CINEMORE(シネモア) Director‘s Interview 『シアトリカル 唐十郎と劇団唐組の記録』大島新監督 現実と虚構を織り交ぜた手法の先に天才・唐十郎の素顔は見えたのか?【Director’s Interview Vol.459】
CINEMORE(シネモア) Director‘s Interview 『シアトリカル 唐十郎と劇団唐組の記録』大島新監督 現実と虚構を織り交ぜた手法の先に天才・唐十郎の素顔は見えたのか?【Director’s Interview Vol.459】
20〜30代の観客が急増する理由とは? 特異な演劇集団「唐組」という生き方<ルポ:紅テントと「特権的肉体」> 時代にそぐわない、あまりにも非効率的なスタイル。しかし今、20〜30代の観客が増えており、劇団員にも若手が目立つ。 2024年5月に亡くなった伝説的な劇作家、唐十郎が残した劇団「唐組」。トラックで運び込まれた資材で、劇団員自らが丸3日をかけて“紅テント”を設営し、その中で数回の公演を行い、今度は丸1日かけて撤去する。1960年代から一貫して、活動にまつわる一切を自分たちの手で担いながら、全国で公演を続ける。 この異質なクリエイティブの、何が人々の心をつかんでいるのか? この場に身を置くことで、何が得られるのか? 2024年6月に長野で行われた公演に密着し、唐組という生き方を選んだ人々の姿をレポートする。 一夜の夢のような、たった2時間のために 「これじゃエジプトの奴隷じゃないか!」
なんらかの作品を創った人は、その「著作権」を有する。自分の考えや想いを作品として表現したのだから、強い思い入れもあろう。だが、「思い入れ」と「思い込み」はまるで違う。 「著作権侵害だ!」と筋違いとも思える訴えを起こすクリエーターも一定数存在するようだ。そうしたエセ著作権を振りかざし、トラブルに発展した事件を取り上げた一冊が「エセ著作権者事件簿」(友利昴著)だ。 本連載では、ニュース等で話題になった事件も含め、「著作権」にまつわる、クレームや言いがかりまがい、誤解、境界線上の事例を紹介。逆説的に、著作権の正しい理解につながれば幸いだ。 第8回では、大ヒット映画「カメラを止めるな!」に起こった、著作権トラブルを取り上げる。 「原案」か「原作」か――。著作権法に定義のないこの2ツの解釈の違いもあり、話はややこじれる。大ヒット作に対する原案側からの権利主張という構図が、外野には「カネ目的」にもうつ
ロロの新作公演「劇と短歌『飽きてから』」に参加している歌人の上坂あゆ美さんと芸人の鈴木ジェロニモさん。脚本・演出の三浦直之さんが俳優ではないこの2人を作品に呼んだ理由とは? そして3人それぞれ違った理由で感じている「人間になりたい」という願いについて語っていただきました。 他ジャンルの人が創作の場にいるメリット 鈴木ジェロニモさん、三浦直之さん、上坂あゆ美さん。 ──三浦さんはこれまでも、ミュージシャンの曽我部恵一さんやアニメーション作家のひらのりょうさんなど、他ジャンルの方をキャスティングすることが少なくないですよね。他ジャンルの方が作品に出演することのよさはどこにありますか? 三浦 稽古場がすごく楽しいというのがあります。演劇をずっとやっている人だけだと、その中でできあがったルールを当たり前だと思ってしまっているんです。そこに演劇の経験のない方が入ることで、無意識でやっていたことをもう
亀田佳明さんインタビュー善悪などの価値基準をできるだけ排除して、フラットに見る存在を 巨大団地に住む人達の物語「デカローグ」は、「トリコロール」3部作、「ふたりのベロニカ」で知られる世界的映画監督クシシュトフ・キェシロフスキが撮った連ドラである。 1話1時間ほどで全10話。これは日本の連ドラのフォーマットに近い。旧約聖書の十戒をモチーフにした各話は濃密で、それぞれに巧みに組み込まれた仕掛けや、各話の登場人物がときおりリンクしていくグランドホテル形式的な部分なども楽しめる。 1989年から90年にかけてテレビ放送される前の88年、このうちの一作が「殺人に関する短いフィルム」として劇場版化され、カンヌ映画祭で審査員賞、国際批評家連盟賞を受賞、スタンリー・キューブリック、エドワード・ヤン、侯孝賢などから賞賛を受けた。 「デカローグ」より 撮影:宮川舞子 密かにタブーを破っている団地の住人たち舞台
