Twitter

2017年1月30日月曜日

インターネットの次に来るもの

■インターネットの次に来るもの

 ケヴィン・ケリー著、服部桂訳「インターネットの次に来るもの」。ネット後の30年を俯瞰し、今後を展望する教科書として読み返しました。

 原題の「Inevitable」、不可避なるもの、のほうが論調は見えやすい。分散、クラウド、リアルタイム。シェア、アクセス、リミックス、トラッキング。ぼくもこれらは「不可避」な要素であり、それらが未来を規定すると考えます。

 高速化、高精細化、小型化、低廉化・・これらは従来のリニアな「不可避」でしたが、ネットが別の不可避「群」を登場させ、それが過去30年を、そして今後も数十年を規定する。「リンクとタグは過去50年で最も重要な発明」という指摘にぼくも同意します。それがネットの本質です。

 ブロードバンドが勃興したころMITネグロポンテ所長が、1Gbpsでつながることよりも常時1ビットでつながっていることが重要と指摘しました。的確です。高速よりアクセス、リンク、シェア。そしてそれが現在のIoTやウェアラブルにつながります。

 ぼくは本書中、3つのエピソードに目が止まりました。1.全情報を格納する図書館、2.全人生を記録するログ、3.全人格のアバター、の3つです。実にそそられる提起です。

 1, 全情報を格納する図書館の構想。それは50ペタバイトになるとのこと。これまでに人類が作った曲は1.8億にのぼるが、MP3にすれば20テラバイト。2000ドルもあれば収納できるといいます。手のひらに収まります。その延長で、50ペタも「展望」できる数字です。

 かつてGoogleのエリック・シュミット氏は全情報データベースを作るには3世紀かかると話していましたが、3世紀かけて作ろう、ってことです。問題は、そうしてできた図書館は共有の資産になるのかということと、それを皆が常時共有できる時代に「知識」は必要なのかということ。

 2. 全人生ログ。起きている間ずっとカメラを回す研究者のお話です。拡張記憶アーカイブを自分が使うために構築するといいます。それよりぼくは、人生で見る映像全てを記録したアーカイブを共有することが引き起こす可能性に興味があります。

 70年分、つまり起きている間の人生分の映像をMP4にすれば10テラバイトと聞いたことがあります。もうみんな小遣い程度で人生総映像をHDDに収納し、みんながシェアできる。時間の同期を取ってリンクできる。その膨大な映像空間、異次元のリアル+バーチャル空間では何が起きるのか。

 この問いは、10年来ぼくが授業で学生に問いかける「想像のススメ」であり、ぼく自身、答えを持ってはいません。でも、既に技術はぼくらの手の中にあり、実行もたやすい。欠けているのはぼくらの想像力であり、想像する努力を払いましょう。

 ケリーさんはIoTによるライフログのトラッキング可能性を示唆し、ビッグブラザーの出現に言及します。ただ、街中の監視カメラがぼくらを震えさせる前に、リアルなテロや犯罪の恐怖が増し、監視IoTがぼくらの安心材料になっていることに注目すべきでしょう。

 ボストン・マラソンの爆破犯を突き止め、追い詰め、殺害するに至る、IoTカメラの映像に対する信頼感は、アメリカでもビッグブラザー観を古びたものにしていると見受けました。違いますか。

 3. 全人格アバター。フィルタリングによるリコメンド機能で、機械がぼくのことをぼく以上に知っていて、ぼくの好みのものを提示してくれる。そんなに快適で心地よい情報ばかりを得ることになると、視野狭窄に陥るかもしれないけど、ぼくはもう老人だからそれでいいや。

 その、ぼくをぼく以上に知り、ぼくを代行してくれる個人アバターの出現を心待ちにしています。ケリーさんはそのアバターが他人にレコメンドすることで報酬を得て稼ぐ可能性を示唆していますが、その前にぼくがそのアバター育成にドンと自分の資金を投じますよ。

 そいつはきっと、今のぼくよりうんと賢くて、うんと判断力のあるヤツになるはず。とっととそいつにぼくはいろんな仕事を任せたい。日々の雑多な職務の7割は任せられる。ぼくの仕事の大半はネットですんで。ぼくは超ヒマで創造的なめくるめく老後を送るのです。

