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2010年3月31日水曜日

MIT Media Lab 新ビルお披露目-1

■Buenos MIT Media Lab 新ビルお披露目-1 



 MIT Media Labの新しいビルが完成しました。構想から12年。
 CSK/セガ会長だった大川功さんが2700万ドルを個人で寄付し、それを基に新しい建物を造って「MIT Okawa Center for future children」を設立する。そのプロジェクトに参加するため私が政府を飛び出してMITの客員教授に就いたのが98年。
当時、Media Labは飛ぶ鳥を落とす勢いで、150の企業スポンサーに支えられて面白い研究を進 めていました。そのころの研究内容やビジネスモデルは、「デジタルのおもちゃ箱」(2003.10NTT出版)にまとめ切りました。以下にその一部を置いておきます。
 序   http://www.ichiya.org/pdf/0310digitaltoybox.pdf
 1章 http://www.ichiya.org/dtb/1.htm

 不世出の大川さんのことは、当時あちこちに書きましたが、ひとまずこれをどうぞ。
「大川さんが遺したもの」 日経ネット時評 2001.3.22
    http://www.ichiya.org/jpn/NikkeiNet/nikkeinet_010322_vol5.pdf

 しかし。プロジェクトはそれから順風に進んだわけではありません。
 お大尽の大川さんは2001年に逝去、アメリカではネットバブルが崩壊し、Yahoo!Amazon.comGoogleが台頭、Appleが復権、ウェブ系のトレンドは西海岸に移り(私は2002年にスタンフォード日本センターに移り)、創始者ネグロポンテは西和彦さんと私が提唱した100ドルパソコン構想に乗ってラボを去り、リーマンショックが起こり・・。
 曲折を経て、槇文彦さんが設計したビルがお披露目を迎えたのは20103月。エントランスは、同じく槇さんの手によるテレビ朝日のロビーに降り立ったような外光に満ちた空間と上層への吹き抜け構造。大川さんは安藤忠雄さんが意中だったのですが、「Prof.MakiHarvardFirst Classの建築を習った」ネグロポンテが槇さんを指名。
 今回ネグロポンテは背中を痛めて入院しているとかで、会えませんでした。
 さて、お披露目シンポで、槇文彦さんが証言していました。「1998年にビル・ミッチェル建築学部長が来て、こう口説くんだ。建物の面積は小さい。だが、夢は大きい。日本人建築家なら、狭い土地に大きなモノを詰め込むことができるだろう、と。ぼくは思ったね。MITで最も透明な建物にしようって。」
 槇事務所のゲーリー亀本さんの証言。「当時、ヴェスト学長は、われわれに世界の建築の最高水準をと常に迫ってきたのです。」
 ネットバブル期、「MIT2兆円で売却!」という記事が踊ったことがありました。冗談の記事に対し、「オレたちはそんなに安くねえ!」と冗談で切り返したヴェスト学長。紳士でした。その期待を担う新生Media Lab。もともと建築学部の一部門です。世界を代表することを自認する建築士と科学者とアーティストの集まりが発注者である建物を、どうプロデュースするか。槇さんチームにはプレッシャーがかかり続けた12年でした。
 その結果が出ました(つづく)。

2010年3月29日月曜日

福岡ユビキタス特区視察団

■Net 福岡ユビキタス特区視察団

岐志漁港。網にカキの貝殻をこう乗せましてね、炭火で炙ると、パチンとはじければ、もう食べどきです。ぷりぷり、ほくほく、おいしい。福岡です。
ユビキタス特区の実験を視察に来て、見て聞いて歩いて試して、やっとここで一休み。放送、コンテンツ、ソフトウェアなどなどツアー参加者70名。
現地に来て初めてパンフを見たところ、「中村伊知哉教授と行く福岡ユビキタス特区視察団」と銘打たれていてエェー恥ずかしいよ。みんなそんなタイトルで社内稟議切って出張費出したの?

