rionos INTERVIEW
EMIミュージック「Great Hunting」の加茂(啓太郎)さんから送られてきた音源をおもむろに聞いて、その才能に驚いた。作詞作曲からアレンジ、打ち込みまでをも自ら手掛ける若き女性シンガー・ソングライターrionos。彼女は、曲ごとに姿を変える。Coccoのようでもあるし、aikoのようでもあるし、青葉市子のようでもある。ただ歌というよりも、とにかく作る曲が素晴らしかった。まずは1曲、フリー・ダウンロードで彼女の恐るべき才能を体感して欲しい。そして彼女のプロフィールにもある「自称作曲家。の卵。クリエイター目指して盲進中。めざせ音楽三昧!!」という言葉の奥に秘められた、若きシンガー・ソングライターの実態を、インタビューと共に紹介する。ポップ・カルチャーに素敵な秋の風がやって来た。
インタビュ―&文 : 飯田仁一郎(OTOTOY編集長)
>>「epistora」のフリー・ダウンロードはこちら
(期間 : 2012年10月19日〜2012年1月19日)
rionos初の作品をOTOTOY限定販売開始
readme. / rionos
1. epistora / 2. karakuri / 3. tear report / 4. Super Moon / 5. europa / 6. hasen
販売形式 : mp3 / wav
rionos : Vocal Keyboard &Programming
All Songs Written、Arranged、Engineered by rionos
Except、Epistol& europa、Arranged by rionos&tng
Recorded at XXXXXXX
Mastered by Akihito Watanabe at EMI Studio
A&R Keitaro Kamo(Great Hunting)
Illustration Tomoyoshi Jyoko
Design Ikuyo Kamata
ストーリーがあって、曲が力を発揮する
ーーrionosさんのご両親はミュージシャンだとお聞きしました。どういう音楽をやられていたのか教えていただけますか?
母はクラシック音楽をやっていて、父はジャズをやっていました。なので、私も小さい頃からピアノやヴァイオリンなど、色々な楽器を習っていました。途中から作曲にも興味を持ち出して、作曲を始めるようになったんです。
ーー作曲をしたいと思ったきっかけは何だったんでしょう?
高校生くらいから、映画音楽やゲーム音楽を好きになったんです。そのころから作曲に興味を持ち出して、作曲の勉強がしたいなあと思い始めたのがきっかけです。
ーー作曲家では誰が好きですか?
久石譲さんとか、坂本龍一さん、菅野よう子さんが好きですね。
ーー例えばこんな曲が作りたいというイメージはあったのでしょうか。
そういうわけでもないですね。映画みたいに、お話と音楽が一緒にあるものに魅力を感じたんです。ストーリーがあって、曲が力を発揮するみたいな。そういう効果が好きなので、この曲がすごく好きでというイメージはしていないですね。
ーーピアノやヴァイオリンのプレイヤーとしてではなく、なぜ作曲家を目指したんですか?
小さい頃は、プレイヤーを目指していたんですが、私はあまり体が強くなかったので、人前に出たりする仕事はちょっとしんどいかなと思って。作曲だったら家で作って仕事ができるなと思ったんです。
ーーでは、ご自身で家の中で音楽を演奏することは多かったと?
家の中では楽器練習はしていましたが、幼い頃は発表会やコンサートに出たり、現在もたまにお話があればサポートでライブに参加することはあります。
ーー全部一人でパソコンで作ってるんですか?
全部ではないですけど、ほとんど一人で作ってますね。パソコンで作曲する為の教室にも数年前に通っていて、そこでやり方を勉強して自分の歌も作るようになりました。
ーー曲に歌をのせることは最近始めたんですか?
そうですね、作曲家になるんだと思ってやり始めたんですけど、学校の課題で作った歌の評判が意外とよくて。もっと作った方がいいんじゃないと言われたので、じゃあちょっとやってみようかなと思って続けたんです。
ーー歌というのは、他の楽器や作曲とは違いますか?
そうですね、中学生くらいの時に歌手になりたいと思った時期があったんですが、さっきお話したみたいに体があまり強くなかったから、作曲家に方向転換したんです。それでも、歌がいいよって言ってもらえて、そういう方向もありかなって思うようになりました。歌は昔から好きだったので。
ーー歌うたいとして憧れている人はいますか?