【連載】演劇を通じて人々に伝えたいもの-俳優・脚本家・プロデューサー岩瀬顕子…中山淳雄の「推しもオタクもグローバル」第90回 華やかなる俳優の世界、そこは世俗とかけ離れた「芸の世界」として人を惹きつけ続けるが、同時に大手芸能事務所のコネや力関係も強く働き、大人の政治がうずまく世界でもある。そんな世界でも「職人」は存在する。何か表現したいものがあり、ときにテレビを使い、ときに映画を使い、ときには小さな劇場を使って、その先にいる視聴者に対して何かを訴えかける。実は場としては様々な手段がある中で、やっていることは作家や映像監督、漫画家のそれと大きくは変わらないのかもしれない。小・中学校に暗い暗黒時代を抱え、その克服のためにも海外に飛び出た経験をもとに、この世界に足を踏み入れた岩瀬顕子氏は、俳優でありながら、自ら劇団を主宰し、脚本も書き、どんな小さな舞台でも役者として立ち、時には地元振興のための活
先日、『八月の御所グラウンド』(文藝春秋刊)で第170回直木賞を受賞されたばかりの万城目学さん。そんな万城目さんのデビュー作であり、京都を舞台に描いた抱腹絶倒の青春コメディ『鴨川ホルモー』が、この度、劇団「ヨーロッパ企画」率いる上田誠さんの手により東京と大阪で舞台化されます。そもそものきっかけとなったお話から、上田さんの脚本を読まれた万城目さんの思いなど、公演を控えた今だからこそ聞けるお話をたくさん伺ってきました。 撮影:ホンゴユウジ 構成:タカザワケンジ 舞台がはねた後の冗談がきっかけ ――『鴨川ホルモー』の舞台化は、上田さんの『たぶんこれ銀河鉄道の夜』をご覧になったのがきっかけだそうですね。 上田:最初は冗談だったんですよね。 万城目:僕は上田さんに自分の作品を脚色してもらうなんて、考えたこともなかったんです。上田さんと言えば森見さん。森見さんがアップルとすると、僕はマイクロソフトみた
演劇とコントでエンタメ界を席巻。ダウ90000、メンバー全員ロングインタビュー CultureBREAKING by PCAFeaturedクリエイター・アワードBREAKING 2023.10.27 文:おぐらりゅうじ 写真:後藤武浩 2020年に旗揚げされた8人組ユニット、ダウ90000。定期的に演劇の公演を続けるが「劇団」とは名乗らず、ライブやテレビでコントを披露するが「芸人」とも名乗らない。 メンバーは、作・演出を手がける主宰の蓮見翔と、園田祥太、飯原僚也、道上珠妃、上原佑太、中島百依子、忽那文香、吉原怜那の8人。 2022年には第2回公演『旅館じゃないんだからさ』(ユーロライブ)が第66回岸田國士戯曲賞の最終候補にノミネート、『ABCお笑いグランプリ』(朝日放送テレビ)で決勝進出、「M-1グランプリ」では準決勝進出、メンバー全員が出演するドラマも放送された。そして2023年には、
岡田利規Toshiki Okada 1973年横浜生まれ、熊本在住。演劇作家、小説家。チェルフィッチュを主宰し、作・演出を手がける。2005年に『三月の5日間』で第49回岸田國士戯曲賞を受賞。以降、その活動は国内外で高い注目を集め続けている。2008年、小説集『わたしたちに許された特別な時間の終わり』で第二回大江健三郎賞受賞。2016年よりミュンヘン・カンマーシュピーレ劇場のレパートリー作品の演出を4シーズンにわたって務め、2020年には『The Vacuum Cleaner』がベルリン演劇祭の“注目すべき10作品”に選出。タイの小説家ウティット・へーマムーンの原作を舞台化した『プラータナー:憑依のポートレート』で2020年第27回読売演劇大賞 選考委員特別賞を受賞。2021年には『夕鶴』でオペラの演出を初めて手がけるなど、現在も活動の幅を広げ続けている。 チェルフィッチュ公式サイト ht