吉田福岡市長にツアーの趣旨をご説明してから、まずは地下街。この市街では、ソフトバンク子会社のコメル社が500台のデジタルサイネージに公共情報やソフトバンクホークスの情報を提供していることで有名ですが、今回の注目はIPDCです。6セグメントの放送波を使い、iPhonePSPIPで情報伝送。西日本新聞やSTORYの紙面がそのまま読めます。あれ、涼しい顔して、これって「AMIO」じゃないの?「はいそうですAMIOですもうできてます」(CSKシステムズ宮島さん)。やってるねー。

次は、福岡タワー。20年前にこれが建設されたとき、ぼくは郵政省の地域通信振興課で担当しておりました。立派になられて。そこから発射されるIPDCの実験も画期的。1セグの放送波にIPを乗せて、オモテでは映像コンテンツ、ウラではその曲の着うたデータを送ります。オモテの映像コンテンツ内の「ダウンロード」ボタンをクリックするとウラ面をキャッチし、ケータイ端末にデータがダウンロードされ、蓄積されます。そして通信でカギを入手し、課金処理を行って作業完了。無料放送ストリーム+データ蓄積放送+通信課金認証の組み合わせ。これは世界にないモデルですよねー。

バス・サイネージ放送も世界初モデルでしょう。西鉄バスの車内前方に設置されたサイネージ端末が小型アンテナでIPDCを受信。画面左には、次のバス停「ヤフードーム前「福浜二丁目」の表示。右側にはサイネージ実験放送。観光案内、nimocaキャンペーン、動物クイズ、手を洗おう。静止画だったり動画だったり。これって、放送って言いつつ、特定バス向け通信ですよね?
まことに福岡はいい仕事してます。
文字情報もあります。読売新聞ニュース。そこに流れた衝撃情報。「北朝鮮デノミ失敗で責任者銃殺」。
いやぁ仕事は命がけでせんといかんのですな。

2010年3月27日土曜日

急げ! ホワイトスペース -2

■Net 急げ! ホワイトスペース -2

 バンクーバーオリンピックではネット中継は一部実現しましたが、全面解禁とは行きませんでした。
【バンクーバー五輪】NHKが生中継のない競技を中心に無料ライブ配信」
 96年アトランタ五輪のころから、ネット関係者は、もう次のオリンピックはネットでリアルタイム中継だよね、と話していたのですが、10年たっても簡単にはいきません。技術はとうに手元にあります。でも、ビジネスモデルやルールはそう生やさしくはない。
 この2年で広告費が7兆円から6兆円へと1兆円減少したというショッキングなニュースがありました。メディアの地殻が変動しています。そんな状況で、対応すべき方向は2つ。活用できる資源をフル活用することと、新領域を拓くこと。
 放送波で新聞・雑誌を配信するAMIOの公開実験が成功したとこのコラムで伝えました。AMIOは放送周波数という十分には活用されてこなかった資源を使って通信的な新サービスを開拓するものです。今回の実験はIPDCに一つの実像を与えるものでした。
 事実上ホワイトスペースにゴーサインが出たいま、民間は準備を早めます。IPDCAMIO、デジタルサイネージ、スポットワンセグ。特区が用意されたら、各地で手を挙げますよ。行政側にも素早い制度設計を求めます。
 NTTドコモの竹田義行さんは、「ホワイトスペースのような電波の二次的利用は、ITUでも昔から予定されていて、規定も整備されている」と言います。行政としては、二次利用が可能な周波数帯に規定を適用するだけだということです。ここ数年、コンテンツの二次利用が政策テーマでしたが、電波も二次利用の季節に入ったということですね。
 通信・放送行政以外にも政府には動きがあります。例えば内閣官房 知財本部の会議でも、デジタルサイネージなどの新メディア整備のための電波開放や全書籍の電子配信が取りざたされていて、成長戦略に向けた産業政策の観点からも電波への注目が高まっています。
 ホワイトスペースは、まずはビジネス利用が期待されています。経済価値を生む使い方に周波数を重点配分すべきと唱える企業もあります。一方、自治体や大学などによる公共利用の価値も高い。防災や医療、教育、環境分野等での利用です。ビジネスと公共、そのバランスをどう取ればよいか。制度設計上の難問です。ビジネス利用だけであればオークションで経済価値と相関させることもできるのですが、そこは簡単に割り切れず、政治判断が介在します。
 最大の課題は、混信防止措置。既存事業者とのルール作りが求められます。著作権ルール作りやコグニティブ無線技術など周波数共用技術の開発などもテーマです。IPDCフォーラムでは、引き続き課題に取り組み、ホワイトスペースの早期利用実現を図っていきます。