新居昭乃さんとか、aikoさんが特に好きですね。あとはSigur RosとかBijokとか、ちょっとエレクトロニカな方も好きです。Radioheadとか。影響を受けているかはわからないですけど、ちょっと変わった人が好きです。
ーーrionosさん自身はJ-POPとは少し違う音楽をしているという気持ちはありますか?
少し変わったことがしたいという思いはありますが、まあJ-POPだなあと思いますね。
ーーJ-POPみたいなものを作りたいとも、作りたくないとも思っているわけではないと。
ううん、J-POPと言っても定義が難しい部分はありますよね。日本語で歌っているというだけで、J-POPと言えるじゃないですか。なので流行の曲とはちょっと違うよねって言われると嬉しいです。
ーー今でもアーティストじゃなくて作曲家になりたいという気持ちは変わっていないんですか?
今はどっちもできたらなって思います。アーティストで歌も歌いつつ、いつか作曲家としても活動できたらいいなと思いますね。
ーーrionosさんにとって音楽は今どういう存在ですか?
家が音楽一家なので、生活みたいな感じですかね
ーースパルタ教育を受けていたというわけではなくてですか?
昔はそうでしたね。朝練したりとか。
自分の中で渦巻いてしょうがなくて、人に言えないようなことを曲に
ーーrionosという名前には意味があるんですか?
そうですね、ちょっとギリシャっぽい不思議な感じにしたくて。
ーーじゃあ語感なんですか?
語感なんですけど、あだ名で友達に“りおのすけ”って呼ばれたりしていて、最後の“け”を取ったらギリシャっぽいなみたいな感じになりました(笑)。
ーーいい名前ですね(笑)。『read me』はどういう意味を持っているのでしょう?
そのままなんですけど、私を読んでっていう意味が込められています。『不思議の国のアリス』で「Drink Me」って書いてある飲み物で、アリスが大きくなったり小さくなったりするじゃないですか。そういうイメージでつけました。私のことを全部出してるわけじゃないんですけど、私の中を通って出てきた曲なので、曲ごとに物語があるイメージで。全部私のこととは限らないですけど、ちょっとファンタジーな要素を入れたいなと思って使いました。
ーー曲名も1つずつ意味があるんですか?
そうですね、一個一個ありますね。
ーー例えば「epistra」という曲には、どういう意味があるのでしょう?
これはラテン語で「手紙」っていう意味なんです。内容からはわからないかなと思うんですけど、私は手紙を意識して作りました。
ーーrionosさんは歌詞は、どんな時に、どうやって書いてるんですか?
最初は思いつくままに時間をかけてやっていたんですけど、最近は期限があるので、期限が近づいてくるとあ、何か生み出さなければと思って作り出す感じですね。
ーーなるほど、「karakuri」は?
これは歌詞にもからくりって出てくるので。
ーーローマ字になるとrionosと通じるような気がしますね。全部ギリシャっぽくなるというか(笑)。
ちょっと意識しました。日本語にしたいなという曲もあったんですけど、統一感がなくなっちゃうので。hasenとかは本当は漢字にしたかったんです。
ーーこの6曲はrionosのファースト・ミニ・アルバムという感じですか?それともデモに近いものですか?
デモに近いものですかね。ミニ・アルバムのデモのような感じです。
ーー僕は、このアルバムを聴いてrionosの色んな表情が見えたんです。やさぐれているrionosもいたり、前向きなrionosもいたりして。実際のrionosはどんな人なんですか?
私はAB型なので、一言では難しいかもしれないです。二面性というか、色んな面がある。
ーーそうですよね、そういう意味で、アルバムでrionosさん自身が表現されているんだなと思いました。もう少し詳しく、どうやって曲を作っているのか教えていただけますか?
よく人に喋れないようなことを曲にしようということは思いますね。別に喋ることでもないけど、自分の中で渦巻いてしょうがなくて、人に言えないようなことを曲にしようと思います。
ーー「epistra」はどんな時にできたんですか? これは先に曲ができたんですよね?
いえ、これも詞が先ですね。私の曲はほとんど作詞が先です。話があっての曲が好きなので、言葉とか意味が先にあって、そこに曲をつける方が私はやりやすいです。
ーー歌詞があって、それにメロディーをのせて、楽器をのせていく感じですか?
