけど、すごいなって思います。
真っ白で芸能界を生きていけるか?と言うと無理なんですよね
──今回OTOTOY限定で“はじまりの合図”の配信がスタートします。この曲がオーディションの課題曲でしたよね。
石綿 : 私たちのデビュー曲です! 神宿さんの曲だけど(笑)。
萩田 : 0曲目って感じだよね。
石綿 : いや、違うよ! 1曲目だよ!
高田 : 生意気かもしれないですけど、もも的には11人の曲でいいんじゃないかなって勝手に思っています。
藤田 : 先日、こっちゃんの生誕生配信を6人でやったんです。それで「カヴァー曲でどれが好きか」って話題になり、メンバーみんな「神宿さんの曲だったら“ビ・ビ・ビ♡”がいい!」とか言っていたんですけど、視聴者さんから「“はじまりの合図”は?」ってコメントがあって。「あ、うちらにとって“はじまりの合図”はカヴァー曲だと思っていなかったわ」って(笑)。自分たちの曲じゃないのに、自分たちの曲と同じくらい大事な曲です。
桜木 : 私たちのオリジナル曲じゃないんですけど、カヴァーさせてもらっているという感覚もなくて。この曲ではじまった感じがするんですよ。
石綿 : 学校の校歌みたいな感じ? 自分の曲じゃないけど、自分の曲だし…… みたいなね。
桜木 : そう、校歌です! これではじまった感じするもんね。
辻 : オーディションのときからだから、1年以上歌わせてもらっているもんね。
藤田 : こんなにずっと大事になる曲だと思わなかった。だって5月から始まる1周年記念ツアーのタイトルだよ!
──それこそ〈かみやど 1st anniversary tour “はじまりの合図” supported by WEGO〉のビジュアルは「お!」と思いましたよ。
桜木 : この日、なんの撮影なのかわからないまま何パターンも撮っていたんです。「なにに使うんだ?」と思っていたら、ツアーの告知写真に使われて(笑)。
石綿 : うちらっぽいよね、白いし。
桜木 : なににも染まっていない感じがありますよね。
石綿 : ファンの人にどう見えているんだろうね。
高田 : ほんとにすっぴんだもんね。
石綿 : …… 難しいなぁ。白ってめちゃ難しくないですか?
高田 : どういうこと?
石綿 : 深い話になってしまうけど、白ってなににも染まれないし、染まっちゃいけない感じもあるじゃん。
辻 : 真っ白って汚せないよね。
石綿 : そう。常に漂白剤を用意しておかないと。でも、カメレオン体質にもならないといけないんですよ。「こういう自分になって、今度はああいう自分になって」だけど最終的に白に戻ってくるっていう。その難しさは常日頃考えている。だから色があるほうが楽っちゃ楽なんだよね。
高田 : たしかに、どんな立ち位置なのかが決められていないから、6人でちょっとキャラがブレるときもあるもんね。
藤田 : やっぱりカラーがあったほうが覚えられやすいしね。
萩田 : その方が性格もわかりやすしいね。
──とはいえ一度色がついた人は、純粋になれても無垢には戻れないんですよね。漂白している時点で不自然なことじゃないですか。
石綿 : そうだわ! やっとわかった。私、もう白じゃないんですよ。毎日一生懸命漂白をしているから、悩むしわからなくなるんだなって思う。
高田 : はじめたばっかりの頃のキャピキャピした感じっていまは……。
石綿 : ももちゃんはまだ真っ白よ。でもゆっちとかは前のグループでもやっていたから、人よりも悩むことがあるんだと思う。白から色をつけられて、白に戻すのはできないんですよね。
辻 : もう戻れないもんね。
藤田 : 一度知っちゃったことを忘れるのは無理じゃん。そういうことだよね。
桜木 : 白になれると思いますか?
高田 : ことちゃんはなれるんじゃない? 忘れられるから(笑)。
桜木 : え、なんの話をしているかわからなくなってきちゃった(笑)。
石綿 : というのが白なのよ(笑)。
──でもバランスがいいと思いますよ。全員が真っ白でもアレですし。
石綿 : たしかに、真っ白で芸能界を生きていけるか? と言うと無理なんですよね。それがまた難しい。誰かは白でいた方がいいけど、グレーの人もいた方がいいし。
──じゃあインタヴューは以上にします。
石綿 : 着地点が白っていう(笑)。
桜木 : なにが白なの? ぜんぜんわからなかった(笑)。
一同 : あははは!
編集 : 鈴木雄希