上田誠(ヨーロッパ企画)と岸田繁(くるり)の対談が実現した。ヨーロッパ企画の長編映画第2弾作品『リバー、流れないでよ』に、くるりが主題歌として“Smile”を提供したことでつながった両者は、ともに京都で生まれ育った同世代にもかかわらず、一度も対面したことはなかったという。 CINRAでは、これまで接点がありそうなかった二人の対話を「創作と京都」編、「創作と時間」編のふたつに分けて掲載する。対談の撮影を手がけた写真家・濱田英明からのテキストを序文にかえて、まずは両氏の活動と京都の関係についてから。 いまがすでに懐かしい。写真を撮るときはつねにそんなことを考えています。なぜなら写真には必ず「もうそこには存在しない」ものが写っているからです。それは、地球に届くまで何年もかかるという、はるか遠くの星の光を見るのにも似ています。つまり、写真とは、未来から過去という現在を見るように、「終わりゆくいま」
京都を本拠地として活動する人気劇団「ヨーロッパ企画」。これまで「サマータイムマシン・ブルース」(2001)や「九十九龍城」(2021)などの本公演が高い評価を受けている。その「ヨーロッパ企画」の代表でもあり中心的存在が、上田誠。すべての本公演の脚本・演出を担当し、最近では映画の原案や脚本など、活動範囲を拡大している。そんな彼の創作のルーツは何なのか。京都にこだわる理由とは。 「あしたメディア」では、演劇から映画へと広げていく上田誠の仕事との向き合い方から、原案と脚本を担当した最新映画『リバー、流れないでよ』(6/23公開)まで、映画解説者の中井圭が、彼のクリエイティブの秘訣を掘り下げるロングインタビューを敢行した。 演劇は、他者とチームで作るから面白い 上田さんと言えば、やはり演劇の印象が強いですが、そもそも演劇との接点について教えてください。 中学や高校ぐらいの頃から、何かを創作するのは
まもなく全国ツアーが始まる、ハイバイの『再生』。もとは多田淳之介が2003年に発表した作品だが、同じ状況を3回繰り返すという特異な構造は、演劇人が持つ「演じること」の琴線や、ライブ性によった音楽的な共感を喚起させ、これまでさまざまなかたちで再演やリクリエーションされてきた。 今回の『再生』は、2015年にもいちど演出を手がけている岩井秀人による新たな上演で、当時コラボレーションしていた快快のメンバーからは舞台美術の佐々木文美、衣装の藤谷香子も加わっている。今回の人気作のクリエーションがどのように進んでいるのかも気になるところだが、2015年から2023年に至る8年間という時間が、たとえば「劇団」と呼ばれるような、創作のためのコレクティブにとってどのようなものとしてあるのか、影響を与えているのかも気になってくる。 音楽にせよ演劇にせよ造形美術にせよ、つくることには一定の熱量が必要だが、それを
舞台『エヴァンゲリオン•ビヨンド』脚本への批判と、主演の窪田正孝に対する絶賛が混乱して6000文字無料で書いてしまった記事 新宿歌舞伎町にオープンした東急歌舞伎町タワーの5階、THEATER MILANO−Zaこけら落とし公演 COCOON PRODUCTION2023、舞台『エヴァンゲリオン•ビヨンド』を観劇してきました。 タイトルに書いたように、舞台としては厳しい感想を書きます。レベルの低い舞台であったからではなく、傑出して高い舞台表現にも関わらず後述しますが根本的な部分でエヴァンゲリオンという作品の方向と違う、というかほとんど真逆のコンセプトで作られているからです。それを説明するために、舞台やストーリーについての詳細なネタバレも含みます。知りたくない人は読むことを避けるようお願いします。「↓ここから批判的感想」「↑ここまで批判的感想」の見出しもつけてみました。 まずは舞台の良かった部
アラフォー以下の世代にとっては、劇団「ナイロン100℃」の主宰であり、劇作家ケラリーノ・サンドロヴィッチとしての活動のほうが、よりなじみがあるかもしれない。 しかし、KERAは日本のインディーズ史において多大な影響を与えたレーベル「ナゴムレコード」の主宰、またバンド「有頂天」のヴォーカルなど、ミュージシャンとしてデビューし、今年1月に還暦を迎えたいまなお、日本のカルチャーシーンの最前線で活躍する人物である。 2023年3月25日、恵比寿ザ・ガーデンホールで開催された。「KERA 還暦記念ライブ〜KERALINO SANDOROVICH 60th Birth Anniversary Live〜」。 チケットはもちろんソールドアウトとなったこのライブを『ストリート・トラッド~メンズファッションは温故知新』の著者であり、有頂天やナゴムレコードと密接な関係がある雑誌「宝島」の編集にも携わっていた「