2010年3月25日木曜日

急げ! ホワイトスペース -1

■Net 急げ! ホワイトスペース -1

 先日、放送波にIP(インターネットプロトコル)を乗せるプロジェクト「IPDC」のシンポジウムを慶應義塾大学三田キャンパスで開きました。
 通信、放送、メーカ、ソフト開発、広告代理店など30社が参画するIPDCフォーラムは、技術やビジネスモデルを探求しつつ、政府に対し規制緩和や制度設計を求めています。ユビキタス特区での実験も行い、電波を使った新しいサービスの開拓を目指しています。かつて紹介したこの記事を参照ください。
 今回のシンポで話題となったのは政府のホワイトスペースへの取組み。地デジ整備後の空き電
波=ホワイトスペースを活用する機運がにわかに盛り上がってきました。そもそもIPDCV-Low, V-Highで提供されるモバイル向け「マルチメディア放送」を念頭に置いてスタートしたのですが、ホワイトスペースが活用できるのであれば、活躍の余地は大幅に広がります。
 ホワイトスペース論議は、昨年、政府・融合法制の議論の中から突如わき起こってきたものです。これまでの電波行政のスタンスからすると、実現はかなり先と見ていたのですが、政権交代とその後の成長戦略論議の流れで、積極的に開放するのではないかという観測が徐々に高まってきていました。財政逼迫の折、政府が投入できる数少ない資源が電波と規制緩和です。成長戦略に向けこれを使わない手はありません。
 しかし驚いたのは、今回のシンポに先立つ3月初頭のある電波系イベントで、内藤総務副大臣が突如「20107月にホワイトスペース特区を創設する」と表明したこと。パネルに登壇すべく控えていた私も、のけぞりました。聞いてねえぞ!
 私も委員として参加している総務省で開催中の「新たな電波の活用ビジョンに関するチーム」の落としどころが特区創設と踏んでいたからです。その審議中に結論を先取り、政府として初めて正式にゴーサインを出したのです。ホワイトスペースには慎重意見もあり、電波ビジョンチームでもんでから政治決断をするのだろうと見ていたのですが、動きは予想以上に速かった。
 恐らくそれは、IPDCAMIOはじめ民間の具体的なニーズや待望論が政府に刺さったからでしょう。総務省も200912月から提案を募集したところ、1月末までに53者から103の提案が寄せられたといいます。「予想を上回る実需」(渡辺克也総務省電波政策課長)。電波開放は既定路線となったと言ってよいでしょう。
 その提案は、放送13、通信4、CATV5,メーカ5、自治体2,大学等6、その他15、個人4という構成。多様ですが、放送の多さが目立ちます。具体的な使い道としては、エリアワンセグ、デジタルサイネージ、通信放送併用などが挙げられています。IPDCは通信・放送を横断してIPによってコンテンツを配信するシステムであり、そのどれにも対応できる基盤を提供するものです。
 地域の放送的に使うニーズが強いのは日本の特徴です。「アメリカではブロードバンド通信の足回り利用が中心ですが、ブロードバンドや高速モバイル通信の発達した日本では、通信より放送系の使い道に強い期待が寄せられているんですよね。」(渡辺課長)
 他方、ソニーコンピュータサイエンス研究所の所真理雄さんは、家庭内の家電をつなぐ超高速ワイヤレス空間を作るためにホワイトスペースを活用することを提案しています。1.5Gbpsを要する高精細画像のストリーミングには、wifiでは対応できない。家庭内特区を設けてでも実現すべき。そして、そうした電波環境を国際的な制度と整合させ、世界市場に展開していくことが重要だと説きます。
 可能性は広い。ニーズはある。早くシーズを!

2010年3月23日火曜日

AMIO公開実験成功!