 その場合の課題は、どこまでぼくはそいつにぼくを委任することが許されるか。そいつがしでかした発言なり指示なり約束なり契約なりを、どこまでぼくが責任取れるのか、ということです。そろそろ、その仕組みも考えていいと思うんです。

 ケリーさんはwikipediaの意外なる成功を引き合いに、世界中の地図がタダで見られたり、ソフトウェアが無償で開発されるさまを、不可能が可能となったと評しています。ただ、そうした「進化」はまだ「始まったばかり」とも表します。そのとおり。ぼくが本書で最も同意するのはその点です。

 ネット勃興から30年。大衆化から20年。グーテンベルク活版印刷の発明で本が大衆化されてからの560年に比べれば、まだルターの宗教革命さえ始まっていない段階。「不可避」なるものが本領を発揮するのは、これからなんじゃないですか。

 楽しみです。

2017年1月26日木曜日

バルセロナ、今回は科学館。

■バルセロナ、今回は科学館。
工事現場に行ってきました。
いつまで続くことやらこの工事。
今後ドローンを使って測量するそうです。
 
前回は、ここのサイネージを観察したんです。
「前略ガウディ様、サイネージはお好き?」

それから、FCバルセロナのサイネージを。
「前略メッシ様、サイネージはお好き?」

バルセロナのサイネージはこの4年間にずいぶん進化していました。
これはどの都市を訪れても感じることなので、もうスケッチの必要はありますまい。


ただ、このコーヒー+紅茶+スープ サイネージ自販機のように、初めて見かけるタイプがあると、うれしくなってシャッターを切ってしまいます。


今回はデジタル特区CiPの参考にと、海辺の施設をいくつか見回りました。
ただ、先方イチ推しの水族館は、世界一とされる日本の館を多数経験すると、さほど刺激はありません。
(これはマグロコーナーの日本文化紹介サイネージ)


その中で刺激を受けたのは、「CosmoCaixa」という科学館です。
Caixaという貯蓄銀行の財団が運営する施設。デザインが秀逸でした。


設立は2005年。
1億ユーロをかけて、3万㎡の敷地をぜいたくに使います。
上下30mのらせん階段を降りて、自然と科学の探検をさせるという趣向です。


物理、化学、数学、地学を探求するハンズオンの科学館。
お台場の科学未来館のようなものですが、これを民間が運営しているのが注目点。

 各国の都市を訪れるたび、科学館や子ども博物館には足を運びます。
 中でも出色はパリのラ・ビレット。20回以上訪れています。
「パリ、ラ・ヴィレットのデジタル科学館」

 NYCの子ども博やサンフランシスコのZOUMもメディア屋にとっては「欲しい」館です。
「ニューヨーク・キッズ出張報告」

 日本では名古屋市科学館がいい。
「名古屋市科学館に行ってきたよ」


CosmoCaixaはそれらに並ぶ値打ちがあります。
デザイン性で。
一企業グループが自らの趣味にあかせて創りきったという統一感です。


そのシックで豊かな空間デザインは、子ども目線の安っぽい素材や色使いとは無縁で、だけど子どもへの愛情がふんだんに注がれた代物です。


相次ぐテロで、バカンス客が南仏からバレンシアに流れる中で、ここは親子が過ごすには格好の空間。
だけどスペイン語とカタルーニャ語しか表示がないんで、読解には一苦労です。


1000㎡のジャングル空間が美しい。
大人のデートコースにもなっています。


感心したのはこの氷柱。
バカでかい氷、というだけで、大掛かりな機械仕掛けよりも、インパクトがある。

エンタメのコツを一つ学びました。

2017年1月23日月曜日

知財計画2017ラウンド開始

■知財計画2017ラウンド開始
知財本部委員会@霞が関、知財計画2017に向けた会議が開催されました。
今回も共同座長を務めます。今年で8ラウンド目になります。

冒頭あいさつしました。

コンテンツ分野は前ラウンドで海外展開やアーカイブなど従来からの重要テーマに力を入れるとともに、AI、ビッグデータを含む次世代知財システムに世界に先駆けて取り組んだ。