テント芝居の元祖にして、現在も全国テント公演ツアーを行なっている希少な団体でもある、唐十郎率いる「劇団唐組」。2023年の4都市ツアーでは、1990年初演の『透明人間』を上演する。外部プロデュースも含めて、これが6度目の上演ということで、唐の代表作の一つと言っていいだろう。病気療養中の唐と、共同という形で演出を担当する久保井研が、大阪で会見を行った。 ◇ 「水を恐がりますので、水を遠くにやってください」という小旗を持って、犬に付きそう男が現れた……という噂が町に流れ、狂犬病(恐水症)を恐れた保健所員・田口(岡田優)が調査を開始。そして元軍用犬調教師・合田(久保井)と、時次郎という名の犬が住む焼鳥屋にたどりつくが、そこは店で働く娘・モモ(大鶴美仁音)や、彼女の世話をする辻(稲荷卓央)などの人間も集っていた。さらに、田口との賭けに負けた上田(全原徳和)や、モモに似た女(藤井由紀)などの人物も絡
演劇では岸田國士戯曲賞の最終候補。お笑いでは『M-1グランプリ』準々決勝進出や『ABCお笑いグランプリ』ファイナリスト。結成2年の8人組・ダウ90000の活躍が目覚ましい。 男性4人、女性4人で織りなす小気味いい会話を中心とした演劇/コントの魅力は、2023年もますます多くの観客をつかむことだろう。 そんなダウ90000に、まだ記憶に新しいであろう初舞台=「First Stage」を振り返ってもらった。日本大学芸術学部で立ち上がった前身の演劇集団「はりねずみのパジャマ」にメンバーが集う過程や、メンバーたちの主宰・蓮見翔への想いを聞いた。 若手お笑い芸人インタビュー連載<First Stage> 注目の若手お笑い芸人が毎月登場する、インタビュー連載。「初舞台の日」をテーマに、当時の高揚や反省点、そこから得た学びを回想。そして、これから目指す自分の理想像を語ります。 目次最初は嘲笑されてた蓮見
デイリーポータルZなどで活躍するWebライターの大北栄人が主催するコントユニット「明日のアー」。今年8月に吉祥寺シアターで行われた8回目の本公演『カニカマの自己喪失』が11月30日(水)までローチケから配信中だ。 7月に行われた大北といとうせいこう、ダ・ヴィンチ・恐山の三名による「笑いのメカニズムと理論」をテーマにした鼎談に引き続き、第二弾は「演劇の笑いを“お笑いシーン”に届けるには」。前回が笑いに関する本質を探求したとするならば、今回は最前線の現場への潜入捜査である。 これまでテレビ的 / 演芸的なお笑いとは距離をとってきた明日のアーが、その文脈に接続されるにはどうすればいいのか。 「テアトロコント」のキュレーター小西朝子、多様な視点からお笑いやカルチャーをウォッチしているライターの西森路代、新進気鋭のトリオ「ハチカイ」のメンバー警備員の3名をお招きし、明日のアーにスタッフ兼出演者として
2022年師走、コロナ禍3年、物価高と演劇業界には厳しい年月が続く中、都内の喫茶店で演劇プロデューサー、演出家による座談会を行った。演劇を続けてゆく日々から思うこと感じること、思いなどを自由に語り合って頂いたが、皆さん、喋る、喋るで…… 命題:どうしたら、もっと多くのお客様に劇場に来ていただけるのか、劇場にあまり足を運んだことのない方にどうしたら、もう少し劇場に来てもらえるのか。 A:いわゆる大きな舞台以外の作品はまだまだ集客力の弱さが目立っているけど、どうしたら舞台にお客様が来るのか、どうしたらファン以外の方々を劇場に呼べるのか考えたいです。 A:来たことのない人をまず呼びたいですよね。舞台というものに何度も来ている人のパイはもちろんありますけど、それ頼みというわけにもいかないし。となると来たことがない人がどうやったら来るのか、というのがまだ弱い。そういう意味では大きい劇場とか公共のホー
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