落ち着いた青地にタイトルのみの装丁。その無愛想な本こそ、2015年、イタリアから飛び火し世界の出版業界を騒がせたベストセラー書籍である。小説か、自叙伝か、ビジネス本か? そのいずれでもなく—「物理学書」。とっつきにくい物理学を説いた専門書が大売れというだけで話題騒然だが、さらに驚くべきは、筆をとったのが“元ヒッピー”だった、ということだろう。そう、元ヒッピーが書いた一冊の物理学書が、世界を騒がすベストセラーとなったのだ。 最先端の物理学の第一人者にして、ベストセラー作家でもある彼、カルロ・ロヴェッリ(Carlo Rovelli)。チョーがつくほど多忙であることは間違いないが、駄目もとでコンタクトをしてみると「Why not(ワイ・ノット)? いま旅に出てるから、電話をつなぐことはできないけど、メールインタビューなら喜んで」と、思いがけない返答が。元ヒッピーの物理学者による専門書は、なぜ大衆