歌詞があって、コードを考えて、メロディーですね。アレンジは同時進行でやります。こんな音色がいいな、みたいなものを思いついたら、一緒に進めちゃったりします。こんなドラム・パターンがいいなと思ったら先に入れておくとか。
ーー天性の作曲家ですね。PCの前で少しずつ構築されていく感じですか?
そんな事ないですよ、PCがないと何もできないですから。
ーーじゃあ、音楽学校で学んだことは大きかったですか?
そうですね、今音楽系の大学も行っているんですけど、DTMの教室で勉強したことが大きいかなと思いますね。
ーーそれは、具体的にどんなところがですか?
そこは1年間で全部やる、詰め込み型の学校だったので、課題とかもたくさんあって、曲を作りきるってことが身に付いていったかなと思います。先生達もみんな優しくて、音楽の知識も豊富で。卒業した後もたまに行ったりして、先生や生徒の人たちと交流したりします。だから、自分に取ってはすごく大きな場所です。
ーー今通ってる音楽学校よりもおもしろかったんですね。
大学は大学で勉強になることは沢山あります。でもそこの教室は大人の方が多くて。仕事をしながらプロでやりたいという人がいっぱい来てたので、モチベーションとプロ意識がすごく高くて、自分も負けないぞみたいな気持ちで勉強できました。
ーー現役のミュージシャンも来ていたんですか?
ミュージシャンと言っていいかわからないですが、バンドや趣味で何かしら楽器をしていたり、元々音楽に携わっている方が多かったですね。才能のある人は、そこから作曲の仕事をしだしたり、東京に行く人も中にはいたりします。
ーーそんな中でrionosは今後どうなっていきたいと思っていますか?
せっかく歌わせてもらえるので、CDを出しながら作曲の夢も引き続き持って、いずれはCMとか映画音楽とかもできたらなあと思っています。
ーーライヴをしたいとは思いませんか?
ライヴも興味がありますが、今はまだ模索中です。サポートでライヴをやったことはあるんですけど、自分がメインでのライヴは1回しかしたことがなくて。引きこもって作曲ばかりしているので(笑)。
ーー人前に出るってことはそんなに興味が無いんですね。
そうですね。裏方とかだったら、キーボードで参加するのは好きなんですけどね。
ーーこんな作曲家になりたいと思う人を一人だけあげるとしたら、誰をあげますか。
作曲家だったら、菅野よう子さんですかね。女の人だし、どんなジャンルでも作れるっていうのはすごく尊敬するし憧れますね。色んな曲が作れつつも、菅野さん節と言いますか、ちょっとおしゃれなところが好きですね。アニメとかCMとかの分野にも惹かれるし、菅野さんのポジションにも憧れますね。
ーー僕はrionosさんのライヴも観てみたいですね。rionosさんが歌っているのを見た時にこの曲がどう変化するのかすごく気になります。チャンスがあればぜひ、観させてください。
機会があればぜひ、観に来てください。
RECOMMEND
田中茉裕 / 小さなリンジ―
1993年生まれのシンガー・ソングライター。2010年に開催されたEMI Music Japan 50周年記念オーディション「REVOLUTION ROCK」のファイナリストとなる。都内のライヴ・ハウスで弾き語りで活動している。ジョアンナ・ニューサム、ジュディ・シル、矢野顕子に例えられつつ、儚く透き通った歌声とピアノが唯一無二の世界を生み出している。
青葉市子 / 檻髪
OTOTOYで三週連続でリリースした「パッチワーク」「レースのむこう」「日時計」を含む、全八編の叙情詩。青葉市子独特の生々しい音像と、聞く人に美しい情景を思い描かせるハーモニーはそのままに、奥底に隠れていた彼女の小宇宙が覗けるような作品。独自性を持ちつつ、ギター一本で表現する彼女のポテンシャルは今作でも底がない。青葉市子の第2章がここから始まる。
Babi / 6色の鬣とリズミカル
まるでオモチャ箱を開いたかのような音が聞く者の想像力を刺激し、そのサウンド・デザインの裏にはしっかりとした音楽理論と感性が織り交ぜられている。ドリーミーな印象を受ける楽曲群だが、実はオモチャ箱の奥に潜む影と現実世界を表現したびっくり箱の様な作品! エレクトロニカ、トイ・ポップが好きな方にはお薦め。
PROFILE
自称作曲家。の卵。クリエイター目指して盲進中。めざせ音楽三昧!!