それを受け、著作権制度の大きな見直し論議がスタートし、AIの知財問題も議論が巻き起こった。

新ラウンドでは新情報財への議論へと踏み込むとともに、映画の検討も始める。気合を入れ直す。

リオの閉会式では、雨の中、安倍首相がマリオになってくださり、コンテンツを重視する政府の姿勢が伝わった。受け止めて参りたい。


事務局より知財計画2016の取組状況を説明。
著作権制度の見直しを次期通常国会に向け進めること、リーチサイト対策やオンライン広告対策の検討を進めること、クールジャパン拠点同士のネットワーク化を進めることなど。内閣府、総務省、経産省、文科省、国交省らが対応。

知財本部委員会、さらに「新たな情報財検討委員会」(ビッグデータ、AIなどの知財問題)、「映画振興施策に関する検討会議」の2会議を置くことを決定、その2つも座長を引き受けることになりました。しばし忙しくなります。

IoTやAIなど第4次産業革命に関する政府の会議は内閣官房、内閣府、経産省、総務省など10個以上あり乱立。
政府としては知財本部とIT本部とに意見集約し、それを次期成長戦略に反映させます。知財本部には大事な舵取りが期待されます。


トヨタ近藤さん:AIは生データ=ビッグデータをどう守るかが重要。ビッグデータへの投資インセンティブが守られる仕組みを作りたい。

ニッポン放送重村さん:カンヌMIP-COMで受けた質問。ポケモンはゲームアニメマーチャンダイズポケモンGOとなった。ワンピースがスーパー歌舞伎になって世界発信した。ソフトのジャンルの壁が取り払われる。日本はその権利処理にどう取り組むか。--総合的に処理できる仕組みが必要。

瀬尾さん:ITは米に取られたが、AIはまだチャンスがある。この新インフラで大事なのはデータセットと学習済モデル。ナショナルアーカイブにコンテンツを囲ってモデルを作るべし。300年の国より2000年の国にアドバンテージがある。

読売新聞野坂さん:IoT、AIについて政府のさまざまなところで議論がされているが、知財本部が司令塔役を果たすべき。

サンライズ宮河さん:ルフィやマリオは世界で活躍しているが、映画はまだ世界市場に出て行けていない。中国は活躍が目立つ。戦略としてどうするか、議論したい。



さて、また知財の熱い季節の到来。やりましょう。

2017年1月19日木曜日

DC EXPO2016

■DC EXPO2016
Innovative Technologies 2016@DC EXPO@科学未来館。
特別賞選考委員として参加しました。今年は昨年に比してIoT & AI色が濃く、ワクワクしました。


選考委員特別賞「8K:VRシアター」
 NHKメディアテクノロジー / NHKエンタープライズ
270インチ3D映像と22.2ch音響でのライブ体験。目の前に等身大のサカナクションが演奏する。これは「観る」ではなく「居る」メディア体験。


2020Tokyoは8Kのパブリックビューイングが来ているでしょう。この日本発メディア体験を早く広めていきたい。


Human賞「失禁体験装置」
電気通信大学 ロボメカ工房VR部隊失禁研究会
水流、温度、膀胱の圧迫、振動等を通じあたかも失禁したかのような体験ができるシステム。推しました。このポップさを実現し、それをマジメに評価するのが日本の魅力。「失禁感」という新語も好き。


開発した学生たちは、「失禁という言葉を舘先生に言わせるのが目標」と言っていたが、先生がステージで何度も言っていたので、目標クリア。


Culture賞「AIによる白黒写真の自動色付けシステム」
早稲田大学 基幹理工学部 石川研究室
ディープラーニングを用いて白黒写真をリアルタイムでカラーに自動変換。学習が深まるほど正確な色付けに。大学の研究が実用に達する好例。


Industryの受賞はありませんでした。それはどれも粒よりで、票が割れたから。ぼくがピクッときた技術をピックアップしていきます。コレは実際には曲がって歩いているのにまっすぐ歩いていると感じさせるVR技術by東大+ユニティ・テクノロジーズ・ジャパン。