■YouGo3.0 AMIO公開実験成功!
デジタル放送波で新聞・雑誌を配信するAMIOAll Media In One)プロジェクト。
このAMIOフォーラムは200911月に設立、私が代表を務め、会員は31社を数えます。
http://amio.jp/
 その活動はこれまでここでも3回に渡ってご紹介してきました。


 そして32日、慶應義塾大学三田キャンパスで公開実験に成功しました。
 ワンセグ放送波で雑誌や新聞の紙面を発射して、テレビやPC、電子書籍などの端末で読んでみる、その実用度を試す、というものです。
 端末機としては、電子書籍リーダ(富士通、SONY)、デジタルフォトフレーム(SONYBaffaro)、iPod TouchPSP、ネットブック、そして液晶テレビを使用。
 コンテンツはVOCEESSE(講談社)、AERA(朝日新聞)、SPA!(扶桑社)、山と渓谷、東洋経済など16誌。神奈川新聞や共同通信ニュースなども載せました。
 これらを使って、ホワイトスペースの活用を展望してIP化された放送波で送信したり、雑誌や新聞等の入稿データを送信用フォーマットに自動変換したりする実験を行ったわけです。入稿・配信フォーマットの自動変換、放送波のIPパケット送出、テレビ等の一次デバイスの受信、wifiによる二次デバイス=ポータブル機器への転送。システム実験はスムーズでした。

実験を通じて、
デジタル放送波を使った新聞・雑誌ファイル配信方式の確立
編集加工段階からさまざまな端末へのコンテンツ自動変換フォーマットの確立
紙と映像表示とを融合する表現方法の検証
といった成果が得られたと思います。
 これを受け、AMIOフォーラムは、ARIB運用規定の追加提案、蓄積受信制御モジュールの開発ガイドライン提案、コンテンツ製作ガイドライン提案といった活動に進んでいきたいと考えています。
 また、より本格的なトライアルを実施して技術を検証していくとともに、コンテンツサイドでも電子書籍や電子新聞に求められるフォーマットの在り方も引き続き考えていきたいと思います。

2010年3月21日日曜日

富山くすり売りネットワークのヒミツ

■Buenos 富山くすり売りネットワークのヒミツ


 立山連峰は雪をかぶっていました。富山です。
 広貫堂の製薬工場、富山市売薬資料館などを巡ってきました。
 いやぁ驚いた。売薬のネットワークというのはとんでもないシステムだったのですね。
 デジタルのビジネスに通じる通じる。4点メモします。

1 ハード・ソフトの総合力
 クスリという物作りの力は基本。反魂丹という腹薬に起源をもつ300年来積み上げてきた和漢生薬の技術と知識。涙のでるほど苦い苦い熊胆円がクマの胆嚢で製造されているのは知ってます。でも六神丸にカエルの皮膚の分泌液が使われているというのは工場で初めて知りました。中国からたくさんの客がクスリを買いに来ていました。薬のレベルが海外でも評価されているんですね。
 目を引くのはパッケージのデザイン。頭痛や生理痛の薬には痛みに苦しむ人物。だるまの絵は、七転び八起き、カゼぐすりであることを示します。 絵でメッセージを示すのは、ステンドグラスで教義を伝えたキリスト文明と通じます。
 そのデザインが今また評価されるほどの勢いですね。ネーミングも。痛み止め「ケロリン」。「ズバリ」=頭・歯・利。「ラジオ」=よく聞く(利く)。やってくれてます。
 このハードとソフトを組み合わせる、物作り力と表現力を合わせた総合力で勝負。日本の進む方向を示唆しています。

2 ネットビジネスとの親和性
 行商人といえば風呂敷。柳行李を包みました。その中に薬を詰めて全国に散りました。パケット・サービスですね。
  そして、品物を先に預けて使用してもらい、使った分だけの代金を後から回収するビジネス。クレジット販売の先駆けです。「先用後利」の商法。医療機関も保険制度も未整備で、薬が高価だった時代に編み出された知恵ですが、売り手・買い手ともに信頼関係がなければ成立しない日本型モデルですね。
 何より大事な商売道具が「懸場帳」。お客さまの名前、住所、そして取引商品と取引年月日の記されたリストです。プラットフォーム、ですね。このリストを最重要なアイテムとして引き継いでいく。
 パケット技術と、クレジットのビジネスモデルと、プラットフォーム競争。ふむふむ。

