本稿の大部分は砲兵戦術講授録の第一篇の現代語訳および要約である。 世界大戦における砲兵 現代の砲兵を理解するには世界大戦において独仏両軍の実施した砲兵用法の変遷をもって捷径とする。しかしながら日本軍砲兵の用法は迅速な指揮運用と戦機に適した戦闘準備および戦闘であるので世界大戦中の陣地戦に関する諸教訓を曲解し、状況がどうであるとにかかわらず綿密組織的な計画立案に没頭し戦機を逸して指揮鈍重となるようなことは最も戒むべきものであるのでこれらの点については誤解なきを必要とする。 大戦前のフランス軍砲兵戦術 大戦前の仏軍は極度に機動および攻勢を主張し、火力無視と思われるほど攻撃精神を鼓吹していた。 したがってその思想に基づき火器の効力に対して正当な理解をせず、砲兵に大きな期待を寄せていなかった。過去戦役における歩砲火の死傷数の統計は仏軍砲兵の用法の理由を裏書きするものであった。下に示すと、 普