「Concept 4D Tracker」by コンセプト+データスタジアム
画像認識(カメラ2台)のみで3次元位置を計測、リアルタイムでボールの軌跡やスピードなどを表示する。スポーツのIT化とIoT化を実装して2020Tokyoに役立ちそう。


LINEやTwitter上のおしゃべりボット、女子高生AI「りんな」。この日本ぽいAIをマイクロソフトが作ってるのが面白い。会場デモ中、ぼくもスマホでりんなに「いま見てるよ」と打ったら「信用できひんなー」と京都弁で返されましたw


きまぐれAIプロジェクト「作家ですのよ」。星新一のようなショートショートをコンピュータに作らせる。人とAIが二人三脚で創作するもの。


「8K Time into Space」by NHK/MIT Medialab
8K画面でテレビ番組や映画など一つの映像を何百個もの動画に時分割し、その全てを同時に再生。それぞれの動画の細かい部分まで明確に観ることが可能。メディアラボはリップマン教授が担当。リップマン、元気!


「fVisiOn:全周360度から観察可能なテーブル型メガネなし3Dディスプレイ」by NICT。平らなテーブル上にバーチャルな3D物体が浮かぶように表示。テーブルを囲むひとが全て見ることができる。


「ホログラフィックウィスパー」by ピクシーダストテクノロジーズ。
多数の超音波振動しを個別に制御して焦点を結ぶ。何もない空中に「点」音源を配置する。レーザーのように線で音を飛ばす指向性スピーカーはあるが、「点」でささやく音は、面白い応用が考えられます。
これ、落合陽一さんの会社なんですよね。毎度びっくりするものを見せてくれます。


「TABO」by バスキュール+プログレステクノロジーズ。
タブレット上で動く小さなロボット。スクリーン表現とロボットとを組み合わせてプログラミングを学ぶ。バーチャルとリアルの垣根を乗り越えるプログラミング学習環境。かねてから注目してました。


「Sky Magic」by マイクロアド。

数百台の自律制御ドローンを編隊飛行させてLEDの巨大ディスプレイを空中に作る。第一弾デモは富士山を舞台に25台を飛ばして実施。ぼくらも11/26のKMDフォーラムでもドローンで見せる光アートをプレゼン予定です。この世界、広がりそう。

2017年1月16日月曜日

いよいよ来るか、放送IP

■いよいよ来るか、放送IP

 民放連デジタル・ネット研究会でFCIニューヨークの渡邊卓哉さんからアメリカ放送局の事情を伺いました。

 アメリカ放送局の課題は、CM収入の堅持、ネット配信のマネタイズ、国際展開の3点だそうです。これは日本と同じですね。

 全米放送協会NABの今年のキーワードは改めてIP(Internet Protocol)だったそうです。「放送システムのIP化」がいよいよ来る、と。

 放送局のIP化は、放送システム(制作・送出)、ネット配信、営業・ビジネス・経営モデル、の各レベルがあるが、いよいよ本丸の放送システムに来たというのです。

 放送の伝送にはSDI(Serial Digital Interface)という映像信号フォーマットが使われてきたが、それをまるごとIPに移行させる。放送と配信を一体化するシステムにする。クラウド化する。そういう動きです。

 通信の世界が電話からネットへ、交換機からルータへ、回線交換からパケットへと20年でシステムが総替えになろうとしているのと同じです。

 中でも米ABCがシステムのIP化、クラウド化を進めているとのことです。移行期には設備投資がかさばるが、その後のコストは格段に下がる。総コストが半減するという見方もあります。ABCが成功すれば各局なだれを打つでしょうか。

 放送システムがIPでクラウドにアウトソースされると、放送も配信もVODもソーシャル対応も一体的に扱われる一方、放送局はもはや放送局ではなく、制作・編集のコンテンツ局になる。その覚悟と戦略が問われているということです。

 アウトソースせず自らシステムを抱え、ハード・ソフト一致を貫く戦略もあるでしょう。だけどたぶんそれは、専業に任せるハード・ソフト分離よりコストが高く、セキュリティにも不安が残る選択となるでしょう。

 もちろんその波は日本にも来ます。これは、20年前の通信・放送融合、10年前のネット融合、5年前のスマートテレビとは比べ物にならない津波。日本の放送局はどう立ち向かうでしょう。