3 教育が支えるエンタメ・ネットワーク
 北前船で入ってくる昆布を薩摩へ売り、薩摩藩はそれを琉球経由で清に送り、見返りにジャコウなどの原料を富山に還元、薩摩藩はこれで得た資本を基に軍事を拡張して、明治維新へとつながります。
 そうした商社ネットワークとしての薬売り業よりも興味を引いたのは、売薬人たちが役者絵などの版画をおまけとして届けたり、得意先で芝居の口上や浄瑠璃を語ったりしたということ。各地の映像情報を地域に届けたり、エンタテイメントを伝えたりしたというんです。
 コンテンツのネットワーク事業なのです。
 売薬人は高い教養の持ち主。芸を披露するだけでなく、医薬に関する講演をしたり、顧客に頼まれて代筆したりすることもあったそうです。その背景には高度な教育システムがあったといいます。顧客の信頼獲得・維持にはまず教育。ふむふむ。

4 成長産業への投資政策
 富山第百二十三国立銀行、北陸電力の前身となる富山電灯会社など、金融、電力、鉄道、治水、砂防、紡績など北陸・富山の近代産業は売薬業の資本が設立していきました。売薬業を発達させて資本を蓄積し、それをインフラ整備に転換するという明確な産業政策の意志があったといいます。
 これは今のIT政策に欠けている、ダイナミックな戦略視点を与えてくれます。

 面白いなぁ。赤坂の近所のモツ焼き屋で「おっさんの酒ください」というと「立山」が出てきます。立山を眺めながら、たらふく立山をいただきました。でも涙が出るほど苦い苦い熊胆円を舐めればへっちゃら。
 また遊びに来ますね。

2010年3月19日金曜日

ワークショップコレクション2009、点描。

■ Kids ワークショップコレクション2009、点描。
今回いくつか気になったワークショップをご紹介。

「ビスケットワークショップ うごくカードをつくろう」
 by NTTコミュニケーション科学基礎研究所。
「ビスケット」は小さな子どもでもかんたんにコンピュータプログラムを作れるソフトウェア。自分でかいた絵に思い通りの動きをつけて「うごくカード」を作ります。NTTの原田さんはこの分野を牽引し続けている方ですが、年々進化もとげています。今年はケータイとの連動も。おみやげのカードを使えばケータイからも作品が見られるようになりました。


 


 ほかにもMITメディアラボが開発したソフトウェア「スクラッチ」を使ってアニメを作る「こどもプログラミングサークルスクラッチ」もありました。会場では、メディアラボが中心となって開発している100ドルパソコンでもスクラッチが動くよ、という展示も。 






「でじたるお絵かき伝言げーむ えこぴー 〜おぼ絵 tell?〜」by山田里愛+伊賀陽祐。
「えこぴー ~おぼ絵tell?~」は、ことばのかわりに絵をつたえていく伝言ゲーム。壁に投影されたかんたんな顔イラストを、みているとだんだん薄くなって消えていく。それを記憶して、制限時間内に壁に再現してみる。似てるかな?ちょっと違ってるかな?できあがったらまた消えていく。覚えて再現してみる。どうかな? その繰り返し。
 なるほど、ちょっと楽しくて、真剣になるね。プロフィールによれば山田里愛さんはシドニー大学卒業。アーティスト・アートディレクターとしてスウェーデンスタイル、ヴェネツィア国際映画祭等に参加とある。伊賀陽祐さんは東京造形大学卒業。アーティスト・インタフェース開発者として釜山ビエンナーレ等に参加、小学校等でワークショップ開催だとか。そしてともに早稲田の修士課程に在学とか。ワークショップコレクションは学生のアウトプットの場でもあります。


 ぼくのコラムにも何度も登場するフジテレビ「タケシ学院」のワークショップ。
「パラパラアニメ講座」では、「少年タケシ」でデジタルコミックを連載中のプロの作家が直接絵の描き方から指導します。おなじみピョコタン画伯や白佐木和馬画伯などが教えてくれるのです。子どもたち、この先生たち、こうみえて偉いんだよ。
「エアギター講座」もありました。エアギターのテクニックを世界大会でも活躍中のプロエアギタリストが直接手ほどきをし、最後は曲に合わせてみんなで楽しくエアギターをプレイ。会場は熱気でムンムン。そりゃオモロイに決まっとるよ。反則ワザでっせこれは福原P


