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フランスの経済学者トマ・ピケティが2013年に発表して世界中の注目を集めた『21世紀の資本』は、かの「クズネッツ曲線」を提示したサイモン・クズネッツのテーゼを完全に覆し、長期的に資本収益率(r)が経済成長率(g)を上回る(r>g)以上、資本主義を放置すれば必然的に経済的不平等が拡大するということを、広範な歴史的データを駆使して実証した本だった。 そのピケティが、2019年9月に『資本とイデオロギー』を上梓した。この新著が、前著にもまして夥しい資料を引いて明らかにするのは、主として、世界のどの地域を見ても、どの時代に着眼しても、経済的不平等が維持されるのは自然の成り行きではなく、それを正当化する物語やイデオロギーの神話的効果にほかならないという事実だ。ピケティは、とりわけ19世紀の西洋先進国における私有財産の聖域化を厳しい眼で考察している。 しかし、この本は、異例の大著だった『21世紀の資本
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