「選択と集中」「技術革新」と連呼して思考停止に陥り、日本の電機メーカーは次々に倒れていった。だがこの会社だけは、本当に大事なことを知っていた。ただ攻めるばかりが経営ではないのだ。 完全に一人勝ち 「業界の内部では、野武士の日立、商人の松下に対して、三菱はあまり闘争心のない『殿様』と長年揶揄されてきました。売り上げも総合電機メーカー3社の中では『万年3番手』と言われ、ずっとパッとしなかった。 ですが現在の好調は、そうした社風がいい方向にうまく働いている結果なのだと思います。 三菱電機には、『1位を目指さなければならない』という気負いや、『寝食を犠牲にして働く』という必死さが薄い。だからこそ、必要なときに大きな改革に踏み切り、正しい戦略を立てることができた。『プライドよりも生き残ることが大切』と割り切れることが、彼らの強みでしょう」 こう語るのは、東京大学大学院「ものづくり経営研究センター」特