 実はこのテーマは日本でも道理のわかった放送人はかなり研究を深めていますし、メーカも本格営業をかける構えです。ぼくが代表を務める「IPDCフォーラム」でもぼちぼち空気が流れています。

 通信・放送融合は、番組のネット配信が重要テーマでした。いま当然のように行われていることですが、かつては放送局のビジネスモデルを壊すものとして、議論することさえ敵視されていました。

 まして、放送のIP化というのはシステムを塗り替える話。10年前のいわゆる総務省・竹中懇談会でも、「All IP時代の放送」を念頭に議論がなされましたが、テレビ業界から強い反発がありました。ネット展開を進めた業界にとっても、機微に触れる恐ろしい未来だったわけです。


 しかしこういうシステム技術の変更は、必然の方向に進むものであり、通信に対するインターネットがそうであったように、動くときは急速です。しばし動向に目を光らせましょう。

2017年1月12日木曜日

CEATEC2016

■CEATEC2016
CEATEC、行ってきました。前年までのIT・家電展から、IoT展へとコンセプトを大きく変更。前年531社今回648社、前年1609コマ今回1710コマと規模も拡大し、日立もトヨタも帰ってきて、何やら元気が戻った空気でした。

ちなみに前回(まで)のぼくのCEATECメモ。昨年はIoTをうたいながらも、まだ具体的な形が描けてはいませんでした。今年はずいぶん像がハッキリ。
「CEATEC2015」


特別展示「IoTタウン」では、タカラトミー、楽天、MUFJなど異業種の初出展企業がショッピング、仮想店舗、スポーツ、ロボットなど10件の展示。IoTは「提供より利用」という姿を描いてみせました。今後のプレイヤーの広がりを予感させます。

楽天はネット情報と店舗や消費者の生活をつなぐ展示。タッチパネルに本を置くと、登場人物や地名などを表示。カメラで表紙を識別し、ネット上から情報を取得する仕組みも。本以外にも、置いた食材を使ったレシピや商品のレビューなども紹介できる。


タカラトミーの出展はいいね。モノにITが埋め込まれるIoTの先端はオモチャであり、世界に競争力を発揮するのがその日本の業界だと思います。「JOY!VR 宇宙の旅人」でスマホ+VRのコンテンツを展示してました。


MUFJが出展。フィンテックがCEATECに店を構えるのは当然でしょう。他の金融機関はどうなの、と思います。三菱はさらに進んで、人型ロボット「NAO」も展示。三菱東京UFJ銀行成田空港支店で活躍している様子を再現。


旭化成のようなIT外の企業が参加しているのが魅力。次世代衣料「スマートウエア」で売り込みを図るといいます。電線として使える伸縮素材「ロボ電」は、ゴムのように伸び縮みするため、衣服の生地に縫い込んで生体情報などを送るといいます。


ぼくらの「超人スポーツ」も出展しました。スポーツとIT、スポーツとIoT。新しい成長分野を作ります。よろしく!


人機一体のモータースポーツ、キャリオット。ドリフトする車イス。岩手県のハッカソンで生んだ腕バドルなど。みなさん、ご覧いただきありがとうございます。


超人スポーツの一つ、meleap社の「HADO」。ARを使ってスマホのHMDをのぞき、腕につけるモーションセンサーを動かして、手からかめはめ波のようなものを発してモンスターやプレイヤー同士で戦います。


HADOはハウステンボスなどテーマパークでも既に導入されています。世界に進出していただきたい。


ところで今回はサイネージでの展示が目につきました。IoTはデジタルを溶け込ませるものですが、溶け込んだら見えなくなるので、逆に「見える化」がカギを握る。なるほど、IoTとサイネージは好相性。デジタルサイネージコンソーシアムが会員増を見せているのはそのせいか。


パブリックビューイングでは8Kが活躍しますとばかりのNHK。ハイブリッドキャストから8Kに体重移動ですね。ぼくが理事長を務める映像配信高度化機構も世話になっております。が、画面の写真撮影ダメというので宣伝は控えます。