 きりがないので最後にしときます。
「今世紀マシトミン〜筋肉元締の逆襲〜」byバイバイワールド

パンフにはこうあります。「趣味でヒーローに変身し、自ら武器を開発する正義の味方「今世紀マシトミン」と共に、世界征服を企む極悪筋肉お兄さん集団「筋肉団」をやっつけよう! このワークショップでは、マシトミンの開発した武器を使って筋肉団と戦います。「筋肉元締」を倒すには君たちの力が必要だ!地球の未来は君の腕にかかっている!」
 なんじゃそれは。

 と思って部屋を訪れたら、なんじゃこれは。

 パンツ一丁のマッチョ3人と正義か悪かわからん赤いキャラが歌ったり戦ったりしておるぞ。ステージで暴れてる若い連中、見覚えがあるぞ、と思ってその「バイバイワールド」なる方々のプロフィールを見てみたら、慶應義塾大学メディアデザイン研究科所属。うちの学生どもではないか。「その他ニート等から成る総合エンタテインメントグループ。」とも書かれている。
 会場の子どもたちはゲタゲタ笑ってボールを投げつけてマッチョどもを倒している。ぶつかったらマッチョどものベルトが点滅して死んでいくという多少のテクノロジーも導入しているものの、基本的には会場でここだけ強い異臭を放つくだらない空間と化している。
 意味はわからんが、ほめてあげよう、と思った。

2010年3月17日水曜日

ワークショップコレクション2009


■ Kids ワークショップコレクション2009

 2010227日(土)と28日(日)の2日間、慶應義塾大学 日吉キャンパスで開催しました。
 参加したのは80組のワークショップ。ほとんどが創作系です。作ってみよう、表してみよう。
 ねんど細工、手紙作り、毛玉工作、おみくじ作り、シャボン玉の版画、音楽に合わせて絵を描く、ビンの旬の果物や野菜を入れて野生酵母を育てる、江戸のつまみ細工を体験する、廃材を加工してミニカーを作る、新聞紙を使って空想のタコのオブジェを作る、新しいオモチャを考える、ドングリをつかってクラフトを楽しむ。

 デジタル系の活動もたくさんあります。
 パソコンを使ってアニメを作る。写真をトレースした自画像をコンピュータで名刺にする。パソコンでキャラクターを作ってゲームを作る。オリジナルの3D写真を作る。自分だけのデジタル新聞を作る。ブルーバックを使ってニュースを作る。レゴブロックを使ってパラパラアニメを作る。ツイッターのつぶやきにお花を咲かせてみる。
 
 そして2日間の来場者は3万5千人を数えました。
 2004年に開催した第一回ワークショップコレクションは13ワークショップで約500人。年々規模が大きくなり、昨年の1万人から1年で3.5倍増です。
 子どもたちの創造力や表現力を向上させる活動に対する需要がとみに高まってきています。供給が足りません。教育政策としても、コンテンツ政策としても力を入れるべき分野です。
 アーティスト、造形教室、大学の研究員、学校の先生たち、ネット・テレビ・新聞・教育・ゲーム・通信などの企業、公益法人や行政、ボランティアの学生たち、さまざまな主体がワークショップの提供や会場の運営に当たっています。
 今回はイタリア・ボローニャの劇団「ラミナリエ」が特別ワークショップを開催したり、「安心ネットづくり促進協議会」がネット安全シンポジウムやパネルディスカッションを開催したりもしました。
 「新しい公共」のかたちを体現しています。
 
 しかし、運営は大変。
 ぼくたちはNPOCANVAS」をベースとしつつ、慶應義塾大学などの参加も得て進めていますが、ボランティアベースで多くのかたがたにお手伝いをいただいて運営しても、これだけ大規模なイベントになると赤字はかさみます。経費をどうするか、課題を抱えたままの運営が続いています。
 でもそんなことは、参加する子どもたちには無関係。
 「昨日も来たけど、今日も来ました。」
 「去年も来たけど、今年も来ました。」
 30待ち、1時間待ち、2時間待ち、ワークショップはどこも満員で、とっても申し訳ない思いをしました。にもかかわらず、0歳から小学校高学年まで、いやお父さんもお母さんも、楽しく、真剣に参加して、「また来るねー」と帰っていきます。
 年に一度のイベントではなく、常設のワークショップコレクションが各地に開かれていて、いつでもどこでも体験できるようになればいいのにね。
 ま、それがぼくたちの仕事か。がんばります。