私の米国での家庭医療研修は、「地域医療(Community Medicine)」から始まりました。これが実は、今でも忘れられない強烈な印象を残しています。 日本で行われている地域医療研修というと、地元の開業医の診療を見学したり、へき地の病院や診療所で実習したりというので終わるのが一般的です。中には、保健所などへの訪問が組み込まれたプログラムもあるかもしれませんが、そうした限られた場に身を置くだけで、本当に「地域の医療を知る」ということになるのでしょうか? 長老による貧困地区ツアーで得たもの 私の家庭医療研修は、1カ月が充てられました。最初はソーシャルワーカーとの作戦会議。この時に、訪問すべきこの地域の医療資源や関連施設について大まかに説明を受けます。普段の研修の場である高度医療機関から患者を送る先である療養病床やリハビリ施設、老人ホームや訪問看護ステーション、身体障害者施設や様々なNPO施