いまスタニスラフスキーの評伝である「スタニスラフスキー入門(ジーン・ベネディティ著・松本永実子訳)」を読んでいるのだけれど、これが面白い。芸術についての興味深い言葉がいくつも出てくる。その中に、こういう言葉があった。もし演劇がゴーゴリのいう「観客を教育するという義務を果たす説教壇」なら,俳優は直接的に説教をしてはならない。観客に考える内容を伝えるのは俳優の機能ではない。戯曲のメッセージは,それとはなしに表現されなければならない。(p.28-29) また、演劇の自然な表現を指す「ナチュラリズム」を、こんなふうに批判している。ナチュラリズムは観客の主要な楽しみと大切な満足感を騙し取る。つまり,俳優と演出家とデザイナーがその技術で暗示したものを、俳優とともに観客が想像力で完璧なものにする楽しみを奪いとるのだ。(p.27)これは演劇について述べられた言葉なのだが、それだけに当てはまるものではない。
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