2013年7月、山口県の限界集落で人口の3分の1にあたる村人5人が殺害される事件が起きた。村内でも変人扱いされていた犯人の家には、「つけびして 煙り喜ぶ 田舎者」という謎めいた貼り紙が残されていた。メディアはこぞって「犯行予告」と騒いだが、真相は違った……。いったい、この村で何が起きたのか? ノンフィクションライターの高橋ユキ氏の新刊『つけびの村 山口連続殺人放火事件を追う』より一部抜粋してお届けする。(全2回の1回目/後編を読む) ※当記事に登場する関係者は一部仮名です。 ◆◆◆ 小さな集落を襲った惨劇 2013年7月21日、第23回参議院選挙の投票日。 前月から猛暑が続く山口県周南市・須金・金峰地区の郷集落には、この日も朝から強い日差しが降り注いでいた。そよ風すら吹いていないのはいつものことだ。わずか12人が暮らす小さな山村は、周南市街地から16キロほどしか離れていないが、半数以上が高