村田製作所。腕や脚に小型センサーを貼り付けて、ゴルフのスイングを分析するウェアラブルシステム。加速度・ジャイロ・地磁気センサー、無線通信モジュール、ワイヤレス給電を内蔵した小型デバイス。姿勢の問題点などが指摘されます。


オムロンは今回も巨大卓球マシン。京都企業、プレゼンス高い。


トヨタ、2年ぶり。しかも、ロボットで。
人型コミュニケーションロボット「KIROBO mini」、39,800円、2017年発売予定。


シャープは今年もRoBoHoNくん。接客、観光案内、見守りの3ソリューションを展示。


そしてシャープは同時にAIとIoTを駆使した「AIoT家電」を提案しています。
いろんな家電や住宅設備をつないで、音声対話で一元的に操作できるそうです。

パナソニック「IoTが変える暮らしやビジネス」。
普段はインテリアに溶け込む透明ディスプレイ。SAKE&WINEセラーが庫内にあるお酒の情報やお酒にあったレシピの提案などを行なえます。


ウィンドウAR。
家電の雄であり、デジタルサイネージコンソーシアム副会長のパナソニックは、IoTで家電とディスプレイをつなぐ時代を迎え、ちょいとウキウキしているように見えました。

(おしまい)

2017年1月9日月曜日

ネットの公共政策を共有する仕組みを

■ネットの公共政策を共有する仕組みを

年末、DeNAのキュレーション(まとめ)サイトで、不正確な内容や著作権侵害の疑いが発覚した問題に端を発し、サイバーエージェント、リクルート、KDDI等のサイトでも終了・公開中止が相次いでいます。

今回のキュレーション騒動には思うところがあります。グレーな領域のビジネスを進める新興企業の責任と世間や制度との折り合いをどうつけるか。その繰り返しがやまないな、と。

10年前の青少年ネット安全のときも、5年前のコンプガチャのときも、同様のIT企業群が同様のビジネス展開で同様の対処を求められました。みんなでやって、一線越えて、バシーンといかれるパターン。

ただ今回は行政介入ではなく、界隈のネット系のかたがたが糾弾した点が異なります。行政の動きがない分、油断が過ぎ、コトが大きくなってしまった面もありましょう。

青少年のときは安心ネット協やEMAを、コンプガチャのときはJASGAを作って、民間の自主規制で乗り切ろうとしました。ぼくはそれらに参加して、調整に汗をかきました。今も乗り切る努力が続いています。業界の自浄能力を示すことが重要でした。

炎上対策もしかり。2012年に「ニューメディアリスク協会」(炎上協会)を作って官民連携策を進めたのも、同様のアプローチでした。

今回は各社が独自にサイト閉鎖などの対応を見せてましたが、業界としての対策も求められましょう。国会や行政も問題視するでしょうし。

例えば業界が本気でこの著作権問題をどうにかすべきと考えるのなら、ユーザの訴訟費用を業界として補填する基金を積んだっていいじゃないですか。

あるいは訴訟に至らない事案を扱うADR的な仕組みを業界として整えたっていいじゃないですか。

(キュレーションの自主規制団体設立をぼくが進めるという噂が立って、取材申し込みもありました。いえいえ。業界の飲み会で、そういうことを、もうぼくじゃなくて、誰か若い人やんなさいよ、と言っただけです。)

シェアリングエコノミーも似た局面にあります。シェアリングエコノミーは業法的にグレーな領域でみんなの資源を活用するビジネス。グレーだからこそうま味がある一方、問題の発生も予期され、自主規制など民間の対応が求められるとともに、政府との連携策も検討されています。

これは民間サイドからの求めもあり、政府IT本部に設けられた委員会で議論が進められました。いい対応でした。

しかし、こうした個別の問題に、個別の業界対策や自主規制を施すのではダメなのかもしれません。ネットの重要性はこれからも高まります。こうした個別の問題がこれからも発生するでしょう。その総合対策を考える場面でしょう。

ネットを使ったビジネスの問題は、いわゆるIT企業だけでなく、ユーザ企業のITシフトが高まるにつれ、関係者の範囲が広がり、課題も拡散していきます。だからワンストップの解決法が定まりにくいことは承知しています。

しかし、だからこそ、こうした対策を機動的に打てるように、通信会社やIT企業のおおどころが公共政策を共有するともに、政府とも向き合う、総合的な民間の仕組みが求められます。緩い協議体でもいいので、お願いしたいところです。


今回の一連の問題に対し福井健策さんは「情報革命と言われる社会の必然的なコスト」ととらえる。そのコストをどう抑えるか、ぼくらの知恵が問われます。

2017年1月5日木曜日

岩手ご当地超人スポーツとは!

■岩手ご当地超人スポーツとは!
「岩手発・超人スポーツプロジェクト」。「ご当地超スポ」開発プロジェクトの発表会が盛岡で開催され、4種目の新スポーツが発表されました。今年、岩手国体が開かれることもあり、この地がご当地超スポ第一号として手を挙げたんです。

超人スポーツは2020年の世界大会に向け、これまで10種目ほど開発が進められています。ただ超スポは、スポーツと技術と文化のかけあわせ。となると、地域ごとに異なる文化に根ざしたスポーツがあるはず。今回はその第一弾です。

その1、ロックハンドバトル。知事賞を獲得。岩のような大きな腕を装着し、腕どうしをぶつけて、腕についた小岩を落とす。悪鬼「ラセツ」にとりつかれた人を浄化する、という地元・三ツ石神社の伝承がモチーフ。


岩の手だから岩手、いや逆か、この腕が10kgあって、闘う超人感がハンパない。岩手大学+慶應義塾大学の学生たちの混成チーム。


まずはマンガ家志望の学生がマンガを描き、その世界観をスポーツに転化したものです。超スポのポップカルチャースポーツ開発という志向をやりきったところがおもしろい。


その2,マタサブロウ。手元の装置で空気を噴出=ブロウして、大玉を浮かしつつ、操縦して運ぶ。宮沢賢治「風の又三郎」をこう解釈したか。どっどどどどうど。


ポータブルなブロウの装置と、大玉のヘリウムガスの密度に開発の苦労があったとか。ゆるいようでいて、キラリと光る技術。どどうどどどう。


その3、クライミング・ザ・ウォールズ。壁のベルトを腕だけで動かし、2人で速さを競う。チーム名「壁人間」。これ、スグ商品化できる。株式会社「壁人間」を作り、1台400万円で来年10台売るところから始めよう!


その4、トリトリ。3機の小型ドローンでゴールを目指す。守る側は大型ドローンがぶらさげる網で、小型機を捕まえる。サッカーのPK戦のような競技。「銀河鉄道の夜」に登場する「鳥捕り」という人物の具現化。


首相官邸にドローンが落ちて、東京では大きいドローンを飛ばす規制がキツくてやりづらい。岩手なら知事の前で堂々とできる。ここでドローン名人を育てましょう。そしていずれ、首相官邸前でこの競技を開催しましょう。

シンポも開催。達増拓也岩手県知事、ふじポンさん、稲見昌彦超スポ共同代表・東大教授、南澤孝太超スポ事務局長・KMD准教授とともに登壇しました。どの種目も、超人度、スポーツ度、地元度が高く、参加されたみなさんに感謝です。


学生、先生、企業のかたがたが混成チームを作って開発と改良を重ねる。その活動を岩手県庁=行政がバックアップする。ご当地超スポのこの成功は勇気を与えてくれます。「岩手メソッド」と言っていいでしょう。


2020にはオリとパラに並び、超スポ世界大会を開きたい。それは東京でなくてもいい。岩手に超スポスタジアムを作ってもらえませんか?と言ったら、達増知事は「そうしましょう!」と断言。言ってみるもんだね!

達増知事によれば、観測史上初めて東北に上陸した台風10号の被害は甚大で、通常なら国体も返上かという状況だが、東日本大震災を経験し復興中ということもあり、なんのこれしきとふんばっているとのこと。みなさんに頭が下がります。


岩手発の超スポ開発。今回の成果を正式種目にまで練り上げていただくとともに、新種目を開発し続けてください。そして近未来、あの動きは岩手から始まったんだよね、と言われるようになってください。お願い申し上げます。